ひよりんのお姉ちゃん大作戦

更新が滞ってしまい申し訳ありませんでした!



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 『大人こども』と『アンリエッタ』がコメント欄に現れた事によって、ひよりんの初配信はツブヤッキーのトレンドに載った。


エッテ様と同じマンションに住んでいる事が改めて話題になり、VTuber方面のリスナーがひよりんの配信になだれ込んだ結果、最大視聴者数は10000人に到達していた。声優の個人チャンネルとしては異例の数字だと思う。人が増えたことによってコメント欄が荒れるといったこともなく、ひよりんの初配信は無事に終了したのだった。


「ひよりんさん、初配信お疲れさまでした」

「蒼馬くん。ありがとねえ、配信に来てくれて」


 配信が終わった後、俺はひよりんの家を訪ねていた。「ちょっと飲まない?」とルインがきたのだ。


 全くの素人だった俺とプロの声優のひよりんでは人前で話す事の耐性は全く違うだろうけど、連絡が来たという事はやっぱり多少はプレッシャーがあったんだろう。ザニマスの公式生放送やLIVEと個人のミーチューブ配信では色々違うだろうし。誘いを断る理由は俺には見当たらなかった。


「こちらこそ、ミラー配信許可してくれてありがとうございました…………それと、そっちのチャット欄に俺の視聴者が行っちゃったみたいですみませんでした」


 『こどもちゃんの姉です』『こどもの母なのですが、うちの子とどういったご関係なのでしょうか?』といったような俺の視聴者っぽいコメントがぽつぽつとひよりんの放送のチャット欄に現れてしまったのだ。自分の放送で注意したものの、全員が言う事を守ってくれる訳じゃない。ひよりんには迷惑をかけてしまった。


「全然気にならなかったよ? それに賑やかな方が楽しいし、寧ろちょっと助かっちゃったかも」

「そう言ってくれるならありがたいですけど…………」

「こどもちゃんの視聴者、キャラ濃い人多いよねえ」


 そういってひよりんは笑った。何にせよ、気にしていないなら良かった。お姉ちゃんズにはあとでキツく言っておかないといけないが。


「それじゃあ…………乾杯しますか。ひよりんの初配信大成功を記念して────」


「────乾杯!」





「蒼馬! なんなのよあの女たちは!」


 顔を真っ赤にしたひよりんによってダン、とグラスが思い切りテーブルに叩きつけられる。割れてしまうんじゃないかとひやひやするが、意外にもグラスは頑丈でこれまで割れた事は無かった。


「…………一体なんのことですか…………?」


 今日のひよりんは酒乱モードになるのが早いな…………やはり個人配信で疲れていたんだろう。疲れている時の酒は一瞬で回るんだよな。俺にも経験がある。


「お姉ちゃんズに決まってるじゃない! 私を差し置いてお姉ちゃんぶるなんて…………許せないんだから!」

「はあ…………?」


 お姉ちゃんズ…………だと?


「ひよりんさん、もしかして俺の配信観てるんですか…………?」

「当たり前じゃない! 実のお姉ちゃんだよって何回も送ってるのに、全然気が付いてくれないんだから…………」

「え、どうしてそんな事を」


 そういえば、チャット欄で頻繁に実の姉アピールしてくる人がいる。俺の配信のチャット欄は全体的に意味不明だからあまり気にしてなかったんだが、もしかしてあれ、ひよりんだったのか…………?


 ひよりんはテーブルに突っ伏して、あろうことか涙を流し始めた。俺はティッシュを手に取りそれを拭う。例えどうしようもない酒乱だとはいえ、女性の涙は心臓に悪い。


「私が…………私がこどもちゃんを甘えさせてあげたかった…………!」


 …………涙と鼻水をずびずびさせながら叫ぶひよりんは、なんかもう俺の憧れていた『八住ひより』とはかけ離れていた。もしかして俺のチャット欄にいる人たちって、みんなこんな感じなのか…………?


「分かりました、分かりましたから泣かないで下さい」

「分かりましたって…………何が…………?」


 捨てられた子犬のような目で俺を見るひよりん。


「…………甘えてあげますから。だから泣かないで下さい」

「ほんと…………?」

「はい。それで元気になってくれるなら」

「なるなる! え、じゃあ、ソファに移動しましょう!?」


 ひよりんはガバッと勢いよく立ち上がるとその勢いで大きくフラついた。慌ててそれを支えると、ひよりんはにへらっと気の抜けた笑みを浮かべた。


「ありがとねえ、こどもちゃん」

「…………はい」


 ひよりんの中では俺は既に天童蒼馬ではなく大人こどもになっているらしい。今更後悔し始めたがもうどうすることも出来そうになかった。


 ソファにひよりんを降ろすと、ひよりんは妙に座った眼で俺を見上げ、笑った。


「じゃあ────お姉ちゃんが膝枕してあげるね? ほら、はやく横になって?」



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絶滅したはずの希少種エルフが奴隷として売られていたので、娘にすることにした。

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