29 ホットライン・コールドライン
「書記長殿、何度も警告いたしますが、グリニジア帝国は
帝国を打倒するためエルディス連合王国が中心となって連合国を
しかし、プラウダの書記長の
「プークスクス。連合がそろって帝国にコテンパンにのされてやんの。だっせー」
とても国家元首とは思えない煽り文句。これに対して、エルディス連合王国の代表であるテイラー首相は
「いえ、ですがこれは我らが情報部の
この際だから、
「なんと、帝国兵が堂々と
書記長は考える。プラウダには完璧な密告システムがあるけれど、部下から敵の飛行機が国境内に侵入しているなどという報告は受けていない。だから、書記長はブラフだと思った。
「何顔真っ赤にしてむきになってんの? 帝国に負けたのがそんなに悔しいでちゅか、そうでちゅか、そうでちゅね~」
「こっちが下手に出てりゃ調子こきやがって! いいか、言ったからな。こっちは警告したからな! 支援が欲しかったらもう一度赤ちゃん言葉で要求させてやるからな!」
ホットラインは
「くそう、せめて消息不明のフランシス王子が見つかれば!」
「首相」
「なんじゃ!」
怒り心頭中の首相に全く動じないクールな
「フランシス情報部によれば、第三王子はどうやらご存命とのこと」
「ほんとうか!」
首相の表情がぱぁっと明るくなった。
「それで、今は何を?」
「それが、帝国の女について行ったとの報告が…」
首相がしばらく考え事をする。冷静すぎる補佐官が言ったことが理解できなかった。
二~三度聞こえた言葉の意味を考えていたが、なるほど、これは怒ったほうが良い場面なのだと理解した。
「どいつもこいつも、何やってんだ色ボケが!」
世界を結ぶホットラインは残念ながら冷え切っていた。
*****
「なぁ、アイラ」
私とクロルは今夜の
「なんだ?」
「これから戦争かもな」
要人を強引に助けるなんて
「そうかもな」
そんな、クロルのやる気ない問いかけに対して私はより一層やる気ない返事で返す。
「まぁ、脱出すること決めちまったし、関係ないかぁ」
実はもう、みんなとは相談を終えていた。私と王子とみんなで決めたことは二つ。一つはこの任務を終えたらそのままみんなで国外逃亡しようという話。もう一つはその過程で私の両親を連れ出すことである。
「そうか、ようやく自由になるんだな…」
普段、マイペースでなんでも自由にやりたがるクロルに科せられた呪いは「
一等国民ならだれでもクロルに絶対の命令を与えることができた。
呪われて最初に命じられたことは「両親を殺すこと」それ以降クロルは
「帝国民がいなきゃ、私は呪いがないのと同じだな」
「そんなクロルは手に負えないだろうな」
「はははははははは、私の本当の実力にひれ
誰も、この帝国に
「アイラ。この仕事さっさと片付けようぜ」
「あぁ、その先に
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