想いを伝えた彼
[綾ちゃん]の土葬が終わってもう一年。
綾ちゃんの一周忌もこないだやった。
また実体化してなんか言うのかな?
やっぱ綾ちゃんの存在が無ければ、俺は調子が狂うな。
綾ちゃんのことをどんだけ好きだったんだろう?
あれ?なんかうっすらと見えるのは……
『ゆーうくん!久しぶりだね!私の方からは見えていたけどね!
なになに?言いたいことがある?いいよ!』
綾ちゃんから出る言葉は明るい。
それが綾ちゃんの特徴だ。俺は一年間思い続けたことを言う。
「綾ちゃん。いや、綾。このI年間、綾がいなくて寂しかった。だって今まで12年間ずっと一緒にいたのに、急にいなくなるなんて目の前でトラックにはねられて死ぬまで全く思ってもいなかった。その寂しさの中に綾ともう一つのものを無くした気がしたんだ。その時は人間関係がなくなったと思っていたけど、いろんな人と交流してもそのもう一つの物は見つからなかった。だけど、綾を見たらすぐにわかったよ。これが「恋」なんだってね。去年の返事を今するよ。
ーーーーー綾、大好きだよ。」
『ふぇ?え?悠くんが私のことを好き?えへへ…やったね。』
一コンマいれて絢ちゃんは幼稚園から思い続けていることを言った。
『私も悠くんのこと、大好きだよ!』
「そうみたいだな」
と言うか去年言ってたな……
『私たちって両片思いだったのかー…早く言ってくれればデート行けたのになー』
「ははっ!そうだよな」
とこんな感じで「もし〜だったら」のIFばっかりしゃべった。
もうあり得ないのにな。
『あ、もうそろそろ時間だ』
突然絢ちゃんはそう言った。
「もう会えないのか?」
『うん、悠くんと別れるのは寂しいけど天国で待っているね!』
「そうか、天国か。じゃ、天国で一緒に暮らそうな!」
『そうだね!待っているよ!』
「おう!もうちょっとこの人生を楽しんでから行くからな!絶対待っとけよ!」
天国で綾ちゃんがずっと待っているなら、それを目標にこの人生を歩んでいける。そう思った瞬間であった。
『うん!じゃあね!』
そう言った瞬間、綾ちゃんはこの世界から消えた。
それから数十年後…
病気にならなかった人生だと布団の中で思った。
周りには息子と娘と孫達がいる。
嫁とは二十歳で結婚し、そして85歳で亡くなった。
もちろん嫁には天国で待っている人がいるとプロポーズされた時に言った。
嫁は「そうですか。じゃあ私は二人目ですね」と言われた。
それから
会社を立て、大企業まで上り詰めた。
多分、大企業まで上り詰めれたのは綾という存在があったからだろう。
引退後は息子にその地位を譲った。
もうこの人生は目一杯楽しんだ。
あとは綾のいる天国へいくだけだ。
ーーーーーー16時47分 橋本悠、老衰にて死亡。享年108歳
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます