神鎧/ゴッドウォーマー

鮎川雨

ウォーマー

「これが学校か?」


今日は高校の入学式、普通は希望を胸に元気に登校するものだと思う。しかし、都会にあるくせに、おんぼろな学校を目の前にすると希望はないようなものだ。


実を言うと、家の近くにもっと綺麗でおしゃれな高校があった、しかしそこは悪魔を討伐するウォーマーを育てる高校、そんなとこに行く訳がない。


「新入生の皆さんは教室に入り、待機しておいてください。」


どでかいアナウンスに従うように教室に大勢が向かう。

俺は1-3だったのですのこで靴を脱ぎ教室にトコトコと歩いていく。


 ボロ臭い教室に入り、席に着き指示があるまで待っていると1人のロングで目が大きいどちゃくそ美人な女が話かけてきた。


「貴方名前は?」

「カイル、君は?」

「アキナ、宜しく」

「なんで名前を聞いてきたんだ?」 


普通に考えれば俺みたいなやつにこんな綺麗なやつが話しかける訳が無いと思い聞いてみた。


「特に理由はないけど、強いて言えば顔が面白いからね」 


クスッと笑い席に戻っていった。

いや、めちゃめちゃバカにしてますやんそれ。

性格悪っ!


そう思いながら俺は本を読もうと思ったその瞬間…

「緊急速報、下等悪魔が複数体出現。生徒はその場で待機、教師は戦闘体制へ。」

教室がザワザワとしだす。


「カイル!逃げるわよ!」

「はぁ?」


アキナが俺のところに走ってき、腕を掴んで引っ張った。

この世界では悪魔が発生するのはよくあることだ。まして下等悪魔なんて普通の高校の教師1人でも十分なぐらいだ。教室にいる生徒も「面倒ごとだ。」と思ってるぐらいで危機は感じていない。


「なんで逃げるんだ?」

「いいから早く!」


俺はアキナに引っ張られながら廊下を走り、上履きのまま校門を抜け出した。


「もっと遠くに行くわよ!」

「なぁ、なんでだ?下等だろ?そんな危険なことは———」


——————バンッ!———————


爆発音が空に響き、まさかと思い後ろを振り向くとキノコ雲が空に上がり、鉄の破片が飛び散っていた。そのキノコ雲の中には下等悪魔とは言えない、羽の生えた黒い悍ましいものが浮かんでいる。


「逃げろー!」

「キャー」


生徒たちの悲鳴が響きわたっている。


「振り返るな!行くわよ!」

走っている途中でも後ろの方から爆発音が鳴り響く。俺はアキナと必死に走り少し離れたビルの地下に避難する。


「いい?ここで黒いスーツを着た人達が来るまでここで待っていて、わかった?!」

「ちょ待てよ!お前はどうすんだ?!」


そんな質問を無視してアキナは走っていった。

なにが起きてるんだ?なぜ?下等悪魔なはず、教師はどうしたんだ?


ドン!ドン!


地下に避難していても安全とは思えない。あの悪魔がこっちに来ているのが分かる。

なんなんだ、この恐怖感は?!


「怖いよぉ」

「どうなってるんだ」

「ウォーマーは!?」


周りの人達も焦り出す。通常、上等悪魔以上のものが出現すれば警報が鳴るはず、なぜ警報がないんだ?


ガシャ! ドカン! ドンッ!


誰かあの悪魔と戦っているのか?ウォーマーが来ているのか?


ここで待っとけと言われたが気になって仕方がない。


「ちょっとだけなら..いいよな?」


タッタッタ


階段を上がると客が多数集まっており、窓からビルの外側を見ていた。


「ウォーマーだ!」

「やったれ!ねぇちゃん!」


客たちの目線の先を見てみると………

オイっ!アキナかあれ!?なにしてんだ?

アキナの前にはあの悪魔が浮いている。

あいつ、ウォーマーなのか?

そんな俺の混乱を置いてくようにアキナがポケットから札のようなものを取り出し、悪魔の方に走り出す。


おいおい戦うのか、あいつ?



「神よ、我が身に宿いたまへ!」


アキナがそう叫ぶとアキナの脚と手が蒼い鎧に包まれ、一つの剣が現れる。


ウォーマーは神の力を借り、悪魔と戦う。

神の力の恩恵は人によって違い、全身を覆う鎧を纏うものや、銃を使い戦うものもいる。


「大人しく祓われろ!」


アキナが地面を蹴り悪魔のところまで飛んでいく。

剣を両手で持ち、悪魔に襲い掛かる。


「ハッ!?」


悪魔は片手で剣をとめもう片方の腕でアキナの腹を殴る。


「ぐはっ」


アキナは吹き飛ばされ地面に叩きつけられる。

それをお構いなしに悪魔は襲い掛かる。


「おいおい..大丈夫なのかあれ?」


いや大丈夫な訳がない。だからといって俺ができることも……


「なんなんだよ!」

「ウォーマーだろ!」

「おしまいだぁ」


人達は騒ぎ出し、地下へ逃げ出した。


外を見るとアキナの頭を悪魔が持ち立っている。


「お終いだ。」


と言い、その瞬間黒い光に包まれた。


ドン!と鈍い音が響き、窓ガラスは割れ、俺は床に倒された。


「痛ってぇ」


背中に痛みが走り、俺はゆっくりと立ち上がり、恐る恐る外を見てみる。


道路には窪みができ、その真ん中にアキナが倒れている。


「あぁ、もうどうにでもなれ!」


俺は窓を飛び越し、アキナの方へ走りだす。なんで助けようとしているのかもいまいちわからない。でも、こいつ女子高生になったばかりだろ?


俺は窪みに飛び込みアキナを抱える。

アキナの頭から血がダラダラと流れ、今にも死にそうな…


「おいっ!生きてるか?逃げるぞ!」

「カイル?なんで…待てと言ったでしょ…」

「うるせぇ!逃げるぞ!」


アキナを抱えながら窪みを上がり、走り出そうとした。

しかし空を見上げると、悪魔がまだここにいたことに思い出した。


「あっ、あのぉーこれわぁー」


悪魔がこちらを見て微笑む。これほど気持ち悪い笑顔、俺は知らない。


「カイルッ これを…使って」


アキナはボロボロの腕でポケットから赫い札を取り出した。


「まさか、俺がウォーマーになれって言うのかお前?」


コクンと頷きアキナは気を失った。


俺が?ウォーマー?できるのか?


しかし悪魔は考える時間をくれそうにもない。


「へへっ、もう一か八か!」


「神よ!我が身に宿いたまへ!」













 

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神鎧/ゴッドウォーマー 鮎川雨 @ayukawaame

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