11 スカートに空いた穴
帝都の
「エリックは?」
「先に馬のご準備をなさっておりますよ」
献身的なものである。昔はいじいじして行動が遅かったが、今では立派な
「で、リリーはなんでその
私と同じくお出かけの準備ばっちりのリリーであった。
「私も帝都に行きたい」
参謀本部へ行くのは当然ながら指揮官のエリックと一緒になる。
「拾ったのは私なんだから、
そして、自分の欲望を全く
「いや、だけどな…」
「いいではありませんか。お使いもお願いしようかしら」
なんとコルコアも敵側に回ってしまう。キリエはお使いという言葉に反応し、メモを取り始める。買いたいものリストでも作っているのだろう。クロルに至っては「私も行きたい」と言わんばかりの顔をしていた。
「わかった、今回は特別だからな」
「やったー!」
両手を上げてジャンプしてまで喜びを表現するリリーだった。が、ジャンプして服がひらりと
「リリーのスカート、穴空いてないか?」
「え?!」
尻から腰のところにかけて弾丸が
「げ。最悪!」
「まぁ、無理に行かなくてもいいんだぞ」
そうやって茶化すとご機嫌斜めになるリリー。
「なぁ、アイラ」
私の後ろに立つクロルが声を上げる。
「お前のスカートも穴あるぞ」
自分の尻あたり手で確認してみる。リリーと同じような破れ方しているのが分かった。 というか。穴空くとしたら一昨日の戦闘だから、昨日はこのままドメル将軍と会っていたのか!
「リーダー、パンツ見えてるどうし恥を忍んで帝都に行きましょうか」
おかげでリリーの覚悟が決まってしまった。と、同時にリリーの欲望がもう一つあふれ出す。
「あぁー! もっと、きれいな服が着たい!」
「お、おう」
華の帝都へお出かけだから、おしゃれしたいよな。でも、二等国民の私たちには叶わぬ夢なんだ。あきらめろ。改めて見直すと制服はいたるところがボロボロになっている。戦闘で使っているから仕方ないけども…。
「なんとかしてほしいです…」
リリーは自分のスカートをくるりと回して裂けている場所からパンツを見せる。しかし、私は言われても困るだけなのだ。
「リーダーは恥ずかしくないんですか!」
「別に、見られても減らないし困らないだろうよ」
これが、私にできる最大限の強がりだった。
「今、困らないって言いましたね!」
「え?」
リリーは何やらよからぬことを考えているらしい。
そのまま外に出るとエリックが馬を撫でている。
「エリック、急遽3人で行くことになった」
「大丈夫、そう思って3頭連れてきた」
なんと気の利くやつであろうか。私が馬に乗ろうとすると、王子は私の体を抱きかかえてあっさりと馬の高さまで持ち上げる。すとんと馬に乗せられて、あっけにとられる。
「わー、いいな。私もやって!」
そう言ってリリーもエスコートされる。ご満悦の様子だった。
私たちは王子のちょっと後ろに続いて馬を歩かせる。その間、リリーはずっとスカートの裂け目を気にしていた。座っていると裂け目が開いて本当に丸見えになってしまうから。それに、尻のきわどい部分まで裂けていてちょっと不憫だった。
(私だって嫌だけどさ…)
虐げられている二等国民のための物資を帝国に要求するのは勇気が要るのである。
そんなリリーが急にぴたりと立ち止まる。
「?」
それに対して先を行くエリックがいち早く気づいた。そして、止まって振り返る。
「どうした??」
面倒見のいいエリックの横顔を追いかける私の視線。今まで、私たちを気遣ってくれる指揮官なんていなかったからそれだけで新鮮な光景。それに、エリックは誰に対しても優しい男に育った。
しかし、エリックの心配をよそに何も言わないリリー。仕方ないのでエリックは様子を見るためこちらに戻ってくる。私の横を通り過ぎようと近づいてくるエリック。そして、ちょうど私の真横に来たあたりだった。
「リーダーのスカートに虫がついてます!」
タイミングを見計らったようにリリーが私のスカートを指さす。とっさのこと、私はスカートに視線を落とす。スカートには穴が開いていて、パンツが見える。がほかには何もない。
「なんもいねーじゃ…」
しかし、すぐ横にいたエリックが何かを見た後に、すごい勢いで視線を逸らしたことに気づく。私がエリックを見る。すると、見てませんアピールのためかエリックは素知らぬ方向を向いてごまかす。
(見たな…こいつ)
エリックはそのまますたすたと司令部を目指し始め、リリーもおとなしくついてくる。以降、私はそのスカートの穴が気になって仕方なくなった。
「アイラ。いったん司令部で新しい軍服をもらってこようか」
ほんと、気の利くいい男に育ったな!
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