第二話 初クエスト
ナナと共にクエストに出発したレン。
辿り着いた場所は、広大な草原。遠くの方には見るだけで心を癒してくれそうな湖が見え、向かう方向には大きな洞窟がそびえたっている。
人工的な建物は一切存在せず、完全に自然の領域に飛び込んだらしい。
「本当にこんな場所にいるんですかね」
今のところ何も見えないので、ナナがレンに質問してくる。
「あぁ、いるよ。そうプログラミングされてるからね」
ゲームオタクの性が出てしまったのか、メタ的なことを言ってしまった。それにナナは追いついていけずに首を傾げた。
結局、何も起きないまま洞窟の入り口まで辿り着いてしまった二人。それを見て、レンは違和感を感じた。
「おかしいなー、確か」
そう言って、メニュー画面を開く。
討伐対象の『イノー』の出現場所はこの洞窟までのどこかのはずだ。それは、ゲームのマップに乗っていることなので、間違いない。それに、この洞窟には鎖があり、専用アイテムがなければ開錠できないようになっている。
当然、星一の段階でそのアイテムなど手に入れられるはずがなく、この先は絶対に進めないようになっているのだ。
(なら、隠れてるのか?)
その可能性がレンの頭によぎった。
このゲームは現実の世界をそのままゲームに持ってきて、それを擬似体験できることをウリとしている。なら、現実のような動物の習性もそのまま反映されるのではと思った。
星一に設定されているのであれば、かなり弱いモンスターの可能性が高い。そして、現実世界では弱い動物は、果敢に立ち向かったりはしない。
自分たちだけが持つ特性を駆使して、敵を
「注意しろ!」
この辺りにいるのはわかっている。だから、ナナにも声をかけ、警戒心を持たせた。そして……ナナの死角となる後ろから、影が襲いかかってきた。
「後ろ!」
それにいち早く気づいたレンは、ナナに指示を出し、その声が聞こえたナナは間一髪で攻撃をかわした。
やはり、
このゲームのシステムを利用した一撃必殺。相手もそれを狙うようにプログラミングされている。
その影の正体が露わになる。
イノー。その名前から、猪をモチーフにした動物かと予想していたが、その通りだった。しかし、体型は意外と小柄で、ウリボーほどしかない。あれなら、真っ向勝負ではパワー負けする可能性がある。通りで不意打ちを狙ってくるわけだ。
姿を現したことにより、討伐は楽になった。
あの程度なら、数多のゲームを攻略してきたレンにとっては朝飯前だ。そう思い、剣を構える。
狙いは核。一匹なら一撃で仕留めて、次のクエストに行こう。だが……
「グワァァァ!」
イノーが鳴く。この後に及んで、なにをしでかすのかと思っていると、草むらの中から十匹近くの仲間が飛び出してきた。
「やっぱ、群れてたか」
動物の習性だ。
野生では群れからはぐれたものには死が訪れるといっても過言ではない。それほど、群れるという習性は大切なのだ。そこのところを、レンも予測していた。だから、焦ることはないが、ナナは違った。
思った以上の敵が出てきて、かなり焦っている。それは、群れていることの想像がつかなかったからなのか、ゲームに慣れてないからなのか。レンにはわからない。
一斉にイノーが襲ってくる。狙いはナナだ。怯えているから、標的にされたらしい。しかし、弓を構えるという行動を取らずに、尻餅をついてしまう。
その姿を見て、レンは呆れた。ここまでだとは思わなかったからだ。
おそらく、ゲームオーバーになったらそこで終わりというゲームシステムが異常に緊張感を与えているのだろう。しかも、彼女はこのゲームに両親の命を預けているといってもいい。だから、想像以上のプレッシャーがかかっているのだろう。
「その気持ちはわかるけどよ!」
彼女に襲いかかるイノー全員を斬り、ナナを守る。
「立てるか?」
「ごめんなさい」
「謝るのは生きて帰ってからだ。いいか、このゲームのコツは、複数敵がいる時は一撃で仕留めようとしないことだ。それにこだわると敗北する。まずは、ダメージを与えて、隙を作る。いいな」
「はい!」
そう言って、ナナは一旦深呼吸。そして、弓を構えた。
レンが突進し、イノーにダメージを与える。その隙を突き、遠距離からナナが
「やった!一匹」
「こっちもだ!」
レンは二体仕留め、残りは七体。
それでも、ピンチは変わりなく、二人は背中合わせにお互いの背後を任せた。
一瞬も気を緩めず、熟練の戦士のようにイノーの集団から 一匹ずつ確実に狩っていき、残りは一匹。ピンチに陥ったイノーは自分の身を守るために逃走を選択した。
「逃しません!」
弓矢を放ち足に当たる。その隙を突き、レンが
彼らの目の前にミッションコンプリートの文字が浮かび、初クエストを見事達成した。
「やりましたね!」
「あぁ、初めてにしては上出来だったよ」
ナナの功績を褒め、二人は集会場へと戻ることにする。しかし……
「ボロロォォ」
空間を
目の前には、ライオンのようなたてがみが特徴的な肉食獣が襲いかかってくる光景が見えた。しかも、その獣はナナを狙っており、レンはそれを咄嗟に庇う体制をとった。当然、自身が回避するなどできないレンは、容赦なく
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