第二章・vsシステム編
第十五話 新たなスキル
アナウンス通りにレンはログインした。最初は本当に復活できるか心配だったが、無事に帰還する事ができてホッとしている。
『お帰りなさい木山蓮。新規アカウントが作成されましたので、キャラメイキングから始めたいと思います』
「やっぱそうなるかー、ってことは、『ユニークスキル』も変わるって事だよな」
もう、『コンティニュー』は使えない。だが、まだ使ったことのないスキルを使えると思うと、レンはワクワクしてきた。あとは、弱いスキルに当たらない事に祈るしかないのだが、『最弱の王』とまで呼ばれているため、弱いスキルで戦う事を貫きたいと思うのも本音だ。
アナウンスされた通りにキャラメイキングを進めていく。
黒髪のミディアムに高身長、目などの顔のパーツは現実に寄せていき、自分らしさを演出していく。
前と違うカッコつけた外見にしてもよかったのだが、ナナやリンなど、他のメンバーにわかってもらえるように前と同じ外見にする事を選んだのだ。
キャラメイキングが終わり、ゲーム内に転移される。
『いってらっしゃいませ』
その様なアナウンスがされ、レンは「言ってくる」と答え、ファンタジー世界へと飛ばされたのだが……
『お願いしますね……木山蓮』
アナウンスをしてくれた女性が悲痛な声で言葉を発した。当然ながら、その声はレンには聞こえていなかったが。
元の世界に戻ってきたレンは早速ナナとリンとの合流する選択を選んだのだが、理由は単純だ。
『ユニークスキル』を無効にするプレイヤー。あの男は危険だ。
戦ってみた体感として、世界ランカーに入れるだけの実力はあった。でも、レンはあの男を世界ランクで見たことがない。
おそらくだが、あの男はわざとランキング外にいるかもしれない。リンやナナも実力はある方だが、あの男には勝てないだろう。だから……
「早く合流して教えてやらねぇと……アイツに全滅させられる」
嫌な胸騒ぎがしてレンは急いでいた。そんな時……
「痛ったー」
誰かとぶつかってしまい、レンは尻餅をついた。
相手には悪いが、急いでいるレンは立ち上がり、「ごめんな」と一言謝り、その場から移動しようとする。しかし……
「待って!」
ぶつかった相手が突然手を握ってきて、レンは動きを強制的に止められる。
「急いでんだよ!」
手を握ってきた人物の方を振り向く。そこにいたのは、灰色のショートボブをした女性プレイヤーだった。
顔付きや体のラインから幼い印象を受けさせるが、身長はレンより少し低いくらいだ。そのアンバランスな容姿にレンは目を奪われた。
「ぶつかっといて何もないのー」
「何もって……謝っただろ」
「私は不満なの。だから付き合ってよ」
「そんな時間ないんだよ!」」
「いいから!」
意外にも強気な少女にレンは気圧されるが、レンも勇気を振り絞って強く当たった。
「ぐすっ……」
レンの当たりの強さに少女は目に涙を浮かべる。今にも泣き出しそうな雰囲気にレンはやられた。しかも、街中だったので、周りの人の目も痛い。
「わかった!付き合ってやるから。何すればいいんだ?」
「クエスト!一緒に行こう。お兄ちゃん」
「お兄ちゃん?」
「覚えてないの?昔一緒に遊んでくれたじゃん」
「俺はしらねぇよ」
「私が五歳の時だよ。でも……お兄ちゃんが覚えてないのも無理ないよね」
レンには理解できない事を言いながら、少女が腕組みしてくるが、身長差がほぼないため、周りからはカップルのように見られてしまう。これがバーチャルの厄介なところだ。
結局、謎の少女のお兄ちゃんになってしまい、二人はクエストへと出発することとなった。
彼女がクリアしたいクエストは、『花園の女神』だ。あの時、『スコーピオン』に邪魔され、挑むことすらできていなかったクエスト。
そのクエストは山奥で行われる。
クエスト内容は不明。要は行ってみてからのお楽しみというやつらしい。
「お兄ちゃん、疲れたよー。おんぶして」
「嫌だ。自分で歩け」
「そんな事言わないでよー。ユキの願い事はなんでも叶えてくれるって約束したじゃん」
「してないよ」
「現実でのことだよ」
「はぁ?」
謎の少女──ユキが理解不明なことを言ってくる。しかし、ユキは間違っていないと、自分の意見を変えようとはしない。
それ以前に、現実でもこんな女の子は知らないし、小さい頃に可愛がってあげた子というのも記憶にはない。
「さっきの反応もそうだけど……もしかして、覚えてない?」
「覚えてねぇよ。昔って言ってたけど、いつの事だ?」
「私が五歳、お兄ちゃんが十歳の時。まだ、お兄ちゃんは現実で生き生きしてたよね」
「あぁ、世の中の事を知らない無垢な頃な。あの後、中学に上がって現実を知って、絶望したよ。いじめられもしたし……」
「誰にいじめられたの?私が殺してあげるよ」
「いいよ。もう気にしてないし。それに、サラッと怖いこと言うな」
「ごめーん」
山登りをしながら、色々と会話をしていくが、やはりレンはこの少女についての記憶がない。
自分の記憶に自信はあるが、レンは十二歳以前の現実での記憶は封印したため、その中にあるのかもしれない。だが、こんな我の強い子なら覚えていても不思議ではない。
どれだけ考えてもレンは、この少女の記憶を思い出すことはできなかった。そのまま、二人は頂上に到達する。
聖杯を封印する祭壇が見えたのだが、肝心の聖杯がない。
「もしかして、このクエストは聖杯を見つけて、封印しろと言うやつなんじゃ」
「そうっぽいね」
地図を確認しても、目的地はあっているため、クエストの内容は間違っていないはずだ。だが、肝心の聖杯がどこにあるのかがわからないので、二人は路頭に暮れる。
「ルルルァァ」
次の手を考えている間に何かの鳴き声が聞こえた。
その声にレンは警戒し、辺りを見渡しながらユキを後ろに庇った。
(ユニークスキル、教えてもらえなかったけど……一体どんなんなんだ)
いつもなら教えてもらえるのだが、今回はそれがなかった。おそらく、それは復活という異例の事へのデメリットなのだろう。
だから、戦いながら探るしかないのだが……出てきた敵が予想外の獣だった。
熊の様な外見をしているが、口には何かを加えている。形が見た事のある物だったので、二人は嫌な表情を浮かべた。
「コイツから奪い取れってか……聖杯。本当に星一のクエストかよ。コイツは……」
出てきた敵を見て、レンは半笑い。なぜなら……
「四獣の一匹、フェル!」
魔王最強の契約獣、その一匹から聖杯を取らなければならない。しかも、前のように敗北してからの奇襲は使えない。
「最初から全力で行くしかない!」
レンが持っている初期装備で突撃していく。
狙うは
一撃でも当たれば致命傷は免れず、下手をすればそのまま核ごと持っていかれる可能性もある。
かといって、剣で受け止めれるかといえば否だ。選択肢は一つに絞られ、レンはやむを得ず回避を余儀なくされたが、並のプレイヤーであれば今の攻撃は回避できなかった。
ユニークスキルがわからないため、下手なことはできない。レンの行動はいつもより慎重になっていき、思い切った行動ができない。
次は守られたユキも行動に移る。
指を鳴らし、フェルの足元を指さした。そうした途端に戦況が一気に変化する。フェルの足元から氷が生成され、動きを止めていく。
「今だよ!お兄ちゃん!」
「サンキュー」
動きが止まっていれば、レンにとって敵を仕留めることは容易だ。
フェルのギリギリでの状況判断で、レンも攻撃には対応できない。あとは、お互いの速さで勝負がついていく事になる。
レンは全てをこの攻撃にだけ集中させていく。
急に剣が光り、形状がハンドガンの様なものに変化した。それに気づいたレンは、一瞬で状況を理解していく。
(なるほどな……でも、使い手次第だな。この力は)
レンは変化した武器のトリガーを引き、銃弾を発射させていく。これなら、相手より先に攻撃が当たる。そして……四獣の
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