第3話 餓鬼道の敵と修羅道の我ら
「お。鬼⁈俺たち人間が鬼になるなんてことがあるのか?」
「おいおい、まさか俺らまでやらかすと鬼にさせられるのかよ」
「わ、私、お、鬼だけにはなりたくない」
「ぎゃーー鬼!ぎゅじゅ、だぁして~ごごがらだじで~」
また、周りがざわめきだした。一言大王が語りだすたびに、その内容の重さと現実場離れした状況がいちいち人々を不安にさせた。しかし、
「説明を遮るなゴミども。次うるさくした奴は則鬼にしてやる。分かったな?」
冷静に、それでいて本気でそうするかのような重圧のある言い方は人々を三度黙らせた。
「まず、今いるここは厳密には地獄ではない。地獄への入口だ、そこに門があるだろう、あれをくぐれば晴れて地獄にいくことになる。地獄に入るとお主らには目に見える形でステータスというものが与えられる。このステータスは鬼を倒すほどに向上していき基本的にはレベル1から99まで上がることになる。まあ、そこら辺の詳細は戦っていくうちに分かってくるであろう。そしてお主ら一人ひとりには役職というものが与えられる。この役職は5つに分類され、戦士、魔術師、補助師、建設師、調合師だ。これは生前お主らが一番適していると思われる役職がお主らの深層にある魂に刷り込まれていて、そこからくる潜在的能力としてそのまま付与されるのだ。更にいま、お主らは一人ひとり年齢が違うであろう。」
(言われてみれば、俺以外もみな若返っているというわけじゃないな、かなり幼い人から人によっては老人までいる。一体どういう基準で選ばれているんだ。)
「これは鬼と戦うにあたって一番実力の発揮できる年齢、すなわちお主らがこの地獄で最強の年齢が割り当てられている。そして、生前人殺しなどをした重罪の罪人は今鬼として生まれ変わり、地獄でお主らを待ち構えているわけだが、やつらにはステータスという概念はあるが幾らお主らを殺してもこのレベルアップなどのステータスが向上するという概念はない。ここまでお主らにとって好条件にするには一つの理由がある。それは、鬼の圧倒的強さだ。おそらく地獄にいけばその強さに気づくであろう。」
(なるほど、つまり俺らは殺しに来る鬼を倒していけばいいということか。しかし、なぜそんなことをする必要がある?そもそも地獄いきが確定しているのに鬼と戦う必要があるのか?)
「そう、そろそろお主らも疑問に思い始めた頃であろう。なぜ、鬼と戦う必要があるのかと。それはな、大王である我々から与えるお主らへの救済措置だ。重罪を犯していないお主らが全員地獄で拷問を与えられるのは少々酷であろう。それ故鬼を殺しより地獄を突破したものには天界にいく権利が与えられる。つまり、お主らは天国にいくことが出来る可能性があるということだ。因みに鬼になった奴らは天国にいくことはできないが、餓鬼道という道を辿りより上位の鬼となることが出来る。この地獄には階層があり、餓鬼道を辿る方法は一定間隔で来るお主ら人間をその階層で2割以下にすることだ。より上位の鬼は下位の鬼を統括することができ、最高位の阿鼻地獄まで行きそこで来る人間を全滅させればその鬼は天国とはまた別の天界に行くことができる。それ故に鬼はお主らを全力で殺しにくる。しかし、お主らは別に鬼を全滅させる必要はない。1階層につき7日間耐え抜けばよいのだ。その際、階層主となる鬼さえ殺しておけば、それ以外の鬼は殺す必要がない。但し、階層主は一つ上の階層から用意されるためかなり強力だがな。階層は全部で8階層あり、まず門に入ると等活地獄に辿り着く。そこから、お主らは黒縄地獄、衆合地獄、叫喚地獄、大叫喚地獄、焦熱地獄、大焦熱地獄、阿鼻地獄と辿っていく。これがお主らの地獄を辿る道、修羅道だ。最後の阿鼻地獄だけは少し攻略の条件が異なるがそのことについて今は話す必要があるまい。どうせそこまで辿り着けるものはこの中の一握りだからな。そして、その階層と階層の中間ごとに大王が待ち受けている。我々大王はお主ら人間に試練を与え、審判を下す為に用意されている。より強力な力を手に入れるかはたまた鬼の餌になるかはお主ら次第だ。」
「さて、ではそろそろ地獄に行ってもらうことになるが、もし鬼に殺されてしまった場合はどうなるのか教えてやろう。今度こそお主らの魂は破壊され、輪廻転生によりお主らは別の生命体へと生まれ変わる。しかしそれは人間などの動物ではない。生命に意味を感じる事のない植物などになる。そして、その植物などは輪廻転生に適応される事はなく、寿命がくればそのまま朽ち果てておしまいだ。それを望む者はすぐに死ぬがよい。では、楽しい地獄の始まりだ。」
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