第4話 タバコの吸い方


 甘いタバコの香りがして目が醒めた。さっきまで自分の上にのしかかってた彼が、ベットの端でタバコを燻らせていた。


 「起きたのか」


 僕はそれに答えずにベットを抜け出し、彼の横に座る。それから少しねだる。


 「1本もらっていい?」

 「吸うのか?」

 「意外?」


 彼がタバコの箱を私に向けた。そこから1本抜き出すと口に加える。彼にタバコの端を向けると、そこに赤く灯した自分のタバコをくっつけた。少し吸って息を吐きだすと、紫煙が宙に舞っていく。


 死なないもんだな…。


 学生時代の親友が結婚すると明るく言ってた。

 僕は上辺だけの祝福を言って暗い顔をしてた。


 恋してた。


 夏の夕暮れ、親友に女の格好をして告白してみたら「冗談だろ?」で終わった。


 それからは自分を殺してほしくて、ゆきずりの男と何度も交わった。手をかけて欲しかった。自分が親友を好きになった罪で死刑になりたかった。


 あれから、男になれず、女にもなれず、男にすがり、女にさげすまれ、タバコの煙のように生きてきた。


 ふう……。


 彼に体をそっと預ける。


 「どうした?」

 「ちょっと昔を思い出しただけ」

 「そうか」


 あの日に置いてきた感情は、僕をいつまでも縛り続ける。その隙間から漏れ出した紫の煙が、さまよった僕と同じように空気をただよい、はかなく消えていく。

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