第2話 ウキウキご飯


 「どうしてお腹が減るのかなー。エッチをすると減るのかなー」


 おなべコトコト。フライパンじうじう。

 古ぼけたコンロで美味しいものが出来上がっていく。

 彼が料理をしている僕をのぞき込む。


 「お、いい匂いする。って、裸エプロンかよ!」

 「だって服着るのめんどいし。まだ垂れるし」

 「やけどするぞ」

 「いいもん、君が舐めて直してくれるもん」

 「そんなこと言う子はお仕置きだ」


 彼の手がお尻を撫でる。やわらかな窪みへと手を這わせる。


 「んっ…」


 僕は彼の手を握り、優しく払い除けた。


 「こらこら、ダメでしょ! すぐできるから、待ってなさい」

 「はいはい」


 お鍋の具が炊き上がる。ふっくらとしたそれを皿に装い、居間のテーブルに並べる。女装していたときのスカートや下着が散乱しているが、おかまいなしだ。


 「はい、いただきます!」

 「いただきまーす」


 彼が料理にさっそくパクつく。


 「美味しいな、これ」

 「前に作ったときに、美味しいって言ってくれたから」

 「そっかー。覚えてくれたんだな。いい奥さんになれるな」

 「えー、ぼく男だよー」


 彼と僕はすっかり平らげた。彼がお腹をさすりながら言う。


 「はあ、うまかった」

 「デザート食べる?」

 「うん、食べる」

 「あ、ちょっと……」


 彼が僕の手を引っ張り押し倒す。彼が上に覆い被さる。


 「ちょっと待って、僕はデザートじゃないよお」

 「俺にとっては甘いものなの」


 僕は腕を伸ばし、彼の痩せた頬にそっと触る。

 急に彼は悲しそうな顔をした。


 「冷蔵庫の食べ物、あれで最後だったんだろ?」

 「うん……」

 「やりくりしてくれてありがとな。明日から働くよ。俺」

 「僕ががんばるよー」

 「だめだ。こうなったのは俺のわがままだから。心配かけてごめんな」

 「ううん、大好き!」

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