第15話 告白? の結果
こ、告白⋯⋯だと⋯⋯。
昨日まで神奈さんとは険悪なムードだったのに、1日で惚れる要素があるか? でも恋は一瞬という言葉もあるし本当に俺のことを⋯⋯。
いや待て。ここはあらゆる可能性を検証してみよう。
1番あり得そうなのが罰ゲームの嘘告で、オッケーをした瞬間にネタばらしされるというパターンだ。
他には瑠璃だったら「ま、まさか先輩、魅了スキルに目覚めたんですか! けど先輩はイケメンじゃないから無理ですよね。そうなると⋯⋯ど、奴隷商人! 無理矢理命令に従う首輪をつけて、私に言うことを聞かせるつもりですか! 先輩の鬼畜、変態! でも私はその命令に抗ってみせます。もし抗えない時はどこぞの姫のように⋯⋯くっ! 殺せ⋯⋯って言いますよ」と考えてそうだな。だがこれはあり得ないことなので却下だ。他に思いつくことといえば⋯⋯恋人として俺の懐に潜り込み、弱みを握りそして⋯⋯。
何かこれが1番ありそうで怖い。
と、とにかく返事をしないとな。このままでは顔を真っ赤にさせて、俺の目をジッと見ている神奈さんがかわいそうだ。
「お、俺は⋯⋯」
神奈さんの告白に返事をしようと口を開いたその時。
「か、神奈さんが告白!」
「ついに羽ヶ鷺のヒロインが男の手に!」
「でも神奈さんって天城くんのこと嫌ってなかった?」
「バカね。それも好きの裏返しってやつだよ。素直になれないなんて可愛いじゃん」
クラスメート達が一斉に詰めよってきたため、俺は返事を口にすることはできなかった。
そしてクラスメート達からの指摘に何故か神奈さんが慌てふためく。
「えっ? えっ? 告白? ちちち違います!」
「何が違うのかなあ?」
動揺している神奈さんに向かって、ちひろはゴシップ記者のように面白がって問いかける。
「わ、私はただ⋯⋯」
「「「「ただ?」」」」
俺やちひろを含め、ここにいる者達が神奈さんのこれから放たれる言葉に息を飲む。
「放課後時間あるなら付き合ってほしいなって⋯⋯」
告白じゃないのかよ! でも普通に考えると場所としては教室はありだけど、こんなに人がいる中で告白なんかしないよな。
神奈さんの言葉に舞い上がっていた自分が恥ずかしくなってきたぞ。
「なあんだ、そうだったの。でも神奈っち、顔を真っ赤にしてリウトの目を見て震えてたよね? あれは好きな人が目の前にいて緊張していたからじゃないの?」
確かにちひろの言うとおり、話しかけてきた時の神奈さんの様子は明らかにおかしかった。俺もその見解を聞いてみたい。
「あれは⋯⋯止むにやまれぬ事情があって、天城くんに話しかけなければならなかったから⋯⋯」
ん? この言い方だと神奈さんは俺に話しかけたくなかったということか。神奈さんとの仲が一歩前進したと思ったけどそれはやっぱり幻想だったようだ。
「でも神奈さんが男を誘っているの初めて見た」
俺の3つ後ろの席で、たまに男泣きをする織田くんの言葉にクラスメート達は頷く。
確かに神奈さんが男と2人で帰ったという話は今まで聞いたことがない。
「それも違うの! 私は天城くんだけじゃなくてちひろさんも誘うつもりで⋯⋯2人だけで帰るつもりはないの」
「そうだったの。ちなみに私は大丈夫だよ」
そして事の真相がわかるとクラスメート達は興味がなくなったのか、蜘蛛の子を散らすように離れていった。
結局告白という甘いイベントなどなかったので、俺は肩を落とす。
「残念だったね、リウト」
「な、何がだ。告白じゃないことなんて初めからわかっていたさ」
勘違いしていたことがちひろにバレるとからかわれそうなので、俺は平然と答える。でもそうなると何で神奈さんは俺に放課後付き合ってほしいって言ってきたのだろう?
そしてその答えはこの後の神奈さんの言葉ですぐにわかった。
「天城くんごめんなさい。私がハッキリと言わなかったばっかりに⋯⋯それでこの後時間あるかな? 紬が2人を連れて来てほしいって言ってて⋯⋯私は不本意だけど」
ボソッと神奈さんの本音がこぼれる。
なるほどね。紬ちゃんの頼みだったのか。
そうでもないと神奈さんが俺に話しかけることなんてないよな。一瞬でも告白と考えていた自分が恥ずかしい。
「俺は大丈夫だよ」
「本当? 妹
今、がを強調されたような気がしたが気にしないようにしよう。
こうして俺は昨日と同じ様に、目の前の女の子にとっては望まれない客として、神奈姉妹の自宅へと向かうのであった。
そして俺達は玄関で靴に履き替え、学園の外に出るためにグランドを横切っていると⋯⋯。
カキーン! と響きの良い音が聞こえてきたので、俺は思わず視線を向けた。
野球か⋯⋯羽ヶ鷺学園の野球部はけっこう強い。それは2年C組に148㎞のストレートを投げるエースの沢尻一八がいるからだ。巷では夏の甲子園の予選大会では、優勝候補の1つに上げられているらしい。
「先程からジッと見て⋯⋯確か天城くんは昔野球をやっていて上手だったと記憶しています」
神奈さんが俺の視線に気づいたのか問いかけてくる。
「今はやらないのですか? うちの野球部は強いって噂ですし」
「今はもうやらないよ」
「そうですか。スポーツをすれば煩悩が払えると言いますし、私としてはおすすめですけど」
俺だって
「リウトは煩悩ありまくりだからやった方がいいんじゃない?」
「何を言ってる。俺は常に賢者タイムに入っている聖者のような存在だぞ」
「それってエロい後に入る時間じゃない。それにリウトは聖者じゃなくて性邪の間違いでしょ?」
さすがにちひろは賢者タイムのことを知っていたか。
だが神奈さんは何のことかわからずに頭にはてなを浮かべている。
「賢者タイムって何ですか?」
「それは⋯⋯」
神奈さんに賢者タイムを教えて恥ずかしがる姿を見たい欲求に駆られるが、何とか堪える。これ以上変なことをするとマジで変質者扱いされかねないからな。
「神奈さんは知らなくていいことだ」
「何ですかそれは」
「とにかく忘れてくれ」
「珍しくリウトの言うとおりだと私も思うよ」
「ちひろさんがそう言うなら⋯⋯」
神奈さんは完全には納得していないようだが、とりあえずちひろの言葉を聞いて、賢者タイムが何か知るのを諦めてくれたようだ。
そして俺達は十数分歩くと閑静な住宅街に出て、神奈姉妹が住むアパートへと到着した。そして神奈さんは鍵を使ってドアを開ける。
「どうぞ中へ入って下さい。紬も2人を待っていると思います」
俺達は神奈さんの許可を得たので、玄関で靴を脱ぎ、まずはちひろが部屋へと上がる。
「おじゃまします~」
そして俺も部屋へと上がろうとしたら、何故か神奈さんが俺の身体をペタペタと下から上へと触り始めた。
「えっと⋯⋯何をしているのかな?」
俺は神奈さんの怪しい行動を問い詰める。
「ボディーチェックです」
「ここは空港か! 何で俺だけテロリスト容疑をかけられているんだ! ちひろは普通に入っていったぞ!」
「ちひろさんは小さい子にイタズラする人じゃありませんし」
「だからそれは誤解だ」
だが神奈さんは俺の言葉を無視し、ボディーチェックを続ける。
それにしても念入りに調べているせいかちかっ! しかもいい匂いがするし、上から神奈さんを見下ろしているため、ワイシャツの隙間から薄いピンクの物が見えてるんですけど。
「どうやら危険物は持っていませんね。中に入っていいですよ」
そして神奈さんのおさわりタイムが終わり、この時俺は「神奈さんのおかげで一部危険物になりかけたけどな」と心の中で思うのであった。
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