第10話 入団
ローアンはその足で魔法科学研究所の本拠地に戻り、コスロスにレジスタンスとなることを告げた。
「そうか。俺たちの仲間になるんだな?」
「はい。僕はもう、迷いません」
「分かった。正式に加入を認めよう」
そういって、コスロスはある紙を出してくる。
「さっそくだが、お前に頼みたいことがある。これは帝国と共和国が戦闘を行うと考えられる周辺の地図だ。ローアンにはこの地域の制圧をしてもらいたい」
「しかし団長。ローアン単独で動くには、少々遠いようにも思えますが……」
「それなら問題はない」
そういって、コスロスはローアンを見る。
「ローアンは現在進行形で冒険者の身分だ。それを利用すれば、簡単に戦場に着ける」
「確かにそうかもしれませんが……」
「ローアン、今は別に冒険者ギルドに行けない理由はないのだろう?」
「えぇ。そうです。軽蔑の視線が向けられるくらいですね」
「なら問題はない。早速ギルドに行って、戦争に行く準備を進めてくれ。俺たちはそれぞれで準備を進める。もし魔法科学研究所で把握してない情報があるなら、我々に流してくれ」
「了解」
「今日は俺たちが地上に出る記念日だ。全員に気を引き締めていくように周知してくれ」
「はい」
そういって、ローアンたちは各々の目的を果たすために、行動を始めた。
まずローアンは、指示された通りに冒険者ギルドへと向かい、戦争従事者となるための申告をする。
「おい、ローアンが出てきたぞ」
「所詮お荷物にしかならない奴が、戦争に出て何になるんだかな」
「手柄を取りたいんだろ?魂胆が見え見えなんだよ」
そういって無関係の冒険者がギャハハと笑う。
しかし、ローアンはそれを無視して、淡々と事務処理をしていく。
「では戦時徴収兵力として登録します」
「はい」
「当日は対人戦を想定した装備で来てください」
これで戦争に参加できる。
準備は整った。あとは情報収集に勤しむだけだ。
そんな中、ある情報が冒険者ギルドに流れる。
「カロットたちのパーティが死体で見つかったってよ」
「未知の伝染病の可能性とかあるらしいじゃん?」
「変死体ってことか?」
「いや、よく分からない。まず情報が入ってこないんだよ」
「怪しいなぁ……」
ローアンは聞いてないふりをして、冒険者ギルドをあとにする。
そのまま装備を揃えるために、商店街へと繰り出した。
それから数週間が経過した。
すでに帝国は軍を前進させ、目的地周辺に到着する。
それと同時に、共和国に対して宣戦布告した。
これにより、共和国南部の街を強襲できるようになる。
その軍の中には、当然冒険者も含まれている。
ローアンはなるべく他人と関わらないように、気配を消しながら移動していた。
しかし気配を消すも、面倒な人間は突っかかってくる。
「どうしたローアン?こんな所に来ちゃって大丈夫なの?」
「ママがいないとさみしいからな」
「ちゃんとお仕事できるかな?」
そういって笑う、ガラの悪い冒険者。
ローアンは完全無視を決め込んでいた。
そして前線にほど近い村に到着すると、ローアンはすぐさま単独行動を開始する。
この村の近くに、魔法科学研究所の面々がやってきているのだ。
森に入り、しばらく進むと、野営を作っているレジスタンスの面々に遭遇する。
「ローアンか。早速こっちに来てくれ」
そういって案内されたのは、団長のコスロスのいるテントだ。
「来たなローアン。早速作戦会議だ」
机の上に広げられた地図を使って、説明を開始する。
「まずローアンは、最初は通常通りに戦争に参加する。その間に、索敵能力の高い昆虫を使って、皇帝がいるテントを突き止めるんだ。テントを発見したら、すぐさま戦線を離脱して俺たちのいる場所まで後退。そのあとは警備の様子をうかがって突入する。簡単な暗殺計画だが、問題はないはずだ」
「質問ですが、僕が皇帝を暗殺するのは?」
「それも考えたのだが、それではレジスタンスが殺したということにはならない。あくまでも、反帝国主義の人間が殺したことにしなければ意味がないんだ」
「そうですか……」
「……警備の人間をローアンが殺してもいい。それなら簡単に俺たちが侵入できるからな」
そういって作戦会議は終了した。
ローアンは何食わぬ顔で、冒険者たちがいる村に戻る。
ここからが本番だ。これから皇帝を暗殺するために、ローアンは行動すると言っても過言ではない。
軍が先導して戦場を進む。
今回の戦場となる平原では、騎士や冒険者が横一直線に並んでいた。
そこに、皇帝が馬に乗って登場する。
「これより諸君らは一世一代の戦闘を行うことになる。我々は正義だ。正義は常に正しいのだ。この戦いも、この戦争も、我々が正しく、栄光ある勝利をもたらす第一歩として歴史に名を残すことを期待する」
直後、太鼓とラッパの音が響き渡る。
その音に合わせて騎士たちが前進を始めた。
冒険者もそれに合わせて前進する。
ローアンは、小さい蠅を召喚し、皇帝の着ている服の裾に潜り込ませる。これにより、皇帝がどこにいるか簡単に分かる。
「あとはどのタイミングで抜け出すかだが……、アレで行くか」
何か考えのあるローアンであった。
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