第九話 仕組まれたゲーム

 世界ランク五位に勝利したレンとクイーンは、離れ離れになっていたナナと合流した。


「そんなことが……」


 『DEO』の真実を聞いたナナは唖然とする。


「まぁ、にわかには信じられないよね。でも、事実なの」


「そうは言ってもよ。ネットの世界と現実世界を隔離するなんて出来るもんなのか?」


 スコーピオンが言っていた言葉をレンはまだ信じられていない。


 まず、ネットと言うのは、ネットワーク環境と接続する機器があれば、どこからでもログインはできる。


 それどころか、ネットが当たり前に普及した昨今じゃ、ネットワークの電波が届いていない場所の方が少ないくらいだ。だからこその疑問なのだが……


「可能よ」


 クイーンが簡潔にレンの質問に答える。


「君たちはインターネットがどうやって繋がってるかは知ってる?」


「考えたこともないなー」


「じゃあ、私が簡潔に説明してあげるよ。まず、インターネットを使うためにプロバイダーが必要となるの。これがインターネットを構築している基盤になるから、これが無いと端末や回線があっても接続はできないよ。で、次になんだけど……このプロパイダーから日本各地にある局舎に電波を中継役として配分して、あとは基地局や電柱に電波を届けてあげれば、スマホやパソコンからネットに接続できるってわけ」


「じゃあ、そのプロバイダーを占領しちまえば、ネットに接続できないようにできるってことか?」


「まぁ、そういうことだね。シャドーはそのプロバイダーの役割を核っていうもので管理してる。そして、ネット世界は核で構築できるように売り出したってこと。自分たちの都合のいいようにするためにね」


 クイーンの説明でなんとなく仕組みの方は理解できたが、本当にそんなことが可能なのかとレンは思う。そんな時……


「なんかやばいことになってんじゃん!」


 レンは急に肩に重さを感じ、ビックリするが、驚きはそれだけではなかった。後ろを振り向くとそこには、サラシ姿の女ーーリンがいたのだ。


「お前、負けたはずじゃ……」


「いやー、ギリギリ逸れてたらしくてさー、儲け、儲け」


 リンが軽快な口調でレンの言葉に返答していく。


「良かったですー」


 リンが生きていて、心の底からナナは喜んだ。


「じゃあ、今の話は聞いてたのね」


「うん、大体は……そんなことになってたとはね」


 クイーンの言葉にリンはめんどくさそうに答えていく。その姿を見て、レンは呆れたが、いつものリンらしくて、それはそれでホッとしてもいた。


「で、これからどうするんだ?」


 レンはクイーンに聞く。


 先程はプレイヤーキルを見過ごせなかったために協力をしたが、正直な事をいえば、クイーン以外にはこの事件に介入する必要性はない。だが、


「三人とも協力してもらうよ。君たちに拒否権はないから」


 クイーンの口調が変わり、脅迫まがいの協力要請をしてきた。


「はっ!ふざけんなよ。俺たちには関係……」


「いや、三人とも関係ある。それに……『最弱の王』、君だけはこの事件を絶対に断れない」


 レンを見て、冷酷に言い放つ。


「刺客の『スコーピオン』を倒したんだ。君は狙われる。私もだけどね」


 その言葉を聞いて、一瞬、レンは背中に嫌な汗が伝った。しかし、虚勢を張り、


「何が言いたい!」


 と、反論する。


「簡単だよ。彼らは『天上世界』へと昇格できるも者を自分たちの手駒にしたい。だから、世界ランクを持っている者に『DEO』を無償で配ったんだ。だから、私たちは狙われる」


 その言葉でこの場にいるレン、リン、ナナは戦慄した。


 要は、世界ランク保持者は『天上世界』へ旅立てる最有力候補なのだ。だから、意地でもシャドーは逃したくないらしい。でも……


「だとしても、ナナは関係ないだろ」


 強い口調でクイーンに言い放つが、返ってきた答えは残酷なものだった。首を横に振り、レンの意見を否定する。


「彼女の目的はシャドーを倒すことでしか叶えられない。だって、彼女の両親の事故は……シャドーが仕組んだものだから」


「はぁ?」


 レンは声が漏れてしまっていた。


 ナナはシャドーに希望を抱いていた。このゲームで勝てば、両親を救えるのだと。でも、現実は違った。彼女を不幸に落としたのはシャドー本人だった。


 非情な事実を聞き、ナナは歯を食いしばり怒りを強引に抑え込む。


 その姿にレンとリンは恐怖すら感じた。


 あのナナがだ。優しさの塊、癒しの権化。そう称しても過言ではない彼女の怒りを目の前にして、二人は声をかけることができなかった。


「わかった?だから、協力してほしい」


「わかった……とは、今は言えない。一日考えさせてくれ」


「いいわ。でも、答えは決まってるようなもんだけどね。それと、『最弱の王』、君には伝えておかないことがある」


「なんだよ……それとその名で呼ぶな。レンって呼べよ」


「わかったわ。じゃあ、大事なこと伝えるね」


 そこで一拍置いてから、クイーンは続ける。


「レン、このゲームは君が最初から勝つことが決まってる」

 

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