第十八話 進むべき道

「俺と社長の息子が瓜二つだと……」


 告げられた衝撃的な事実。その事にレンは驚きを隠せなかった。


「そうだよ。お兄ちゃんとレン君は瓜二つ。もちろん、アバターの外見じゃなくて、現実でのね」


「それが俺の勝利が確定してる理由か……」


 今まで感じていた違和感が拭われた事はよかった。だが、この件は予想以上に根が深かった。しかも、たった一人の人間の私利私欲にまみれたゲームだという事。それだけの事に、全てのシャドープレイヤーを巻き込んだのだ。


「でも、俺の勝利が確定しているのと、敗北したら昏睡状態になるのにはどんな因果があるんだ」


 今述べた出来事に接点はない。前者だけを実現させ、他のプレイヤーは蚊帳の外に追いやればいいだけの話だ。しかし、


「それはママにも想定してなかった事だと思う」


 深刻な表情でレンの質問に答える。


 今の答えから予想するに、敗北後に昏睡状態に陥るのは偶然の現象である可能性が高い。だが、そんな事を許容してしまうぐらい、白という女性にとって、息子の存在は大きいと言える。


「犠牲になったプレイヤーは死んではないんだよな」


「うん、そこは大丈夫。助かるよ。でも……」


「どうしたんだよ」


「今の状態で助けるのは難しいかも」


「どうして?」


「ママにも想定してない事が起こっちゃたから」


「社長の想定外?」


 社長であれば、その会社の製品は把握しているはずだ。なら、『DEO』というゲームは彼女のお膝元で、全ての出来事は想定できる範囲内に入れることができるはず。それなのに、想定外の出来事が起きたということは、何者かがこのゲームを掻き回している事を意味していた。


「君が負けちゃった事だよ」


「やっぱ、事故だったのか」


 レンが内心思っていた事は当たっていた。


 クイーンからの説明と起こった事象に齟齬そごがあったため、疑いをかけていたのだ。


「でも、なんで俺は昏睡状態にならなかったんだ?」


「それは『コンティニュー』が関係してると思う。『アナザーアカウント』は『コンティニュー』を元に作られた特別なスキルだから」


「なるほどな……今の話で『コンティニュー』の原理が腑に落ちたよ」


 アカウントが消失するのに復活できる理由。それは、『アナザーアカウント』を利用していたからだった。そして、それは現実世界にも影響を与えられた。それほど、『コンティニュー』というのは特別なスキルだったのだ。


「なら、『コンティニュー』があれば、皆を救えるのか」


「そうだね。皆の『アナザーアカウント』を作って、それをコアに注ぐ。そうすれば、昏睡状態を元に戻せる」


「希望が見えたのはいいけど……どう言う原理だよ」


 ゲームの中でのスキルで現実世界の意識を覚醒させられる。原理にすれば、謎なのだが、今はその事実がわかっていれば問題ない。


 助けられる方法がわかったのなら、早速行動に移す。まずは、『コンティニュー』を取り戻す。それが、第一のミッションだ。そのためにも、社長の場所まで行く必要がある。そんな事が出来る方法はこのゲームには一つで……


「クエスト攻略だね」


「そうだな」


 ナナの発言にリンが肯定する。


「お前ら、聞いてたのか?」


「まぁね」


「でも、みずくさいじゃないか。私たち仲間だろ。なのに、相談してくれないなんて」


「巻き込みたくなかったんだよ」


 暗い表情でレンが言う。


 正直、この件に関わるのは危険だ。敗北すれば、植物状態の未来しか待っていない。たとえ、それが運営の望んだ行為じゃなかったとしても、因果関係として起きてしまう。それでも……


「私は戦います!最初からこの道が私のゴールですし」


「ナナ……」


「って事だとよ。私もお供するよ」


「私も行くよ、お兄ちゃん!」


「お前ら……」


 先程の話を聞いて最悪の結果はわかっているのに、三人が生き生きとした表情でレンを見る。それを見て、レンは口元が綻びた。


 嬉しかったからだ。勝手に巻き込んだだけなのに、協力してくれる。しかも、嫌な顔一つせずに。それにレンは


「全部終わらせたら、楽しくゲームしようぜ」


「うん」「あぁ!」「そうだね」


 レンの言葉に三人が肯定し、四人の戦いは始まった。


 

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