第10話 恋愛漫画


 裸で寝そべったまま、布団の脇に置いてあったマンガをペラペラとめくる。僕はそのままひとりごとのように言う。


 「恋愛漫画でさ、主人公たちが別れたあと、それぞれが別の人と恋する話があってさ。なんかそういうのって発情してるなあとしか思えなくて、モヤるんだよね。もっと一途であってほしいというか……」

 「いまこの状況でそれ言う?」


 横でスマホをいじってた裸の彼が言う。

 うーん。まあそうなんだけどさ。


 「いろんなひとと付き合って結局この人しか、というのはアリなんだけどね」

 「責任論の話?」

 「責任かあ。責任って何だろうね」

 「……お前のこと一生幸せにするよ」

 「ぷふ、嘘くさーい」

 「ほんとだって!」

 「8股かけてる人が何言ってるの?」

 「みんなとは別れるからさ」

 「はいはい」

 「お前こそ責任とれよ。同性に目覚めちゃったし」

 「それはたいへんだね」

 「……もうお前なしじゃ嫌なんだよ」


 ああ、かわいいな。男の人のこういうところって。私は言葉にするにはもったいない感情が高まってしまい、彼の唇と自分の唇をつい重ねてしまった。


 「ねえ、私は一途なほうだよ?」

 「知ってる」


 今度は彼から唇を奪われた。

 人の心はわからない。これからどうなるかも。私の前には不安しかない。でも、それでもいまだけは一緒の気持ちになりたい。


 「愛してる」

 「俺も」


 そうだね。こうなったらふたりでマンガみたいなハッピーエンドを探さなきゃ。

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