第八幕


 第八幕



 麗らかな初夏の陽射しに照らされたノール高速道路を徒歩でもって渡り切り、やがて始末屋は、パリ郊外に在るシャルル・ド・ゴール国際空港の第2ターミナルビルへと辿り着いた。

「ふう」

 言わずもがなそう言って一息吐いた始末屋が辿り着いたこの空港は、第一次及び第二次世界大戦で活躍した軍人であると同時に、第十八代フランス共和国大統領としての職務を全うする政治家でもあったシャルル・ド・ゴールにちなんで名付けられた、世界有数にしてフランス共和国最大の国際空港である。

「さて、と。券売機はどこに……ああ、あそこか」

 そう言った始末屋は数多の利用客でもって賑わうターミナルビルのロビーを足早に縦断し、航空会社の自動券売機の前まで移動すると、その券売機でもってコート・ダジュール国際空港が在るニース行きの航空券を購入した。そして空港内をぶらぶらとそぞろ歩きながら暇を潰していると、やがて彼女が搭乗すべき旅客機の搭乗開始時刻の到来を告げる館内アナウンスが耳に届いたので、始末屋はターミナルビルの三階に位置する搭乗ゲートの方角へと足を向ける。

「どうぞお客様、快適な空の旅を、心行くまでお楽しみください」

 ややもすればかしこまったフランス語でもってそう言った客室乗務員キャビンアテンダントに案内されながら、ニース行きの旅客機に搭乗した始末屋は、ビジネスクラスの座席の一つにどっかと腰を下ろした。パリ郊外のシャルル・ド・ゴール国際空港からニース郊外のコート・ダジュール国際空港までの所要時間は僅か一時間半程度に過ぎないので、単純にコストパフォーマンスを考慮すればもっと安価な座席を予約すべきなのかもしれないが、彼女の長身で大柄な身体にエコノミークラスの座席は狭過ぎるのだから是非も無い。

「皆様、当機はまもなく離陸いたします。シートベルトの着用を、もう一度お確かめください。三歳未満のお子様は、膝の上でしっかりとお抱きください。一人でお座りのお子様のシートベルトも、保護者の方が、併せてお確かめください」

 そうこうしている内に流麗な若い女性の声でもってそう言った機内アナウンスに引き続き、始末屋とその他数多くの乗客達を乗せた旅客機はシャルル・ド・ゴール国際空港の滑走路上をぐんぐん加速すると、ニース郊外のコート・ダジュール国際空港を目指して離陸した。離陸した旅客機は見る間に高度を上げながら大気を切り裂いて上昇しつつ、地表から遠ざかれば、やがて眼下に広がるパリの街はまるで米粒か豆粒の様に小さくなって視界から消え失せる。

「お客様、何かお飲み物をお持ちいたしましょうか? 温かいコーヒーに紅茶、ビールにワイン、それに冷たいシャンパンも取り揃えております」

 するとシャルル・ド・ゴール国際空港の滑走路から離陸した旅客機が高度10000mを維持しながら水平飛行へと移行すると、若い女性の客室乗務員キャビンアテンダントの一人が機内を巡回しつつそう言って、ビジネスクラスの座席に腰を下ろす始末屋に問い掛けた。

「あたしは、酒の類は一滴も飲まん。代わりに新鮮で温かい牛乳ミルクを、出来るだけ大きなマグカップなりジョッキなりに注いで持って来い。それと、ニースに到着するまでの時間を利用して仮眠を取りたいので、毛布とアイマスクも一緒に用意しろ。急げ。ぐずぐずしていると、そのデカい尻を蹴っ飛ばすぞ」

 問い掛けられた始末屋がそう言って命じれば、一旦ギャレーへと移動してから大きなビアマグに注がれたホットミルクと毛布とアイマスクを手にしつつ再び姿を現した客室乗務員キャビンアテンダントは、その道のプロフェッシュナルらしく終始朗らかな笑みを絶やさない。

「お待たせいたしました、お客様。どうぞごゆっくり、安らかな睡眠をご満喫なさいます事を、心よりお祈り申し上げます」

「ああ、ご苦労」

 そう言った始末屋は若い女性の客室乗務員キャビンアテンダントが差し出したビアマグを受け取ると、一切躊躇する事無く、そのビアマグ一杯のホットミルクをぐびぐびと一息でもって飲み干した。そしてあっと言う間に空になってしまったビアマグを客室乗務員キャビンアテンダントに返却し、毛布とアイマスクを受け取れば、今度はそのアイマスクを装着して毛布に包まりながら仮眠の態勢へと移行する。

「……」

 ビジネスクラスのフルフラットシートの上でその身を横たえてからものの数分と経たぬ内に、航空会社のロゴマークが染め抜かれた毛布に包まったまま、始末屋はすうすうと穏やかな寝息を立てながら眠りに就いた。するとそんな彼女の脳裏に、まるで故事成語で言うところの『胡蝶の夢』を連想させるような夢とも現実とも区別がつきかねる、かつて体験した筈のアルファジリ共和国での出来事の記憶が蘇る。

「開けろ! ファハリ大統領よ、お前はもう、我らが反政府軍の突撃部隊によって完全に包囲されている! 今すぐこの扉を開けて投降し、法廷の場に於いて、公平公正に裁かれるがいい!」

 東アフリカの小国、アルファジリ共和国の首都ジュアの中心部に建つパッラーディオ様式の建造物、つまり広壮かつ豪奢な造りの大統領府の最奥に位置する執務室へと続く厚く重く頑丈な扉をどんどんと激しく叩きながら、カーキ色の戦闘服に身を包んだ一人の黒人男性がそう言って投降を勧告した。

「糞っ、駄目か! 往生際の悪い奴め!」

 しかしながら扉の向こうに居る筈のファハリ大統領は彼の執務室に引き篭もったまま投降勧告を無視するつもりなのか、いつまで経ってもその執務室へと続く扉が開く気配が無い事に落胆した黒人男性は溜息交じりにそう言って、天を仰ぎながらかぶりを振るばかりである。

「どうしたと言うんだ、アビンボラ上級大尉よ。さっきから随分と梃子摺てこずっているようだが、貴様、未だ大統領を捕らえかねているのか?」

 するとそう言ってアビンボラ上級大尉、つまり扉の向こうのファハリ大統領に投降を勧告していた黒人男性を名前と階級でもって名指ししつつ、褐色の肌の大女が数名の武装した男達を背後に従えながら姿を現した。そしてその身の丈が210cmにも達する褐色の肌の大女こそ、言わずもがな、駱駝色のトレンチコートに身を包んだ始末屋その人に他ならない。

「おお、始末屋か! いい所に来てくれた! 今から俺と一緒に、この扉をぶち破るのを手伝ってくれ!」

 カーキ色の戦闘服に身を包むアビンボラ上級大尉がそう言って協力を要請すれば、要請された始末屋は一歩前に進み出る。

「なんだ、大統領の奴め、援軍が到着するまで籠城するつもりか。そう言う事なら、是非も無い。この程度の扉など、貴様らと一緒に力を合わせるまでもなく、あたし一人だけの力でもって蹴り開けてくれる」

 そう言った始末屋は、アルファジリ共和国の大統領府のファハリ大統領の執務室へと続く扉の前まで進み出てから立ち止まり、その長く逞しい脚を上げて前蹴りの予備動作へと移行した。

「ふん!」

 そして気合一閃、鼻息も荒い掛け声と共に始末屋が渾身の前蹴りを叩き込めば、何者をも拒絶する筈の扉はみしみしと音を立てながらひしゃげ始める。

「ふん! ふん! ふん!」

 更に二度三度と繰り返し前蹴りを叩き込み続けた事によって、見る見る内に厚く重く頑丈な筈の扉はへし折れてひん曲がり、黄金色に輝く真鍮製のドアノブと蝶番ちょうつがいの周囲に蜘蛛の巣状のひびが入り始めたかと思えば、やがて一際大きな破砕音と共に扉は蹴り開けられた。蹴り開けられた際の衝撃でもって無残にひん曲がった扉の残骸が、ファハリ大統領の執務室へと続く廊下と、その執務室の空気をびりびりと震わせながら大理石敷きの床へと転がり落ちる。

「ファハリ大統領、覚悟!」

 すると蹴り開けられた扉の残骸をそう言いながら乗り越えて、アビンボラ上級大尉と数名の武装した男達、つまり反政府軍の突撃部隊の前線指揮官とその部下達が執務室の室内へと一気呵成に雪崩れ込んだ。

「!」

 しかしながら次の瞬間、数発ばかりの高温高圧の荷電粒子イオンパーティクルの塊が超音速でもってこちらへと飛び来たると、室内へと雪崩れ込んだアビンボラ上級大尉らの頭部や胸部に直撃して爆散する。

「何奴!」

 アビンボラ上級大尉とその部下達から遅れること数秒後、ファハリ大統領の執務室へと足を踏み入れた始末屋がそう言って、左右一振りずつの手斧を構えて臨戦態勢を維持しつつ問い掛けた。彼女の足元では荷電粒子イオンパーティクルの直撃によって上半身のほぼ全てが爆散してしまったアビンボラ上級大尉らの無残な爆死体が、真っ赤な鮮血と薄灰色の脳漿、それに砕け散った肉片や骨片を大理石敷きの床のそこかしこにぶち撒けながら転がっている。

「そう言うあんたこそ、どこの何者だ?」

 するとファハリ大統領の執務室の中央やや壁よりに設置された、如何にも高価で頑丈そうなオーク材で出来た大きな執務机の手前に立つ一人の人物が、そう言って始末屋に問い返した。見ればその人物は光沢も鮮やかな超硬合金製の強化外骨格パワードスーツに身を包み、その右腕に内蔵された荷電粒子砲イオンブラスターの砲口を、弾倉内の高温高圧の荷電粒子イオンパーティクルを再圧縮しながらこちらに向けている。どうやら状況証拠から推察するに、この強化外骨格パワードスーツに身を包んだ執務机の手前に立つ人物こそが、アビンボラ上級大尉らを惨たらしく爆死させた張本人で間違い無いらしい。

「あたしの名は始末屋。非合法組織『大隊ザ・バタリオン』に所属する執行人エグゼキューターの一人であり、それ以上でもそれ以下でもない」

 始末屋が左右一振りずつの手斧を構えながらそう言って名を名乗れば、超硬合金製の強化外骨格パワードスーツに身を包む人物は少しばかり驚いた様子でもって、自らもまた名を名乗る。

「ほう? あんたがあの有名な、百戦錬磨の女丈夫で知られる始末屋か。ああ、申し遅れたが、私の名は『鉄の紳士』のサルダール。あんたと同じ非合法組織『大隊ザ・バタリオン』に所属する執行人エグゼキューターの一人であり、今はファハリ大統領閣下の護衛の任に就いている」

 荷電粒子砲イオンブラスターの砲口をこちらに向けながらそう言って自らの素性を明かすと同時に、彼の身を包む強化外骨格パワードスーツの頭部が打ち開き、その中の人物の素顔もまた露になった。するとそこには、肌が浅黒く眼光鋭い、頭がつるつるに禿げ上がった一人の男の顔が見て取れる。

「何だと? 貴様が『鉄の紳士』の、あのサルダールだと? あたしが同業者から伝え聞いた話によれば、確か『鉄の紳士』のサルダールは『鉄の淑女』のアイーダ・サッチャーと常に行動を共にする、裏稼業のならず者らしからぬ鴛鴦おしどり夫婦の執行人エグゼキューターの筈だが?」

「ああ、確かにその通り、あんたの同業者からの伝聞とやらは事実に相違無い。しかしながら我が最愛の伴侶にして背中を預けるべき相棒バディでもあるアイーダは、ファハリ大統領閣下のご愛息の身辺を警護しつつ、彼を隣国へと亡命させる手筈を整えるべくこの場を立ち去った」

「そうか、あの浪費家で女好きの大統領の馬鹿息子は祖国を捨てて、恥も外聞も無く亡命するつもりか。だとしたら、この執務室に居る筈の肝心要のファハリ大統領その人は、一体どこに姿を隠した?」

 始末屋が手斧を構えながらそう言って問い掛ければ、問い掛けられたサルダールは顎をしゃくって、彼の背後の執務机の方角を指し示した。すると執務机の陰には如何にも高価そうなダブルのスーツに身を包んだ一人の肥満体の黒人男性、つまりファハリ大統領が身を隠しており、その苦み走った顔に不安げな表情を浮かべながらちらちらとこちらの様子をうかがっている。

「成程。反政府軍の手によって追い詰められた大統領はそこでぶるぶると震えながら身を隠すばかりで、サルダールよ、貴様がその大統領を守る最後の砦と言う訳か」

「……だとしたら、どうする?」

「決まっている。あたしはファハリ大統領を無傷のまま捕らえた上で裁きの場へと引き摺り出し、政権を転覆すべく力を貸せとの反政府軍の依頼を、貴様も良く知っているであろう『大隊ザ・バタリオン』の調整人コーディネーターを介して受諾した。そして一度引き受けた依頼は何があろうと完遂するのが、あたしのモットーだ。例外はあり得ない」

「つまり、ファハリ大統領閣下を反政府軍の魔の手からお守りしろとの依頼を引き受けた私や私の妻のアイーダは、あんたとは決して相容れない仲だと言う訳だな?」

「ああ、その通りだ」

 始末屋がそう言い終えるのとほぼ同時に、サルダールの身を包む強化外骨格パワードスーツの右腕に内蔵された荷電粒子砲イオンブラスターの砲口が眼にも眩いイオンガスを伴いながら火を噴き、高温高圧の荷電粒子イオンパーティクルが音速のおよそ十倍の速度でもって射出された。

「遅い!」

 しかしながらそう言った始末屋は、駱駝色のトレンチコートの裾を靡かせながら素早く身を翻し、こちらへと飛び来たる高温高圧の荷電粒子イオンパーティクルを回避すると同時に反撃に打って出る。

「そのブリキの鎧の下の素っ首を、今この場でね飛ばしてくれる!」

 回避と同時にそう言って啖呵を切りながら大理石敷きの執務室の床を蹴って跳躍した始末屋は、サルダールとの距離を一気に詰めると、左右一振りずつの手斧を振るって眼の前の獲物に切り掛かった。

「なんの!」

 するとサルダールもまたそう言って回避行動へと移行し、その身を包む強化外骨格パワードスーツの超硬合金製の装甲でもって始末屋の手斧の切っ先を受け流せば、今度は至近距離から彼女の身体に荷電粒子砲イオンブラスターの一撃を叩き込むべく荷電粒子イオンパーティクルを再圧縮し始める。

「させるか!」

 ところがそう言って更にサルダールとの距離を詰めた始末屋は、むざむざ荷電粒子イオンパーティクルが再圧縮されるのを黙って見ているほどお人好しではないらしく、絶え間無く手斧を振るい続ける事によって彼に反撃の隙を与えない。

「ええい、小賢しい!」

「貴様こそ!」

 大統領府の最奥のファハリ大統領の執務室の中央で、暫しそう言って互いを牽制し合いながら、始末屋とサルダールの二人は熾烈かつ苛烈な攻防戦を繰り広げた。始末屋の手斧の切っ先がサルダールの身を包む強化外骨格パワードスーツの装甲に刀傷ならぬ斧傷を刻み込み、サルダールの荷電粒子砲イオンブラスターから射出された荷電粒子イオンパーティクルが始末屋の身を包む駱駝色のトレンチコートを焼き焦がす。それはまさに、実力が拮抗した手練れの執行人エグゼキューター同士による、壮絶な命の奪い合いそのものであると言わざるを得ない。

「どうしたどうした、サルダールよ! 足が止まり始めたぞ!」

 やがて常人ならばその動きを眼で追う事もすらもままならぬ程の乱打乱撃が繰り広げられると、そう言って嘲笑交じりに煽り立てる始末屋の言葉通り、蓄積された疲労によってサルダールの足運びが緩慢になると同時に砲撃の手数もまた減少し始めた。どうやら無限のスタミナと肉体強度を誇る始末屋とは違って、如何に『鉄の紳士』のサルダールとは言え強化外骨格パワードスーツの中身は只の生身の人間でしかない上に、荷電粒子イオンパーティクルの再圧縮が荷電粒子砲イオンブラスターの連射速度に追随出来なくなってしまっているのだから是非も無い。そしていつ終わるとも知れぬ絶え間無き応酬劇は、遂に始末屋の手斧の切っ先がサルダールの右腕を強化外骨格パワードスーツの装甲ごと切断した事によって、その拮抗していた筈のバランスが崩壊する。

「くっ!」

 右腕を切断されたサルダールはそう言って苦悶の声を上げながら、一旦始末屋から距離を取るべく後退あとずさった。

「さあ、もう後が無いぞ!」

 サルダールが後退あとずさった分だけ前進して互いの距離を詰めながらそう言った始末屋の足元に、装甲の内側に未だサルダールの右腕が入ったままの強化外骨格パワードスーツの右の腕部の残骸が、まるで八百屋の店先に並べられた大根か何かの様にごろりと転がる。

「糞っ! この黒んぼの大女め!」

「おいおい、一体何を言っている? 肌の色の黒さなら、あたしも貴様もさほど大差が無い筈だろう?」

 そう言った始末屋は再び執務室の床を蹴って跳躍し、左右一振りずつの手斧を振り被りながら手負いの獲物との距離を一気に詰めると、右腕を切断された事によって戦意を喪失しつつあるサルダールに容赦無く切り掛かる手を止めない。

「ひっ!」

 切り掛かられたサルダールは恐れおののきながらそう言って、残された左腕だけでもって咄嗟に身を守ろうとするものの、今度はその左腕までもが強化外骨格パワードスーツの装甲ごと呆気無く切断されてしまった。

「ぎゃあっ!」

 そう言って短い悲鳴を上げたサルダールと始末屋の足元に、やはり右腕に続いて切断された左腕もまた八百屋の店先に並べられた大根か何かの様にごろりと転がり、彼の両腕の切断面からぼたぼたと滴り落ちた真っ赤な鮮血が大理石敷きの執務室の床をしとどに濡らす。

「さあ、サルダールよ、そろそろ年貢の納め時だ」

 始末屋はそう言いながら、眼の前の獲物にとどめを刺すべく一歩前へと前進するものの、両腕を失ったまま床にひざまずいたサルダールは既に完全に戦意を喪失してしまっていた。

「ま、ままま待つんだ始末屋! 降参だ! 降参する! 私はもう、これ以上あんたと戦うつもりは無い!」

 恥も外聞も無くそう言って無条件降伏と命乞いの言葉を口にするサルダールに、非情にも始末屋は最後通牒を突きつける。

「何? 降参だと? おい、まさか貴様、我らが誇り高き『大隊ザ・バタリオン』に所属する執行人エグゼキューター同士の神聖な戦いの場に於いて、そんな自分勝手な言い分が通用するとでも思っているのか? さあ、いつまでも馬鹿な事を言ってないで腹をくくったら、最後まで抵抗して無残に殺されるか、それとも抵抗せずに黙って大人しく殺されるか選ぶが良い」

「ま、ままま待ってくれ! お願いだ、命だけは、命だけは助けてくれ! ここで私が死んだら妻であるアイーダが悲しむし、彼女は今、私達二人の初めての子供を身籠っているんだ! だから、頼む! 我が子の顔をこの眼で拝むまで、どうかお願いだから、殺さないでくれ!」

 両腕を失ったサルダールは執務室の床にひざまずいたままそう言うが、そんな彼の切なる願いに対しても、始末屋は耳を貸さない。

「見苦しい生き恥を晒すな、サルダールよ。畏れ多くも執行人エグゼキューター同士の殺し合いに、妻が身籠っているだとかいないだとか、そんな些末な個人の事情は関係無い。勝者が生き残って敗者が死ぬ、只それだけの事だ」

 やはり非情にもそう言い放った始末屋は、絶望のあまり「そんな……」と言いながら項垂れるばかりのサルダールの身を包む強化外骨格パワードスーツの、比較的装甲が薄い首関節目掛けて手斧を振り抜いた。

「!」

 渾身の力でもって振り抜かれた手斧の切っ先が、断末魔の叫びを上げる間も与えぬままサルダールの素っ首をね飛ばせば、ね飛ばされた首から上は放課後の小学校の校庭に置き忘れられたドッヂボールの様にごろごろと床を転がり、残された首から下は力無くその場に崩れ落ちる。

「まったく、最後の最後につまらぬ命乞いでもって、せっかくの勝負に余計な水を差してくれる」

 ふんと鼻を鳴らした始末屋は如何にも不満げな表情と口調でもってそう言いながら、返り血を切り払った左右一振りずつの手斧を、駱駝色のトレンチコートの懐へと仕舞い直した。彼女の足元にはその身を包む強化外骨格パワードスーツごと切断されたサルダールの右腕と左腕、ね飛ばされた素っ首、それに残りの胴体と両脚が転がったままぴくりとも動かない。

「さて、と」

 やがて気を取り直した始末屋が真っ赤なネクタイを締め直しながらそう言って、足元に転がるサルダールのばらばら死体から、執務室の中央やや壁よりに設置された執務机の陰へと視線を移動させた。

「ひっ!」

 するとその執務机の陰に身を隠していた肥満体の黒人男性、つまりファハリ大統領がそう言って身を竦ませ、恐怖と戦慄の声を上げながら恐れ戦く。

「さあ、ファハリ大統領よ、貴様もまたそこに転がっているサルダール同様、年貢の納め時だ。勧告に従って大人しく投降し、反政府軍の手に落ちよ。生け捕りを依頼されたからには殺しはしないが、もし仮に抵抗するならば、腕の一本や二本は失う事にもなりかねんぞ?」

 始末屋がそう言って恫喝交じりに投降を勧告しながら、執務机の陰でがたがたと震えるばかりのファハリ大統領の元へと歩み寄ろうとした、まさにその時だった。不意に彼女の耳に、絹を裂くかのような女性の悲鳴が届いたかと思えば、浅い眠りに就いていた筈の始末屋ははっと眼を覚ます。

「何だ?」

 はっと眼を覚ました始末屋はそう言って、素早くアイマスクを放り捨てて毛布を跳ね除けると、ビジネスクラスのフルフラットシートから高度10000mの大空を飛行する旅客機の床へと降り立った。するとビジネスクラスの後方の、エコノミークラスの区画に居た筈の乗客達が悲鳴を上げながら彼女の脇を走り抜け、まるで恐ろしい何かから距離を取るかのような格好でもって狭い機内を逃げ惑っているのが眼に留まる。

「きゃあああぁぁぁっ!」

 そして再びの悲鳴が始末屋の耳に届くのとほぼ同時に、エコノミークラスの区画からビジネスクラスの区画へと、一人の天を突くかのような巨漢が若い女性の客室乗務員キャビンアテンダントの頭部を鷲掴みにしながら姿を現した。

「し、ししし、しま、始末屋って奴は、お、おお、お、お前か? お前なのか? お前の事なのか?」

 その天を突くかのような巨漢、つまり首から上が土佐犬のそれである半人半獣の大男はそう言って客室乗務員キャビンアテンダントを問い詰めるものの、問い詰められた客室乗務員キャビンアテンダントは繰り返し悲鳴を上げ続けるばかりで一向に埒が明かない。

「おい、そこの首から上が犬畜生の貴様、貴様が探している始末屋とは、このあたしの事だ」

 そこで始末屋がそう言って歩み寄りながら名乗り出れば、首から上が土佐犬の半人半獣の巨漢は、おもむろにこちらへと眼を向ける。

「お、おま、お前が始末屋なのか? そうなのか?」

「だからたった今しがた、あたし自ら名乗り出てやったばかりだと言うのに、聞こえていなかったのか? さては貴様、外見だけでなく、脳味噌の容量と処理速度もまた犬畜生と同程度と見受けられる。いみじくも大男は総身に知恵が回りかねるとは、良く言ったものだ」

 彼女自身もまた身の丈が210cmにも達する大女であるにも拘らず、そんな自分の事は棚に上げた始末屋は、蟀谷こめかみに当てた右手の人差し指をくるくると回しながらそう言った。しかしながら彼女の眼前にそびえ立つ、首から上が土佐犬の巨漢は本当に知能が低いらしく、始末屋が口にした単語の幾つかが理解出来ずに小首を傾げるばかりである。

「しょ、しょりそくど? そうみ? お、お前は一体、さっきから何を言ってるんだ?」

「つまり、貴様は馬鹿だと言う事だ」

「な、何だと? お、おおお、おで、おで様が馬鹿だと言ったのか?」

 ようやく自分が馬鹿にされている事を理解した巨漢はそう言って、土佐犬の顔を真っ赤に紅潮させながら怒り狂ったかと思えば、勢い余って鷲掴みにしていた若い女性の客室乗務員キャビンアテンダントの頭部を握り潰してしまった。

「あ」

 巨漢はそう言ってほんのちょっとだけ狼狽うろたえはするものの、幾ら狼狽うろたえたところで彼がうっかり握り潰してしまった若い女性の客室乗務員キャビンアテンダントの頭部は元には戻らず、覆水盆に返らずとはまさにこの事であると言わざるを得ない。

「ま、まあいい! とにかく、お前が始末屋なんだな? そうなんだな?」

 そう言って気を取り直した巨漢が、頭部が腐ったトマトの様に潰れてしまった客室乗務員キャビンアテンダントの死体を放り捨てながら問い掛ければ、問い掛けられた始末屋は逆に問い返す。

「そう言う貴様こそ、誰だ?」

「お、おおお、おで様の名は闘犬番長! ひゃ、百人力の執行人エグゼキューターであり、音に聞こえた『バンカラ獣人』とは、おで様の事だ!」

「闘犬番長だと?」

 言われてみれば確かに、眼の前の首から上が土佐犬の巨漢の首には注連縄しめなわ前垂まえだれがによる装飾が施された闘犬用の化粧廻しが巻かれているし、首から下の身体は昔の大学の応援団が着るような丈が異様に長い学生服、いわゆる『長ラン』を着ていた。つまりそれは、その名の通り、まさに闘犬と番長を組み合わせた執行人エグゼキューターそのものである。

「それで、その闘犬番長とやらが、一体このあたしに何の用だ?」

「き、ききき決まってる! おで様のこの手で『禁忌破り』であるお前を殺して、故郷に錦を飾るのだ!」

「ほう? しかし威勢がいい割に、貴様が殺すべきあたしの顔は満足に覚えてはいなかったようだな」

 始末屋はそう言いながら、旅客機の床に転がる若い女性の客室乗務員キャビンアテンダントの、首から上が握り潰された死体にちらりと眼を向けた。どうやら闘犬番長は始末屋が女性であると言う事実以外の容姿や特徴を良く知らぬまま旅客機に乗り込んだらしく、機内後方から眼に留まった女性と言う女性を、片っ端から殺して回っていたものと思われる。

「う、うるさい、黙れ! 黙れ! 黙れ! ととととにかく始末屋、おで様がお前を殺してやるから、覚悟しろ!」

 首に巻かれた化粧廻しの前垂まえだれをぶるぶると揺らしながら、そう言って宣戦を布告した闘犬番長が、徒手空拳のまま始末屋に襲い掛かった。そして彼ら二人は互いの手と手を組み合っての腕力による押し合い、つまりプロレスで言うところの手四つの力比べでもって、まずは相手の力量を計り合う。

「くっ……」

 巨漢と大女による正面切っての力比べは、どうやらより一層身体が大きい闘犬番長に軍配が上がったらしく、次第次第に押し負けつつある始末屋がとうとうそう言って旅客機の床に膝を突いてしまった。常人離れした膂力を誇る筈の彼女が押し負けるとは、闘犬番長の膂力はその体躯の大きさに比例した、まさに野生の獣の生命力を髣髴ほうふつとさせる凄まじさであると言わざるを得ない。

「ど、どどどどうした始末屋! おで様の力の前に、為す術も無いか!」

 始末屋を半ば組み伏せてみせた闘犬番長がそう言って早くも勝ち誇り、やはり闘犬として知られる土佐犬らしく、口元から真っ白いあぶく混じりのよだれをだらだらと垂らしながら彼女を嘲笑った。

「糞っ!」

 すると冷静沈着を旨とする彼女にしては珍しく口汚い悪態を吐きながら、手四つの体勢で組み合っていた手を振りほどいた始末屋は、素早く後方へと飛び退すさって闘犬番長から距離を取る。

「成程、さすがは『バンカラ獣人』を自ら標榜するだけあって、その名に恥じぬ見事な力量だ。だがしかし、得物の一つも持たぬ徒手空拳のままの貴様が、このあたしの手斧の威力に耐えられるかな?」

 若干感心しながらそう言った始末屋は、その身を包む駱駝色のトレンチコートの懐に両手を差し入れた。そしてその両手が懐から引き抜かれれば、そこには左右一振りずつの手斧が握られており、丹念に研ぎ上げられた鋭利な切っ先が旅客機の客室の間接照明の灯りを反射してぎらりと輝く。

「さ、ささささっきから黙って聞いてやってれば、お前は『禁忌破り』のくせに偉そうな口ばかり叩きやがって、洒落臭しゃらくさいぞ、始末屋め! だらだらと能書き垂れてないで、さっさと掛かって来い!」

「ああ、貴様に言われずとも、掛かって行くさ」

 まさに有言実行、そう言って啖呵を切った始末屋は旅客機の客室の床を蹴って跳躍すると、その手に握る左右一振りずつの手斧でもって、闘犬番長に切り掛かる事を躊躇ためらわない。

「ふん!」

 跳躍した始末屋は鼻息荒くそう言うと、さながら彼女自身を鼓舞するかのような掛け声と共に大上段の構えから手斧を振り下ろし、その切っ先でもって闘犬番長の脳天を真っ二つに叩き割らんと試みた。しかしながら闘犬番長は、その毛深く野太い二本の腕を頭上で交差させながら頭部をガードする事によって、振り下ろされた始末屋の手斧の切っ先をいとも容易たやすく弾き返す。

「ちっ!」

 手斧による必殺の一撃を弾き返されてしまった始末屋が、舌打ち交じりに後方へと飛び退すさって眼の前の獲物から再び距離を取れば、そんな彼女を闘犬番長は嘲笑って止まない。

「ど、どどどどうだ始末屋め、恐れ入ったか! お、おおお、おで、おで様の堅牢堅固な肉体の前では、そんな鈍刀なまくらがたな、いや、鈍斧なまくらおのなんぞ、隆車りゅうしゃの車輪に立ち向かう蟷螂とうろうの斧も同然よ!」

 一体全体どこでどうやって覚えて来たと言うのか、ついさっきまで『処理速度』や『総身』と言った単語の意味が理解出来なかった筈の闘犬番長は、その身にそぐわぬ『堅牢堅固』だの『隆車りゅうしゃの車輪に立ち向かう蟷螂とうろうの斧』だのと言った四字熟語や故事成語を交えながら勝ち誇った。

「闘犬番長よ、貴様、見掛けによらず随分と口が達者なようだが、勝ち誇ってみせるのはあたしを倒してからにするんだな」

 そう言った始末屋は再び旅客機の客室の床を蹴って跳躍し、今度は必殺の得物である筈の左右一振りずつの手斧を交互に振るいながら、眼にも留まらぬ連続攻撃を眼前にそびえ立つ闘犬番長に浴びせ掛ける。

「無駄だ、無駄だ、無駄だ! そ、そそそ、そんな蚊に刺されたほどの痛みも感じないような生温い攻撃なんぞが、このおで様に通用するものか!」

 しかしながらそう言って繰り返し勝ち誇ってみせる闘犬番長の言葉通り、始末屋が振るう手斧の切っ先は彼の身を包む長ランこそ切り刻みはするものの、肝心要の闘犬番長の生身の肉体そのものにはかすり傷、つまり浅い擦過傷程度のダメージしか与える事が出来ない。

「さあ、今度はおで様の番だぞ!」

 するとそう言った闘犬番長がぎゅっと固く握り締めた拳を引いて腋を締め、腰をぐっと落として攻撃の予備動作へと移行したかと思えば、その巨体に見合わぬ速度による正拳突きを始末屋の腹部に叩き込む。

「ぐはぁっ!」

 硬度、速度、それに重量の三要素、つまり破壊力を生み出す主たる要因の全てを兼ね備えた正拳突きをまともに喰らってしまった始末屋はそう言って、血反吐を吐くと同時に苦悶の声を上げた。そしてビジネスクラスの座席を薙ぎ倒しながら客室の端まで吹っ飛んだ彼女の身体は、旅客機の機体を支える柱に埋め込まれた大型液晶モニターに激突し、その配線の高圧電流でもって焼き焦がされ、ぶすぶすと煙をくすぶらせながら床へと崩れ落ちる。

「ど、どどど、ど、どうだ始末屋! おで様の必殺技、泣く子も黙る『闘犬パンチ』の威力は! この必殺パンチをまともに喰らって立ち上がった奴は、今の今まで、一人も存在しないんだからな!」

 勝利を確信したらしい闘犬番長は声高らかにそう言って、やはり闘犬として知られる土佐犬らしく、口元から真っ白いあぶく混じりのよだれをだらだらと垂らしながら始末屋を嘲笑った。しかしながら勝利を確信した筈の彼の意に反し、一旦は客室の床へと崩れ落ちた始末屋は半身を起こして膝を突き、そのままおもむろに立ち上がってみせる。

「成程、確かに必殺技を標榜するだけの事はある、凄まじい威力の正拳突きだ。その事実は、甘んじて受け入れよう。だがしかし、この程度の突き技を喰らった程度で立ち上がった者が一人も存在しないとは、さては貴様、さほど強い相手と戦った事が無い三下さんした執行人エグゼキューターだな?」

「な、何だと? おおおおで様が、よりにもよって、三下さんした執行人エグゼキューターだと?」

「ああ、そうだ、その通りだ。その証拠に、今こうしている間にも追撃を仕掛けようともしない詰めの甘さが、貴様の執行人エグゼキューターとしての経験と危機感の不足を如実に物語っているのだからな」

 始末屋が呼吸を整えながらそう言えば、勢い闘犬番長は怒りを露にせざるを得ない。

「う、ううううるさい、黙れ! 黙れ! 黙れ! そんな大口を叩いてみせるなら、今すぐおで様が、お前にとどめを刺してくれる!」

 怒り心頭の闘犬番長は激しく地団駄を踏みながらそう言うと、再びぐっと腰を落として身構えてから始末屋目掛けて突進し、今度は相撲で言うところのぶちかましによる攻撃を試みた。しかしながら始末屋は、闘犬番長の頭上をひらりと飛び越えてこれを回避したかと思えば、彼の背後に回り込むと同時に闘犬番長の首に巻かれた化粧廻しの注連縄しめなわを素早く掴み取る。

「な、ななな何をするつもりだ!」

 そう言って激しく困惑、もしくは狼狽する事しきりの闘犬番長の言葉には一切耳を貸さぬまま、始末屋は掴み取った化粧廻しの注連縄しめなわでもって、彼の野太い首を背後から締め上げ始めた。

「如何に堅牢堅固な肉体を誇る貴様でも、気道と頸動脈を圧迫されて新鮮な酸素と血液の供給を断たれれば、無事では済むまい」

 そう言った始末屋は、常人離れした膂力を存分に発揮しながら、闘犬番長の首をぎりぎりと締め上げ続ける手を止めない。

「が……あ……あ……」

 始末屋が彼の首を化粧廻しの注連縄しめなわでもって締め上げ続ければ、そう言って喉元を掻きむしりながら藻掻き苦しむばかりの闘犬番長の顔からは見る見る内に血の気が失せ始め、次第次第に脳髄へと酸素が供給されずに窒息しつつあるのが如実に見て取れる。

「あ……」

 そして遂に、最後に短くそう言った闘犬番長は白眼を剥いて意識を失い、その場に崩れ落ちるような格好でもって昏倒したまま客室の床に突っ伏した。土佐犬のそれである彼の首から上の、だらしなく開け放たれた口元からはおびただしい量のよだれあぶくがごぼごぼと溢れ出し、床に敷かれたフェルト地のカーペットをしとどに濡らす。

「ふう」

 やがて闘犬番長を仕留め終えた始末屋はそう言って一息吐くと、額に浮かぶ玉の様な汗の粒を、駱駝色のトレンチコートの袖で拭い取った。するとちょうどその時、流麗な若い女性の声による機内アナウンスが彼女の耳に届く。

「この飛行機は、およそ5分後にコート・ダジュール国際空港に着陸いたします。只今の時刻は午前11時ちょうど、天気は快晴、気温は27℃でございます。着陸に備えまして、皆様のお手荷物は離陸の時と同じように上の棚など、しっかり固定される場所にお入れください」

「やっと到着か」

 機内アナウンスを耳にした始末屋はまるで独り言つかのようにそう言って、左右一振りずつの手斧を駱駝色のトレンチコートの懐に仕舞い直すと、ビジネスクラスの自分の座席へと座り直した。するとそんな彼女の座席の傍らに、闘犬番長の手によって無残にも頭部を握り潰されてしまった、若い女性の客室乗務員キャビンアテンダントの首無し死体が転がっているのが眼に留まる。

「成仏しろよ、若いの」

 やはり取り立てて何の感慨も無いままに、ぶっきらぼうな表情と口調でもってそう言った始末屋は、シートベルトを固く締め直して着陸の態勢へと移行した。そしておよそ数分後、彼女とその他大勢の乗客達を乗せた旅客機は、コート・ダジュール国際空港の第1滑走路へと緩やかに滑り込む。

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