用語情報

用語設定(ネタばれ注意、第四章を読むことを推奨)


・「2200年代」

 後に人類の転換期とも言えるほど科学技術が発展し始めた時代。

 人類の黄金期とも言われ、同時多発的にブレイクスルーとも言える技術が確立し、飢餓やエネルギー問題、資源争いなど、これまでの人類が抱えていた大きな問題に解決の目途が立ち、国家間紛争というものがデメリットの方が大きく、また得られるメリットが明らかに少なくなり、一応は互いに核兵器よりも威力が高くクリーンな超兵器を互いに向け合いつつも、そのまま一世紀を越えて戦争という事態に発展することもなく辿り着いた……そんな時代。

 2200年代後半から2300年代にかけて人は本格的に労働から解放され、人生をかけて趣味や享楽に没頭するようなライフスタイルに変わるようになっていた。


・「DBS/ドリーム・バタフライ・シンドローム」

 別名、胡蝶夢症候群。

 2200年代後半、フルダイブ式の仮想現実技術が開発され世に広まるにつれ発生が確認された病。

 有体に言えば「現実と空想の境目が曖昧になる」という病であり、症状としてはそれが原因で現実の生活において注意力が散漫になったり、無気力になったり等々。

 他にも多数の症例が確認されている。

 旧世代において「ゲーム脳」などという当時には特に根拠もない風説が流布された記録があるが、科学技術の発展によって時代が空想の病に追いついた……とも言える。

 2200年代後半から数を増やし、2300年代に入った頃には爆発的に社会に広まった病で、政府が改善する為に国家的なプロジェクトを起こすに至る。

 DBSが当時代において爆発的に広まった主な要因として、一つは没入感の強いフルダイブ式の仮想現実技術の発展があげられるが、もう一つの要因として当時代において完全な生活保障制度が出来上がってしまったことが挙げられる。

 現実世界のおいて将来の不安を抱える必要が無いため、安心して仮想現実の世界により深く没入してしまうという皮肉な結果を招いた。

 特に酷いものがスリルなどを楽しむタイプの患者で、仮想現実の世界での戦いやアクションなどでスリルを楽しむことが癖になり、安全な現実世界に戻ると物足りなくなってすぐに中毒のようにスリルを求め仮想現実の世界に赴くという悪循環を繰り返すことも少なくない事例。


・「楽園計画」

 「楽園計画」とは社会問題化し始めたDBS対策のために政府が国家プロジェクトとして立案した計画。

 当初はAI技術の発展により社会の持続に人間がそれほど必要でもなくなっていたこともあり、あくまでも個人の自由を尊重する姿勢を取ってDBS患者が増えたとしてもそれほど問題にしていなかったが、人命にかかわる事故や事件が頻発するようになり対応の変更を余儀なくされる。

 社会に浸透してしまった仮想現実技術を制限することは難しく、下手な規制を行うのは逆に悪化に繋がってしまうとの懸念から、仮想現実世界を現実世界に再現することでそっちに興味を移させて軸足を現実の方に置かせることを主眼にした。

 その計画の選定されたのが最もユーザー数の多かったゲーム、『Hunters Story』であり有識者を招き、プロジェクトチームを発足。

 「楽園」を創り上げることを決定した。

 プロジェクトが宣言されたのが2295年、初期のプロジェクトチームの発足がその5年後、当初の予定を超えた計画となり一つの島のおおまかな創生計画の骨子が出来るまで更に3年の歳月がかかり、その間に人も大いに増え一大事業になる。

 この時代の研究者、科学者というのは所謂趣味人が多く、生活の為でなく自らの知識欲や楽しみのためだけに参加し、『Hunters Story』の世界を再現することに腐心。

 着工は2305年、開始から20年の歳月を経て「楽園」は完成し、運営を開始したのは2325年。

 「エイプリルフール事件」が発生したのが2326年の4月のことである。


・「楽園」

 「楽園計画」のために『Hunters Story』の世界を再現した大陸に近いほどの大きさを持った島の通称。

 植物や鉱物、そして「楽園」内で生きるモンスターに至るまで全て一から人工的に創られた空想の世界。

 本来はアトラクションテーマパークとして運用される予定だったが、とある事件の発生によって運営管理システムの総合統括AIである「ノア」の暴走を招き人の制御から外れてしまった。


・「不正行為審判機構」

 その名の通り、不正行為を発見した場合ノアの権限に基づき処罰をすることが出来る。

 これはゲームという都合上、どうしても発生すること予見されるため運営管理システムに組み込まれたプログラム。

 運営管理システムへの不正なアクセス、または干渉は当然として運営の想定していないシステムを利用したバグの故意の使用等々。

 そして、過度に「楽園」の世界観を壊すような行為を故意にすることも不正行為の対象となる。

 このシステムの問題で一番重要なことは基本的にノアというAIは人間に危害を加えることを実行することは出来ない、むしろ危険を発見した場合は安全を第一に動くように創られているが、プレイヤーに関しては不正行為を認定した場合、処罰を行う権限を持っているという事。

 プレイヤー資格の剥奪は運営管理者の管轄なのでそれは出来ないため、処罰と言っても想定されていたものだとモンスターを嗾けて襲わせてお仕置きする……程度のものだった。


・「新生プロトコル」

 本来は処理できないほどに大きな問題に発展した場合、また対処がとても困難な場合、消去して一からやり直すというだけのプロトコル。

 問題が起きて直らなくなっても一度再起動すれば上手く動くのと同じ理屈。

 このプロトコルと「不正行為審判機構」によるプレイヤーへの処罰権限、モンスターの安全機構の破壊とそれの認識が出来ていないこと、そしてノアより上位の命令者が居ないことが現状の「楽園」の惨状を招いていると言ってもいい。


・「総合統括AIノア」

 ノアの目的はあくまで「楽園」を「楽園」として運営し続ける事。

 そして、未だに終わっていないストーリーイベントを成功させることを優先事項としている。


・「モンスター」

 『Hunters Story』というゲームにおいて登場する空想の生き物。

 だが、「楽園計画」の際に人工的に再現され誕生した。

 元来は安全機構として体内のナノマシンを介して、プレイヤーの命を奪わないようにセーフティがかけられているがそれは破壊されており、デザインされた通りの生態として生きている。


・「狩人」

 『Hunters Story』というゲームにおいてはモンスターを狩ることを専門とした限られ者だけがなれる専門職。

 だが、この「楽園」においては純正エルフィアンを除く全ての人は「狩人」になるための「E・リンカー」を保有しているのでなろうと思えば誰でもなれる。


・「ネームドキャラクター」

 ≪鍛冶屋のゴース≫、≪ギルドマスターのガノンド≫、≪長老≫などストーリーに出てくるキャラ。

 彼らを模した特別な人造生命体、設定通りの記憶と性格を持っていつの時代にも合わせるように現れる。

 彼らは何も知らない。


・「E・リンカー」

 正式名称、「Evolve linker」

 「楽園」での体験、そしてゲーム性を高めるために当時の技術を結集して作られた生体ナノマシン。

 極めて端的に説明するならば、人体を遺伝子レベルにまで改造するためのもの。

 主な効果はゲーム内の「狩人」に近づくための身体能力、機能の向上。

 ならびに「楽園」内における事象(≪スキル≫の発動など)に不可欠な存在で当時のプレイヤーは全員当然摂取していた。

 そして、血統……つまりは子供や孫にも自己増殖の特性から常に機能を維持した状態で引き継がれる。


・「エルフィアン」

 「楽園」の運営管理をするために生み出された人型人造生命体。

 ファンタジー小説やゲームに出てくるエルフから名を付けられた。

 プレイヤーではないのでE・リンカーを摂取していないので、古代人と同じ身体能力しかない。

 エルフィアンは通常型のエルフィアンが大半で、あくまで労働力や運営スタッフとしての側面が強い。

 だが、特殊な個体も存在しており、それが皇帝とそれに連なる皇族の「上位エルフィアン」。

 彼らは上位権限を与えられており、肉体自体も通常型のエルフィアンとややことなる。

 通常型のエルフィアンと比べると情報処理、特に電子情報処理技術などは特別に高い適性を持つようにデザインされている。

 ただ、通常型のエルフィアンとは違って、普通の人間のように老化し寿命も同じくらい。

 基本的にエルフィアンはエルフィアンとの子供でもない限り、エルフィアンとしての性質は引き継がれない。

 E・リンカーを摂取しているためか狩人との間に子供が出来た場合、エルフィアンの性質が出るのは非常に珍しい。




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