転生
「…………ところでなんだけれども、早く逃げくれないかしら?」
「「────────はぇ?」」
唐突すぎる提案に、俺達はそろって絶句する。
「しーー! これ聞かれると
それに増援がきたらまた面倒なことになりますから、さっさと逃げますの!!」
「な、なぜですか? それだとノスタルジア様は我々を捕まえられるまで永遠に追わない……と……」
「え? ちょ、ちょっと一体どういう──」
いきなり手で口を塞がれてしまった。
シュテルンは何かに気が付いたのか、ノスタルジアには見向きもせずに剣を消し、再び液晶板を操作し始めた。
「説明は後です。 女神長は腰が抜けて動けないらしいので、この隙に逃げますよ!!」
「そ~そ~! ノスター様はわたしたちをわざと逃がして、それをりゆうぅゅゅゅゅ……」
「シズク先輩は黙っててください!! と、とにかく説明は後です! 今は逃げることだけ考えてください!!」
「わ、わかった」
その後、数種類の液晶板を操作した後、首にかけていたカードをかざすと俺達三人の足元に新たな魔法陣が現れた。
「転生準備完了。後は私が術式を─」
「始動~!」
「わ、私のセリフが……!?」
横から割って入ったシズクの一言により、より一層足元の魔法陣が輝き始め、光の粒子が舞い上がり始めた。
「わー
まーもう転生してしまいますのー。
こうなってしまったら
面倒くさいですわー」
「……なんか、棒読みだな」
ギックリ腰? で倒れこむノスタルジアから目線を戻し、俺は念のための確認をする
「これで転生できるようだけど、転生した後はどうすんの? 冒険者ギルドとかに行くのか?」
「それ今聞くことですか……? まあ転生した後は安心してください。
それなりに
「あ~!! もしかしてあそ──」
「はいネタバレ禁止ですよ先輩」
「アニメの続きネタバレされたくないでしょう?」と、一部の人にはグサリと刺さる脅し言葉を浴びせられたシズクは、どうやらその一部の人だったらしく口を閉じる。
まあ俺もその一部に含まれるのだが。
話を聞くに、どうやら俺達が転生する世界は
まあ異世界に行けるということには変わりない。
俺は初めての転生と異世界にワクワクしながら、舞い上がる光の粒子を見上げた。
振り返ってみると前世で俺はずっと下を向いていた気がする。
だから来世では前向きに生きてみるのもいいかもしれない。
「……なんせ異世界だしな」
「そうですね。前を向くことは良いことだと思いますよ。
勝手に自殺して勝手に被害者ぶった愚痴を聞かなくて済むのでね。
ま、私はただ悠々自適に生きたいだけですが。」
「そうだな~……ってもしかして俺の心読んだの!?」
「ん~? 前向かないと歩けないよ~?」
「シズクも俺の心読んでんの!?」
「ふっふっふっ〜! すごいでしょ~!!」と胸を張るシズク。
いきなり話は変わるが、この世──いや、死んだから前世か?──とにかくそこでは、小さく可愛い女の子つまりロリっ子が好きというロリコンなるものが存在していた。
まあ俺もその傾向があるのだが。
そういうわけなので、まあシズクも女神っちゃ女神だな〜──など、口元を和らげていると。
「……気持ち悪っ」
「わたし小さくないもん!!」
「そうじゃん、こいつら俺が何考えてんのかわか──」
頭を抱え、自分の犯した失敗に恥じていると、突然身体の感覚が消滅し、気がつけばどことも知らないアスファルトの上に立っていた。
見渡してみると高いビルが立ち並び、その間の道路を車のような四輪のタイヤが着いた物が走っている。
一瞬、ここは本当に異世界なのか? と疑ったが、次の瞬間前世の世界ではありえなかった、空想でしか無かった物が空を飛んでいた。
「ほうき……!?」
道路の上を見ると、何本かの光の線が道を作るように仕切られるように伸びており、その上をほうきに跨った人々が飛んでいた。
歩行者に目を向けてみると、普通の人間だけでなく、猫耳の人や犬、完全に獣の姿をした人までもいた。
かくして、俺の異世界生活は少々適当な形で始まったのである。
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