女神様は大変です(ブラックです)
「…………」
──どうしよう……
隕石が衝突し、俺を含む全人類が滅んでから2か月が経った。
いや、2か月が経ったらしい。
らしいというのは単純に自分で日数を数えていなかったのと、目の前の女神がこう嘆いているからである。
「いいですかぁ!? 天界にも需要と供給があるんです!!
死者と蘇生者転生者停留者の数がバランスよく拮抗していないと、天界というか
まあ? 後者はいくら増えてくれてもいいですよ。
天界でも意味もなく無駄に
で・す・が!!
いきなり下界で大量に死者が出ると、そいつら全員と相手する
寝ることはもちろん、休むことさえも許されず、二か月ずっっぅっと死者の相手をしないといけない
あなたに分かりますかええ分かりませんよねぇ!?!?
天界は下界と違って労働基準法とか
「あああ休みたいよぉぉ……!!!!」と泣き崩れる女神様。
そんな姿を見て、この話に振ってしまった自分に後悔する。
長期間待たされた上に突然この部屋につれられ、なおかつ
「こんにちは私は女神、シュテルンです。
と笑ってない笑顔、強いて言うなら疲労の果てに生み出された1つも感情が篭っていない、というか心の声ダダ漏れ、そして相手を人どころか生物──いや、俺死んでたわ──。
ともかく、いかにも異常な状態であったがために
「あのぉ……大丈夫か?」
と声をかけてしまったのだ。
その後、その女神が話しによれば、
「忙しすぎて一人一人ちゃんと相手できるわけねーです」
とのこと。
ひとしきり嘆いた後、ゼェゼェと荒い呼吸をしながらこっちを見た。
「そうだ……あなたの後ろには何万人くらいいるんです……」
「え~と……ぱっと見十万人くらい……かな?」
「ほんと!? ほ、ほんとですか!?!?
やったっ! 終わりが見えてきた……!!」
「す、すまん。正確に言うと最後尾が地平線で切れてて見えない……」
「…………………………うふふふふ……」
「お、おい! だ、大丈夫……じゃねえなこれ……」
光を失った瞳はどこか虚空を見つめ、口元は大きく歪み、不気味に笑っている。
──女神って、大変なんだな──
俺が思っていた女神像というのはまず美少女であり、清楚であり、何事も見透かしたような受け答えをし、けっして取り乱すようなことはない。
そんな感じをイメージしていた。
だが実際の女神というのは、まず髪は水色のロングヘアで瞳も水色、整った顔でスタイルも良い美少女ではあったが女神らしさはそれだけ。
周囲の環境が関係しているのだろうが、現実の女神は忙しさのあまり髪さえ整えることはできずボロボロ、何事も見透かすどころか女神の裏まで全てを見透かしたよな言葉、行動。
正直、ここまでくると哀れにさえ感じてしまう。
なんだろう、目の前の女神が女神ではなくただ仕事に圧死させられた少女のように見えてしまう。
これじゃあ女神の片鱗もねえじゃねえか。
「……はーぁ……。
ごめんなさい、見苦しい所を見せてしまいました」
正気に戻ったらしい女神が顔を上げ、疲れ切った表情で重々しく語り始める。
「こういう事情があるので早くパッパと決めてください。
見たところあなたは転生の方が良いですよね? そうですね?」
「お、おう……」
「なら何でも好きな物、スキル、魔法、武器など言ってください。
転生したときあなたが持っていくことができます。」
「ほう……」
普通、こういう時は女神さまが言った通りに最強の魔法やスキルや武器を手に入れてしまうのが良いのだろう。
だが今俺の脳裏には、それらどんなモノよりも優れたモノが浮かんでいた。
しかし、一つ問題がある。
そう──。
「それって対象が生き物でも可能なのか?」
「もちろん可能です。
事実、過去には強力な神龍や、逆にペットなどどんな物であっても死者側の希望があれば持っていくことができます。
なんならドラゴンとかでもいいんでさっさと決めてください。」
「おけ。んなら
「かしこまりました。
これから転生の儀式を行いますので、中央の魔法陣の中心に…………ん……?」
魔法陣に誘導していた歩みが止まり、何度も俺が言った言葉を繰り返している。
そして突然バッとこちらに振り返ると「今なんて……?」と目を見開いている。
「ん? あ、まずかったか?
いや~なんでも連れて行っていいんだろ? だから
ま、さすがにずるすぎ──」
「──女神規定法、第一章第一条。何人も女神として公務に就くため、死者の命令を尊重し、軽率にしてはならない──。
要約すると
だからきっと大丈夫です!」
「ですからさあ早くこっちに……!!」と魔法陣の方へ俺を引っ張る女神さま。
──あ、これホントはダメなやつじゃん……!
そう思いつつも、──まあ天界から離れて異世界に行ってしまえば追撃もそう出来んだろ──と自己解決。
そうと決まれば早くこの場から離れなければならない。
少々小走りになりながら、俺たちは魔法陣の中心に向かい、中央の円の中に立った。
「これでどうすればいいんだ?」
「今から転生の術式を唱えます。
良いと言うまで目を開いてはいけません。」
「……ちなみに聞くけど、開いたらどうなんの?」
「……死にます……!」
「アッハイ……」
──よし、絶対に目を開けない……!
そう心の中で決心し、俺は目を閉じた。
「──リエンカーネーション!!」
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