05 噂の将軍様
第六軍の司令部は小さな町を帝国軍が借りて設営されている。
一等国民は民家を兵舎代わりにして住み、二等国民兵は町の外周の畑に設営されているテントに寝泊まりしていた。
テント街は
「いつもこんな道を?」
「ここが近道だからな」
私は気にせず進み、王子もぴったりとついてくる。
「おい!」
男の野太い声が私たちを呼び止める。そして、二人の屈強な男が私に近づいてくる。正直、こんな男しかいない場所で、か弱い女子である私が通ればいつも誰かしら声をかけてくるのは当たり前と言えば当たり前である。
ただ、予想外だったのは、王子がその二人から私を守るように、馬を
沈黙する二人の男たち。そして、二人同時に首を
「この男は誰?」
彼らは私と同じ二等国民。帝国に
ただし、逆に困った事情も知っている。一緒に戦っていた彼らは
「か、代わりの指揮官だ!」
「そうか、随分いい男じゃねーか。惚れちまいそうだぜ!」
と言って、大柄の男が王子に投げキッスをする。
「どうも」
と、お礼を言った。
さて、声をかけられたからお使いも頼むとしよう。
「この手紙頼めるか?」
屈強な二人の男に大切な手紙を預ける。
「おう、しっかり渡しておく!」
「じゃぁな、今度も生き残れよ!」
「女神がいれば心配ないさ!」
私は手を振ってまた馬を進める。すると、王子がやたらと馬を寄せてくる。すぐ右側に見える王子の顔が説明を求めている。
「安心しろ、こいつら私の尻は触っても手は出してこないさ」
「尻は触られたのか?」
「お前も触るか?」
恥ずかしそうに眼を背けるエリックだった。お前が照れると、私もなんか恥ずかしくなるだろうに。
(まぁ、守ってくれてうれしかったよ。ありがとう)
私たちは戦車大隊も
私たちはそのままテント街を抜けて市街地に入る。すると、
「こっちだな」
私たちは馬を
「これから、
「変なことするなよ」
「隙があればあるいは…」
正直、帝国軍人は
「そういえば、君が将軍に直接報告するのか?」
指揮官だったブルームは少尉。士官学校を出てすぐのやつと同じである。要するに、帝国軍人では一番下っ端。そんな下っ端が、師団のトップである将軍(中将)の
「第6軍の闇落ち聖女隊は私たちともう二つしかないからな」
さらに言えば、たいていお付きの指揮官様は闇落ち聖女の戦いについてド素人なので、結局私が直接将軍に
「まもなく将軍様がいらっしゃる」
私と王子は敬礼して待つ。軍靴の音が少しずつ近づいてくる。いよいよであった。
きりりとした目つきにちょっと
「おぉ、アイラ! 元気そうじゃないか!」
「はい。アイラ隊、報告に上がりました」
そして、開始早々、報告なんてそっちのけで話が始まった。
「まさか中将がフロートに乗ってるなんて思わなかったから」
ティーヌ川を超えるとき戦車が通れる橋がなくてドメル将軍と手を取り合って一緒に
フロートを手繰り寄せると男が仁王立ちで立っていた。敵に
「お前、目を丸くしてたな。かわいらしくしやがって」
「うるせー、誰だってびっくりするって」
と、立ち話をしていると、王子が話に割り込んでくる。
「仲いいんだな」
と、聞かれたと思う。急に話に割り込まれ、さらに
(目立つことするんじゃねーよ!)
とは口にできないが、そういう顔と視線を送る。そして、最速の男がもちろん反応した。
「ん? そういえばお前、新任か?」
黙っていれば気づかれなかったかもしれないのに、恐ろしい目つきでエリックを
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