第2話

 狩りは動物の命を奪う行為だ。命を奪うために素手ではいけない。罠か弓か、そういう命を奪う道具が必要だ。でも子供だって考えたらわかることだけど、弓っていうのは練習がいる。慣れない弓を持った子どもが狩りのために山に入ったところで、蛇に食われるか角突きウサギに刺殺されるか。クマにでも出会えば内臓だけを貪られて死ぬだろう。


 そう考えるとやっぱり罠が妥当かもしれない。弓は将来的に自警団にも加わりたいって言い訳すれば、子どもの浅い考えだって軽く弓を渡してもらえるだろうから。実際、若いころだけ自警団に入って、年を取れたら農家になる人だってこの村じゃ少なくないんだから。まあ暴漢に襲われて死んじゃう人も多いけど、それはまあどんな風に生きてたって助けられない人はいるもんね。


 個別の墓なんてないから集合墓地に適当に埋め立てられておしまい。教会の人がちゃんとお祈りをしてくれれば不死者として復活することもないし、息子を失った父母だって自分が生きるために2、3日もしたら仕事に励む。薄情だって都市から時々くる旅人は言うけど、平和とはいえ盗賊が来れば、魔物が氾濫すれば、畑の植物が腐り落ちたら、村に病気が流行ったら、いつ死んだっておかしくないんだ。早く死んだら自分の実力不足か、不運を恨むべきだよね。


 ってわけで罠を作ってみようと思う。罠の形も分からないけど、魔物の中にはいいお手本になるやつもいる。悪戯猿っていう凶悪な魔物が森に現れた時、そこで多くの自警団の人が死んだんだって。殺されたところは見たことないけど、なんでも、森に蔓を張り巡らせておくだけで、四足歩行の動物や人は転んで打ち所が悪かったら死んじゃうし、蔓が絡まって動けなくなったら殺すことも簡単になるから、悪戯猿に出会ったら終わりだって言われているんだ。運が良ければ帰れるけど、不運な奴は脳味噌をすすられて死ぬんだってさ。


 だからぼくは手始めに蔓を罠として仕掛けることにした。自警団が獣の狩りに入るのは村から見た森の正面側だけ。横側は時々密猟者の人が入ることがあるらしいけど、所詮捕まればさらし首なんだから罠にうっかり引っかかっても仕方ないと思うから、森の横側に罠を張ることに決めた。


 手頃な蔓はいくらでも森に生えている。獣に見つかったらぼくなんかすぐに殺されちゃうからね、手早く木と木の間に蔓を張る。これでいいのかな?わかんないけど、ダメだったらいろいろもう一回考えないとね。


 さて、そうしたら明日もう一度ここに様子を見に来るとしようか。

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