どこかの日常2

 「ゴホッ!ゴホッ!ヴフッ!」

 

 2月の下旬頃。気温は激寒い時期である。

 風邪をひいてしまった彼女。綿マスクで口を隠し、ベットの上で寝ている。


 「入るよー。○○ちゃん」


 僕が部屋のドアを開けて、自家製のお粥を作って持ってきた。

 こういう時、何を食べさせるべきなのか分からない。だから、お粥が一番食べやすいし、温まるだろうから作った。


 「うん…ありがとう」


 むくりと起き上がった彼女は、おでこに冷えピタを貼っている。


 「お粥作った!」


 僕は彼女に満面の笑みで彼女にお粥を自慢した。簡単であるため、手っ取り早かった。


 「うん…助かる」


 そして、お盆の上に乗った大きめのお皿に入ったお粥を蓮華で救う。


 「フーフーしてあげるから待っててね!」


 「そんなのいいよ…赤ちゃんじゃないんだし」


 「フーフーしたいなぁ。早く風邪治りますようにって気持ちを込めてしてあげたいなぁ!」


 「……あんがと」


 彼女の目がジト目になり、様子を伺っている。僕は蓮華にお粥を掬ってフーフーしてあげる。

 

 気持ちを込めながら2.3回フーフー。あまりやりすぎると冷めちゃうもんね。


 「はい!」


 「あー…」


 目を閉じながら口を開ける彼女にゆっくりとお粥を入れてあげる。もぐもぐと頬張る彼女。小動物みたい。


 「美味しい?」


 「…うん…。アタシが作るやつより…美味しい。なんか負けた気分…」


 「よかったー///」


 思わずコメントしてくれて、照れてしまう。彼女が悔しそうな顔をしている。でもその顔もまた可愛い。


 またフーフーしてあげる。


 「はい!」


 「あーん」


 少し照れているのか、風邪のせいなのかは分からないが、顔が朱色に染まって見える。あー、なんだろ。この可愛い動物。


 「……」


 二回目を食べ終わる。しばらく彼女の様子を眺めてみたくなった。だけど、彼女はモジモジしだしてお粥の方に目線を向ける。


 「もっとほしい?」


 「………」


 こくりと小さく頷く。


 僕はその姿に癒され、すかさず蓮華にお粥を掬う。またフーフーしてあげる。この時も『早く風邪治してね』という気持ちを込める。


 「はい!」


 「あー…」


 さっきより多めに掬ったので、彼女の口の中にいっぱいのお粥が入る。その為全部を口に含むのに多すぎるから、思わず顔を上に向けながら口に流し込んだ。


 もぐもぐと頬張る可愛い彼女。この瞬間の僕のニヤニヤが溢れてしまって、彼女に見られる。


 「何ニヤニヤしてんの…」


 「ふふん。○○ちゃんが可愛いなぁって!」


 「……あんまこっちみんな」


 「なんで?」


 「……照れる…」


 「うん!それも可愛い!」


 さらに頬が赤くなった彼女。

 思わず、視線を下に逸らしている。


 「………」


 るんるん気分の僕は、次のおかわりを待っている。


 「なぁ」


「うん?何?」


 彼女はぎゅっと掛け布団を握った。いつの間にか布団の一部がシワシワになっている。


 「ありがと…」


 「フン。どう致しまして!早く元気になる為に、なんでも手伝います!」


 家事でも、買い物でも、なんでも尽くしてあげる。彼女の為にね。

 家事全般は僕でも出来るし、買い物だって車があるから平気。


 「ねぇ!なんか他にほしいものある?」


 「………」


 「なんでも申し付けください!」


 「あんがと…」

  

 俺は、またニッコリと笑顔を送った。


 「ハイハイ。わかりましたよ。今は他にほしいものはないみたいだね」


 お粥を部屋に置いてある机の上に置いたあと、体温計をまた測ってみようかと提案する。

 だけど彼女はついさっき測ったばっかりらしいから、僕は体温計をもとの場所に置いた。


 「ねぇ…」


 「うん?なぁに?」


 「……そのお粥、△△が作ったん?」


 「うん、そうだよ!美味しかったでしょ?」


 こくりと小さく頷いた彼女は、じっとお粥に目線を向けている。


 「料理出来るん?」


 「うん!料理は結構作るの好きだからね」


 「……」


 そして彼女は唇を尖らる仕草を見せた。

 何それ!可愛い!いきなりどうしたの!


 「…今度……料理作ってください」


 どうやら彼女、僕の手料理を気に入ってくれたみたい。嬉しい!


 「うん!わかった!じゃあ、○○の好きな料理教えて!」


 「……シチュー…」


 この寒い季節に丁度いい食べ物。今度振る舞ってあげよう。


 思わず、彼女の答えに笑みが溢れてしまう。


 「オッケー!」


 そして、彼女は残りのお粥をおねだりしてきた。

 僕はフーフーして、彼女の口に入れてあげる。もぐもぐと可愛らしいお口に笑みが止まらない僕。癒されるぅ。


 「一緒に風邪治そうね」


 「……うん」




 

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