第一章・DEO編
第一話 仲間
念願のデスゲームを体験できると思った矢先に、『コンティニュー』というスキルを手に入れてしまったレンは、とりあえずギルドへと向かっていた。
「なんでなんだよ……」
呟きながら歩いているが、レンは最悪の気分を味わっている。
『コンティニュー』というのは本来、ゲームにデフォルトで備わっているもなのに、それが『ユニークスキル』となっているのはどうしたものか。しかも、彼に頼れるのはこれだけであり、このスキルをもらった本人としては、詰んだらゲームオーバーになれと言われているようなものだ。
おそらく、このスキルはこのゲームの中でも無敵の部類に入るのだろう。だが、デスゲームの緊張感を体感したかった彼にとっては嬉しくない。
そんな事を嘆いていても決まってしまったものは仕方ないので、今までのゲーム経験を頼りに、これからの立ち回りを考えていくことにした。
そうして思考しながら歩いていると、教会のような建物にたどり着いた。
建物の中に入ると、中にはたくさんの人間がいた。それを一目見ただけでレンは、全てプレイヤーということを見破った。
「とりあえず、最終目標の魔王討伐のため、クエスト攻略していくか」
ゲームに飛び込んだ後に説明された事を口にし、簡単なクエストから受注する。
従来のゲーム性は全て廃止されているので、当然レベルというシステムもないが、いきなり魔王討伐が可能かと言われると否である。
と、いうのも、ゲームバランスを崩壊させないために、魔王の巣窟に入るには専用アイテムが必須となるのだ。そのため、徐々にクエストを攻略しなければならないのは変わらない。
クエストにはわかりやすく星の数で難易度が決められている。
星は一から十まであり、最初は一しか選択できなく、昇格任務を受けると一つ上のクエストに挑戦できるようになる。
予定通り、クエストを受注しようとしていると、受注版の前には挙動不審の女の子がいて、たくさんの人たちに詰め寄られている。
「おい、姉ちゃん。どいてくれよ」
「そうよ。私もクエスト行きたいの!」
「わ、わかりました。ちょっと、どきますね」
圧が凄かったのか、少女は人並みを掻き分けて受注板から離れていく。その途中の少女とレンはぶつかり、
「ごめんなさい」
少女が謝ってきたので、それにレンも謝り返す。
「すごい群がりだね」
「そうですよね。やっぱり、報酬狙いで皆さん頑張ってるみたいですよ」
受注版の前の人だかりを見たレンの言葉に少女は苦笑いで答える。
このゲームクリア者にはどんな願いも叶えてくれるという報酬がついている。と、いうのもシャドーは条件を達成することによって、報酬をくれるというのが当たり前となっており、レンがシャドーのゲームが好きなのもそう言った面があるからである。
「君はどういったことが望みなの?」
報酬の話を知っているということは彼女もそれが狙いなのだろう。だからこその質問だ。それに、
「私は両親の手術代が欲しくて……今はなんとか延命措置をしてもらってるんですけど、早くしないといけないので……」
自分のシャドーの会社を見学させてもらうという願いより重く、なんと答えればいいのかわからなくなり、沈黙してしまった。
こんな話を聞いたら、意地でも彼女の願いを叶えさせてやりたいと思ってしまい、彼の心情は複雑になる。
「すいません。こんな話しても空気を重くするだけですのにね」
「いや、問題ないよ」
「ありがとうございます」
レンの思いやりに笑顔で答え、それにレンの胸は高鳴った。
「私、ナナって言います。もちろんゲーム名ですけどね」
「俺はレンだ。よろしく」
相手が自己紹介をしてきたので、反射的に自己紹介をして、彼女との会話が弾んだ。
その時に、彼女が初めてこの手のゲームをやるという事を知り、経験者であるレンは色々とレクチャーしてあげることにした。
「一緒にクエスト行きません?」
「え?」
女の子からの誘いを受け、一瞬戸惑ってしまう。現実ではこういったことはなかったので、嬉しい反面いきなり緊張してきて、動きがこわばってしまった。
「ダメですか?」
可愛らしい表情で首を傾げ、上目遣いでレンを見てくる。その行為に胸が高鳴り、鼓動が早くなっていくのがわかっていく。特に鮮やかに煌めく薄青の瞳がレンにとっては毒にも等しい。
「だだだ、だい……じょうぶです」
紡ぐ言葉が早くなっていくのが自分でもわかり、少し恥ずかしかったが、気を取り直して受注版の前へと向かう。
「これ、とかいいんじゃないかな?」
「どれですか?」
ゲームだから気にしていないだけなのか、かなり近寄ってくるナナにドキドキされっぱなしだ。
それをなんとか抑え、星一の『イノーの討伐』を選択し、クエストに向かおうとするが、
「武器って持ってる?」
自分は引き継ぎデータなので、とても使いやすい剣を持っているが、彼女の装備事情は知らない。だからこその質問なのだが、
「一応持ってはいますよ。ここに来る前にゲットはしといたんですよ。私の力では、近距離は向いてないと思って弓にしたんですが、大丈夫ですか?」
「うん、問題ないよ。武器は好きなの選べばいいし」
お互いに準備万端だ。なら、あとは二人でクエストに赴くだけ。そう、クエストに。だが、女の子と二人きりという状況は、ゲームといえど女慣れしていないレンにはとても刺激的すぎた。
そんな夢のような状況で彼は無事に経験者としての腕前を見せ、生き残ること(精神的に)が可能なのか。乞うご期待。なんてね。
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