第4話 超絶美少女
「私はアイラ・ルースリーといいます。本当に助かりました。」
赤いローブを着た銀髪の超絶美少女はそう名乗った。アイラか……いい名前だ。
(……はっ!)
あわわ、あまりに可愛いから見とれてしまった!
「俺はレオ。力になれてよかったよ」
「そんな! あんな鮮やかな戦いは初めて見ました!」
アイラは俺の言葉を謙遜だと思ったらしく、慌てて手を振る。こんな冴えないおっさんに対してえらく気を使ってくれるな……
(よっぽどピンチだったんだろうな)
なんだか申し訳なくなるな……
「それにしてもどうしたんだ? 一人ってわけじゃないよな?」
「刺客に追われてエレイン、私の護衛とははぐれてしまって」
「刺客?」
「……多分ダグラス家のものだと思うのですが」
ダグラス家……どこかで聞いたことがあるような。
(そういえば、この娘、“ルースリー”って名乗っていたよな)
聞いたことあるな。何だっけ、年を取ると忘れっぽくなって困るな。
「ロザラムに行かなくてはならないのですが、この調子では行きつくかどうか」
ん? ロザラム?
(確か、ダグラス家とかルースリー家って精霊守の家名じゃなかったっけ?)
もしかしてこの娘、数日後にギルドを訪問するっていう精霊守なのか!?
「実は俺はロザラムの冒険者ギルドの職員なんだ。もし良ければ一緒に行──」
「本当ですか!?」
うわわっ! 近い近い近いっ!
「レオさんみたいに頼りになる人が一緒にいてくれれば安心です!」
うーん、可愛い女の子、しかも精霊守からそんなに歓迎してもらえるような大した人間じゃないんだけど……
「いや、どこまで力になれるかはわからないよ。しかも、今道に迷ってるし」
「レオさんってギルドの職員さんなんですか? 冒険者じゃないのにそこまで戦いなれているなんて、すごいですね」
聞いてないな……
(まあ、すぐにわかるだろ。とりあえずできることをするか)
でも、こんなに可愛い女の子から後で“思ったよりも大したことがないな”と思われるのはちょっとツライな……
※
<アイラ視点>
「実は俺はロザラムの冒険者ギルドの職員なんだ。もし良ければ一緒に行──」
その言葉を聞いた瞬間、私は思わず舞い上がってしまった。
(これで任務を果たせる……!)
私は何としてでも立派に仕事をやり遂げなきゃいけない。じゃないど、私が生かされた意味がないもの……
(それにしても、強くて格好良くて、おまけに優しいなんて……レオさんってなんて完璧なんだろう)
ギルド職員だったら精霊守である私を助けるのは当たり前かもしれない。でも、精霊はレオさんがそう言ったことじゃなく、私のことを心配して提案してくれているのだと教えてくれる。つまり……
(レオさんは純粋に私のためを思って助けようと言ってくれているんだ……)
そんなふうに思って貰えるなんていつぶりだろう……
(……それにしてもレオさんは格好いいな)
落ち着いた雰囲気に精悍さと優しさが入り混じった顔立ち。それに……
(あの星石のような鼻……)
精霊守の間では伝説がある。“星石を体に宿すものこそ勇者”だと。レオさんの鼻はまさしくそれだ!
(すっごくモテるんだろうな……)
安心したせいか、そんな浮ついたことを考えてしまう……ああ、駄目だ。もう少し落ちつかないと。
「悪いんだけど、地図とか持ってたりするかな?」
「は、はい!」
はっ!
「ありがとう。……なるほど。ここらは調査対象から外されてる地域か。こんなにロザラムに近い場所なのに何で……」
持っていた地図について私にはよく分からなかったが、レオさんは理解出来るみたいだ。
「アイラの持っていた地図のおかげで何とかなりそうだ。ありがとう」
そう言うとレオさんは爽やかな笑顔を浮かべて私に地図を返してくれた。やっぱり格好いい……
(はっ!)
いけない、私ったらまた!
「こ、こちらこそありがとうございます!」
「そんな畏まらなくても……って畏まった方が良いのは俺の方かな?」
えっ? 何でそうなるの?
“どうも本当にそう思ってるみたい。どうする?”
私の一番の相棒の精霊、ハーディアはそう教えてくれる。彼が嘘をつくはずはないけど……何でだろ?
「そ、そんな! とんでもないです!」
「そうか? ならいいけど、まだ四、五日はかかるから楽にしてくれよ」
「は、はい!」
「とりあえず近くに昔使われていた野営地があるみたいだから行ってみようか」
そう言って歩き始めたレオさん。確かに昼はかなり回ってるし、そろそろ暗くなってからのことを考えた方がいい。
(流石……私はそんなこと考えもしなかった)
本当にレオさんは頼りになる。私も足を引っ張らないようにしなくちゃ!
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