第三十三話 リンvs四獣ドラ
それぞれバラバラになったレン、ナナ、リンは四獣との危険な勝負をしていた。
龍の姿をした四獣──ドラと戦闘しているのはリン。得意の『
しかし、相手も口から火を吐き、リンを自分の間合いへと入らせない。
ドラは四獣の中で一番弱いモンスターだ。
最大の強みは遠距離攻撃だけで、皮膚も頑丈ではない。そのため、接近されてしまえば、簡単に仕留めることができる。
だが、接近するまでが困難で、熟練のプレイヤーでもドラには一度も触れた事がないという伝説まで残っているほど。
別名、『無敗の龍』とまで言われており、『DEO』史上、鉄壁のモンスターとも言われている。
「マジで近づけない」
ピンチに陥っているというのに、リンは今の状況でも笑っている。
レンの影響なのか、強敵と戦う事を好んでいる彼女は、こう言った状況ほど、燃えるのだ。その飽くなき向上心が、世界ランク十位という地位まで彼女を至らせたと言ってもいい。
リンが愛刀──『
ユニークスキルを使用しても意味なく終わる事を過去のデータから予測したリンは、レンと同じように、スピードだけで接近していく。
ドラも火を吐き、攻撃をしてくる。それを愛刀で弾きながら、相手の間合いへと、ドンドン近づいていく。
本能が
「させっか!」
今度はユニークスキル──『
四獣もこの行動は想定外だったのか、一瞬だけ隙を見せてしまう。そして、
「お前の伝説、ここで終わりだ!」
愛刀に全ての想いを乗せて思いっきり突きつける。しかし、翼を一度羽ばたかせるだけで、建物を揺るがすくらいの強風が吹き、リンは吹き飛ばされた。
落下を防ぐために、ユニークスキルで別の場所へと移動し、なんとか着地に成功。ゲーム内に生存してみせる。
「っく、伝説は本物だな」
目の前の鉄壁モンスターを見て、リンは悔しそうに呟く。
「そう簡単にやられたら、最強の四獣の名が泣くでしょ?」
苦戦している三人を楽しそうに見下している女──矢澤薫がプログラムを使用して、三人の脳内に直接話しかける。
「でも、これならどう!」
もう一度、『
このスキルのメリットは、一瞬で間合いをゼロ距離まで詰められるという点だ。そのため、奇襲が可能となり、相手の状況判断を鈍らせる事ができる。
先程と違い、敵の背後に周って愛刀──『
「今のでもダメなの?」
完全に虚を突いた攻撃だったはずだ。それでも、このモンスターに攻撃を当てられない。だが……
「今のはおかしいっしょ」
そう結論を出し、『
あの動きは背中に目があるか、特定の動作に反応するようになっていない限り、なし得ない。
なら、やることは決まった。
まずは、あのモンスターの『鉄壁』の秘密を解き明かす。そう思い、リンは行動に移る。
この手のモンスターは、大体自分自身の何かに反応するようになっているた
め、どういった条件で発動するのかを確かめようとする。
動きか間合いか、それとも熱か。ありとあらゆる可能性を考えながら、ユニークスキルを使用した。
一瞬でモンスターの前まで顕現し、愛刀を
「
今の動きでは詳しい事はわからない。
接近していたため、熱の可能性もあるし、間合いに入って動いていたため、その二つの可能性もある。
もっと詳細なデータが欲しいリンは、次は間合いにのみ入って見る事にする。この方法で反応しなければ動きの可能性で決まるし、反応すれば、動きの可能性はなくなるため、一歩前進することができる。
『
「キィィィ!」
今ので可能性が一つ削れた。なら、次は二つの内一つに削っていくが、
(三つのどれかに該当してなかったら、終わりだけど……)
リンは最初に熱、間合い、動きの三つに絞ったが、そのどれにも該当していない可能性もある。
そうなれば、また一から可能性を探らなければならないのだが、自分を信じて行動に移っていく。
道具の中から投げナイフを取り出してモンスターへと投げていく。これならば熱は伴わないため、反応しなければ『熱』という答えを導き出せる。前提通りならだが……
投げたナイフがドラに突き刺さる位置まで接近していくが……モンスターは空間すらも振動させる
その姿を見たリンは、警戒しながら一歩後退する。すると、直後に、圧倒的な速度で空から接近してきた。
ドラのいきなりの攻撃を見て、ユニークスキルで回避しようとしたが、足がもつれてバランスを崩してしまう。
このままでは攻撃が当たってしまう……と思われたが、何故かドラは攻撃の軌道を逸らし、先ほどまでリンの足があった地面へとぶつかった。
「まさか……」
今の動きからリンは何かを感じ取り、投げナイフを別の場所へと
「やっぱり、コイツ目が見えてない。だから、空気の振動で全部察知する特性があるんだ」
ドラの特性に結論を出す。
回避の原理もそういう仕組みで動いている。だから、背後から襲ったとしても、攻撃が当たらないというわけだ。それに、回避の方法がリンの位置から移動したという点も、今の答えであれば納得できる。
リンは愛刀──『
空中を駆使した攻撃、銃での連射。両者譲らない攻防をしている戦場がある。
レンとヘス。最強と最凶の死闘だ。
「っく、一向に降りてこねぇな」
得意の空中戦を選んでいるヘスに怒りを覚えるが、愚痴っていても事態は解決しないため、仕方なくこの状態からでも勝利を掴める方法を画策していく。
相手に有利にさせないために十分な間合いを取りながら戦闘をしていく。だが、相手も最強の称号を持っているだけあり、上手く作戦が機能しない。
「くそ!」
レンが危険を察知したため、急いで『
ユニークスキルを使用したタイミングの直ぐ後、ヘスの最高速の突進が
本来であればダメージになり得る攻撃だったが、『
(
何故だかわからないが、そういう仕様になってしまっているみたいで、思い切った攻撃ができない。
一旦後退する。
「多分、専用アイテムが必要なんだが……今、それを持ってねぇ」
ゲーム性を考慮し、そう言った答えに辿り着く。
本来のシステムであれば、レンの言葉通りになっているのだろう。そしてそれは、四獣の一体──フェルの時もそうだったが、次の瞬間、レンの脳にある考えがよぎる。
(待てよ。専用アイテムがなくても、『
レンだけが使用でき、唯一、システムという壁を突破できる邪道なスキルだ。
本当はこんな卑怯な勝ち方だけはしたくないのだが、相手も勝てないように設定しているため、対抗するためにはこの方法に縋るしかなかった。
確信はないが、一応その方針で作戦を練ってみる事にし、レンは次の攻撃へと移っていく。
ユニークスキルで銃に切り替え、照準を定めて発砲していく。
ヘスも本能的に危機を察知したのか、
空中の支配者にはレンのへなちょこ発砲は一発も当たらず、間合いに入られてしまうが……
「これを狙ってたんだよ!」
賭けに出たレンは、ユニークスキルで剣へと切り替えて、思い切り振るった。そして、両者の攻撃は交差した。
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