ノスタルジアの策略

「「ノスタルジア様ノスターねぇ様……!?!?」」


 ノスタルジア、またはノスターねぇ様と呼ばれた女神は、余裕な表情でにこやかな笑みをこちらに向けている。


 女神ノスタルジアは2人の反応からして、おそらく更に年長で上位の存在であることが伺える。

そんな女神が来たということは、もしかしなくても俺達の逃走がバレているのではないか……!?


「あ〜、もしかして堕ちようとしてますの〜? 堕ちるのは自由ですけど〜、未来永劫追われ続けますよ〜?」

「……えぇ。」

「いいんですか〜? 女神我々を敵に回しちゃって〜。

あ、今なら懲罰程度で許してあげますよ〜?」

「……ふふ、こちらこそ望むところですよっ!! なんなら今こうして働き続けるより、堕女神として自由に生きる方がマシです!!」

「そーですか、分かりましたわ。

あなたは女神長わたくし捉えてあげますわ!!」


 そう言うと女神長は右手を天に掲げ、無の空間から一振の直剣を引き抜いた。


「この剣は天をも焦がし伝説の剣、炎の聖剣FI・エクソシスト

さあ勝負ですわ!! いくら学園を首席で卒業、その後数々と功績を残したあなたでも、数千年の時を生きた女神長であるわたくしに勝てると思わないことてすわ!!」


 意気揚々と炎を纏った聖剣を構える女神長。

さすがに怖いのか、後ずさるシュテルンに俺は顔を近づける。


「お、おいあの女神ってそんなにすごいのか?」

「はい。彼女、ノスタルジア様は長年女神として何も文句を言わず、勤勉に働き続けた猛者です。」

「そ〜そ〜!! ノスターねぇ様はすんご〜くすんごいの!!

どんな仕事でもババババーって」

「……なるほどな。」


 ──つまり仕事中毒者ワーカーホリックの部類に入っているということか……。


 そんなことを考えていると、シュテルンも虚空に手をかざして直剣を引き抜いた。


「離れてください。

ノスタルジア様は私が倒します。」


 お互いの鋭い眼光が交差し、バチバチと空気がはじけあう。

だがお互い隙が無いのか行動を起こすことは無く膠着状態が続く。


 何か俺も加勢できないかとも考えたが、武器もなければそもそも使ったことすらない俺が加勢に入ったところで、ただの足でまといにしかならないだろうと、俺はその場で眺めることにした。


「こりゃ手助けしようにもできねぇな……んで、先輩女神シズクは静観すんのか?」

「だ~てシューちゃんの方が強いんだもん! わたしが行ってもシューちゃんの足手まといになって怒られるも~ん」

「戦闘面も負けてるって、マジで駄目先輩じゃねぇか!?」

「む〜!! わたしだってできることあるもん!

や、やれば出来るけどやってないだけだも〜ん」

「ほう? 例えば? 言葉だけでいいから教えてくれよ、できること。」


 「え〜っと〜……」その後シズクは何も言えなくなる。


 しばらく経ち、腕を組んで考えた末やっと口を開いた。


「…………お料理とか?」

「ぎ、疑問形で言われても……」


 まぁゼロよりはマシかと思いながら、俺はシュテルンとノスタルジアの方に目を戻した。

俺達が話している間も一切動かず集中していたようで、2人の額には汗が滲み、頬を流れる。


 このまま膠着状態が続いてしまうと、他の女神や警備員などが加勢に来てしまう可能性がある。

そうなるとこちらの負けは必至であり、シュテルンもそれを分かっているようで、表情には焦りが見える。


 だが俺は戦闘経験もなければ相手は女神、勝てるわけがないため動くことはできず、シズクは女神だが特技はお料理ということで戦闘には向かない。

だから、この場を動かそうにも動かせないのだ。


 圧倒的なノスタルジア有利。

このまま膠着状態を続ければ続けるほどノスタルジアは有利になる一方であり、自らこの膠着を解く必要がない。

だが、以外にもこの膠着状態解いたのはノスタルジアであった。


「…………ところでなんだけれども、早く逃げくれないかしら?」

「「────────はぇ?」」

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