49 アイラを追いかけて
補給用のコンテナの上にお行儀よく座る空色の制服の女がいた。
「あらあら、素晴らしいご活躍ですこと」
ソラシアがニタリと笑うのであった。彼女は飲んでいた紅茶を脇に置いてすっと立ち上がる。そして、私の
ソラシアは小さなポーチを開いて、中から手紙を取り出す。
「こちらドメル将軍からあなたにお届け物ですわ」
「将軍から?」
中を読んでいく。私に対する命令書のようだった。命令書は難しい言葉が多いのに、ソラシアがぺらぺらと何かしゃべり始める。そんなノイズのせいで、集中できない。
「で、ドメル将軍結婚なさるそうよ」
そして、聞き捨てならないセリフが耳に飛び込んでくる。私との結婚だろうか?
(その話、しばらく秘密にするはずじゃなかったっけ?)
「お相手の方にご挨拶してきましたが、かわいらしい女の子で、私よりも身長が小さくて、ぶりっ子でしたわ。お料理が得意で、いかにも男受けしそうって印象でしたの。わたくしドメル将軍がそんな女性の趣味だと思わなくてがっかりでしたわ」
「へっ?」
あれ、おかしいな。ソラシアのことだからひがみの一言を言いに来たと思ったのだけど、まるで私ではないほかの誰かとドメル将軍が結婚するみたいなことを語っているようで、私のことを
そもそも、料理得意じゃないし、ぶりっ子でもないし…、男にはモテるけども。
「ふふっ、混乱なさっているの?」
ソラシアは私を
「つまり、ドメル将軍はあなたとは結婚しないのよ。あなた
「ははははっ、いや、そんな…はははっ」
「ほら、その命令書もよくお読みなさい。あなたに死ねって書いてあるのだから」
すでに手が震えている。涙が
「要するに、一人で敵陣の奥深くに突っ込んで可能な限りの破壊活動を実施せよ! 補給はない! はい、以上ですわ」
そして、震えている私の手にその命令書をもう一度握らせるのだった。
「えっ、えっと…」
私はそれでも状況が飲めなかった。
「情けないわ。あなた、弄ばれただけですわ」
「はっ?」
胸を締め付けるこの気持ちは、呪いなのかそれとも…。地面に膝をついて悲しんでいると、ソラシアは乱暴に補給用のコンテナを投げつけてくる。
「ほら、用済みなのだからさっさとお行きなさい!」
「信用できるかよ!」
「は?」
「お前の言葉なんて信用できるかって言ってんだよ!」
そうだ、こいつが嫌がらせのために仕組んだことだろう。そうに違いない。人のこと銃で撃つような奴だ。それくらいしたっておかしくない。
「アイラ、見苦しいぞ。さっさと作戦行動に戻れ」
でも、それを裏切る声が聞こえた。ドメル将軍本人の声が聞こえたのである。
「まぁ、だまして悪かったとは思っているけどな」
あぁ、嘘だと言ってほしい瞬間だったのに。本人から認められるなんて思わなかった。しかも、何一つ反省の色を感じないし、やっぱり私は、その程度の女なんだなって。私はやっぱり
「ほら、さっさと行け」
ドメル将軍はカヌレに弾薬を直接積み込み、地面に膝をついて呆然としている私を軽々持ち上げてカヌレに無理やり乗せるのだった。
そして、そのあとは何も言わず去っていく彼の背中が見えた。
私はそのままカヌレのスロットルを全開にして猛スピードで飛び立つのだった。
「ああああああぁぁぁぁぁ!!!!!」
私の
「あらあら、アイラさんついに頭がおかしくなってしまいましたわ」
ソラシアがキャッキャと笑っていることだけが想像できた。
「さぁ、ブルーム少尉。お
しかし、ソラシアが振り向いた時には、王子とキリエは共にカヌレに乗って飛び立っていたのだった。
「追いかけよう!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます