第3話

「つー訳で、全てコイツが悪い」

  本郷から程近い居酒屋に入ると、先に座敷席で待っていた月見里に高瀬は言った。

  隣では柴田が頭を垂れ、小さく「すびばせん」と謝っている。どうやら相当しぼられたらしい。極平均的な鼻の頭と、非凡なまでに垂れた目尻。そして、引っ張られたらしい耳たぶが赤かった。

「まあまあ。そう小さくならないで。お腹空いたでしょう? 柴田君、好きな物頼んでいいよ。文孝も。空腹が収まれば、イライラも収まるって」

 そう言う月見里にラミネート加工されたメニューを差し出されると、柴田の顔がパッと明るくなった。

 敵に塩を云々と言う言葉は彼の辞書にはないらしい。

 憧れの栞が月見里を想っていても、それはそれ。柴田は素直なのだ。

 おまけに懐は心もとなく、腹は背中にくっつきそうなほどに空いている。

「うっわー。何にしようかなあ。あ、先ずは飲み物……イテッ!」

「何アルコール見てんだよ。お前はダメだ。おーい、おやっさん」

 手にしていたメニューで柴田の頭をはたくと、高瀬は、マジックで店名が書かれたゴムサンダルを突っかけカウンターに向かい、店主に何やら耳打ちをして戻ってきた。

「お前にはスペシャルドリンクをオーダーしてやったからな」

「すぺしゃる?」

「一日一杯しか作れない貴重なヤツだ」

「そんな貴重なのが、こんな時間まで残ってるんですか?」

 店の薄汚れた掛け時計は、既に午後九時を指している。

 月見里は、飲み物のほかにオクラのおかか和えやカレイの唐揚げ、鶏のひざ軟骨唐揚げ、焼き鳥、温野菜などなど、メニューの中にあるものを次々にオーダーすると、眼鏡の奥の目を細め、声を落とした。

「仕入れは確かに一日一杯分らしいけど、オーダーは半年に一回位らしいよ」

 加えて言うなら、罰ゲームに使用される事が多い。が、それは言わなかった。

「え……?」

 一体何を飲ませようと言うのか。

 柴田は楽しげにメニューを捲る高瀬の横で、ウサギのように震えた。

「別に毒じゃねぇんだから、ンなビビんなよ。つか、どっちかっつーと良薬?」

 ってことは苦いのかしら? 柴田は泣きたくなった。

「お前の超方向音痴も、一発で治っちまうかもしんねぇぞ? 感謝しろ」

「最っ悪!」

「ンだとう?」

 確かにそう言いたい気分ではあったが。

 柴田は、胸ぐらをつかむ恐怖の大魔王に精一杯手を振った。

「ちっ、違いますよ! 僕じゃありませんってば!」

「文孝、あっち」

 高瀬と柴田は、月見里の指差す、通路を挟んだテーブル席に視線を向けた。

 そこでは、学生らしき二人組が、薄っぺらな夕刊を広げ覗き込んでいた。

「最悪ッ! 最悪だぜ!」

 男は、炎のような形にセットした髪を、わしゃわしゃと掻き回した。相当イラついているようだ。

「津山がいれば、確実に勝てた試合だったんだって!」

「相手校の沢田、欠場だったもんなあ」

 向かいの席に座った男がため息混じりに言って、固い椅子の背にもたれるのを一瞥すると、炎ヘアの男は、だろ? と同意を求めた。

「ったく。無責任もいいトコだぜ。何だよ失踪って。大会中だぜ?」

「失踪なの?」

「らしいぜェ? 俺の友達もサッカー部でさ。そいつが言ってたから間違いなし」

「マジで? 俺、沢田もソレで欠場って聞いたよ?」

「へ? ……何だよ。ハヤリ?」

「ンな訳ないじゃん。けど、何でかなあ。沢田って、スポンサーついて、ますますノッってるって噂だったのに」

「ソレ言ったら津山もだって。ったく、わっかんねー。俺、賭けてたのにぃ。五千円パーよ、パー」

「あのバカども。警官の前で堂々と……」

 賭博とわかり、高瀬が腰を浮かせた時だった。

「ごしぇんえんらとう!」

 グラスを片手に握り締めた女が、千鳥足で近づいてきたかと思うと、ドカンとテーブルにグラスを叩きつけ割り込んできた。

「男がごしぇんえん如きで、ゴチャゴチャ言ってんりゃにゃいよ! あらしにゃんか、にみゃんえんも払ったんらからにぇ! にみゃんよ、にみゃん! ろーしてくれりゅんにゃ! つあまにょバーリョーィ! みるむひー! いぼぢー!」

「うわっ! なんだよ、この女!」


 ごちん。


 泥酔し、呂律の回らないおかしな女は、額から勢い良く突っ伏すと、広げられた夕刊を胸の下にかき集めるかのようにしてグシャグシャにした。かなりご立腹らしい。

「ゲ」

 驚いたのは高瀬である。

「み、ずの……遠子……」

 女のフルネームをぼそぼそと呟くと、慌てて浮かせた尻を沈め、背後にあった衝立を引っ張る。

 が、思いの外重かった。

「クソッ。動けっ」

「なになに? どうしたんですか?」

 高瀬の狼狽振りに柴田はきょとんとし、飯台を挟んだ向かい側では、あの冷静な月見里が、女の顔を見て眼鏡の奥の目を瞬かせ、何度も目を擦っている。

 まるで、信じられないものでも見たかのようだ。

「ちょっと、どうしたんですか、月見里先生まで」

「え。ああ、うん……」

「だー! 畜生! 動けってんだ! この野郎!」

 高瀬は意外に頑丈な衝立に、小声で雑言を浴びせ掛けている。このままでは店内の備品を破壊しかねない。

「高瀬さんてば、衝立が壊れちゃいますよう! 高瀬さんってば! たかっ──」

「バカ! デカイ声で……」

 次の瞬間。突っ伏していた女がむくっと顔を上げた。

「たかしぇ?」

 酒で据わった目が、衝立と格闘する男を捕らえる。

「……。あーー! あああああッ!」

 女は大声を上げると、がばっとテーブルから体を起こして目を見開き、くしゃくしゃになった夕刊を放り投げて高瀬を指差した。獲物を補足した猛獣のように、開かれた目はギラギラとした光を放っている。

「げげっ。しまっ……」

 かなりズレているとは言え、この女は鼻が利く。昨夜まではナメて掛かっていたが、殆どのメディアが「仲間割れ」として事件を片付ける中、この女は自分達より先に御山荘でネタを掴んできているのだ。こうなっては、居丈高な単なる変態女との認識は改めざるを得なかった。

 おまけに非常識。そのくせ後ろ盾は強大だ。出来るなら、これ以上の接触は避けたい。

「たーかーしぇー! みぃーつーけーたーじょぉぉ!」

 泥酔女・水野遠子は、ゆらりと立ち上がると、ゾンビよろしく両手を突き出し、ふらふらとこちらに向かってくる。

 高瀬は犬でも追い払うように手の甲をパッパと何度も上に跳ね上げ、背後から覗き込んでいた柴田を背中に貼り付けたまま、畳の上を後ずさった。

「あっ、あっち行け! 水野遠子! シッ、シッ!」

 しかし、遠子は全く意に介す事無く、のそりと座敷に這い上がると、倒れ込むようにして高瀬の腰に手を巻きつけるようにして抱きついた。

「んふふふふ。つーかーまーえーたぁぁぁぁ!」

「ぶはっ! 酒臭ッ!」

 高瀬はとっさに鼻を覆った。遠子から激しいアルコール臭がしたからだ。

 一体どれほど飲んだのか、酷い酩酊状態だった。女どころか、最早人間を捨てている。そして、笑い上戸らしい。

「ふはははははは」

「ひぃぃぃぃっ!」

「バカ、柴田! おかしな声出すな! くそっ、放せ! 放せっつってんだろ! この変態オタク女!」

 ぎゅうぎゅうとしがみ付いてくる遠子の頭を鷲掴みにし、高瀬は必死に押し返した。それでも、スッポン女遠子は、がっちりと高瀬を抱え込み、放そうとしない。

 だが。

「にがしゅかあー。む……むうううん……」

 おかしな唸り声を上げると、突如、がくりと高瀬の股ぐらに顔を埋め、静かになった。

 不安になった柴田が、恐る恐る割り箸の先で突付いても、ピクリともしない。

「し……死んだんですか?」

「んな訳あるか!」

「文孝……」

 月見里は半ば呆然としていた。

 無理もない。

 高瀬ですら、遠子を見た時には驚いた。この女は──、水野遠子は、あまりに優香に似ている。

 優香は月見里の友人──否、家族でもあった。

 そして、半狂乱となった高瀬から彼女の遺体を引き離し、メスを入れたのは他でもない、彼だったのだ。

 悔しくもあるが、ある意味、高瀬以上に優香の身体の事は月見里がよく知っているだろう。

 それこそ、黒子の一つ一つ。小さな傷の一つ一つ。白く、華奢だった身体の中の事まで。

 少し俯いた月見里の眼鏡は光を反射し、既にその目の表情を窺い知ることは出来ない。

「あー……、あのな」

 高瀬は苦笑を浮かべながら、遠子の頭を押さえ付けていた手で頭を掻いた。

 少し声が上擦ってしまうのは、自分と優香の関係において、彼に遠慮がある所為だろうか。

 気の回し過ぎかもしれない。独り合点かもしれない。そう思いながらも、優香に出会ってからずっと、高瀬は消化出来ずにいた。

 そのくせ、ハッキリさせる勇気もなく、オマケにどちらからも離れられなかったのだから始末が悪い。

「お、驚いたろ。こいつは……」

「文孝」

「お……おう。なんだ」

 ふいに顔を上げた月見里に真っ直ぐ見詰められ、高瀬は股間に酔っ払いを挟んだまま、背筋だけ伸ばした。

 ふうっと吐き出される親友の溜息に、否応無く緊張する。

「な、なんだよ」

「女性の好み、変わったんだねぇ……」

 魂が抜けた。

 が、慌ててそれを引き戻して飲み込むと、高瀬は首の筋が違えるほどに頭を振った。

 この女に、色っぽい感情など欠片も抱いてはいないのだ。

「ちょ、待て。違う。違うぞ! これは……」

「確かに美人だけど……」

「違うっつってんだろ! こいつはブンヤだ!」

「記者なの?」

 言って、月見里は、目をパチパチさせながら高瀬が指差す女の後頭部を見た。最早顔は確認出来ない。高瀬の股間にすっかり埋まっている所為だ。

「ああ。日売の記者だ。ご覧の通りのバカだが、しつこい。その上、タチの悪いことに、カンはいいときた」

 そのタチの悪い女の手を自分の腰から引き離すと、高瀬は容赦無く足で座敷の壁側へと転がした。

 しかし、遠子は一向に起きる気配が無い。それどころか、盛大な寝息をたて始めた。

「えっぷるるるー。えっぷるるるー」

「千昌夫かよ。……寝息までアホだ、コイツ。ホントに総監の娘か?」

「え? 総監って、警視総監の?」

「おうよ」

 遠子は相変わらず、おかしな寝息を立てている。それを見て、月見里は苦笑した。

「これはまた……。気取ったところの無いお嬢さんだねぇ」

「そこか? そこなのか?」

「おまたせっしたあ!」

 月見里の間違った突っ込みどころを指摘しようとした高瀬の目の前に、3つのグラスが運ばれた。

 薄茶は月見里の烏龍茶。一見水のようなものは高瀬の冷酒だ。

 そして

「ななななな……なんですか、これ。青汁?」

 最後のグラスの中の真緑色の液体、と言うより、ペーストに水をさしたようなドロリとしたものに恐る恐る顔を近づけた柴田は、鼻を摘み、文字通り飛びずさった。垂れ下がった目尻には涙すら浮かんでいる。

「ちょ……っ。青臭い上に、なんか物凄いニガイ臭いがし……ウエッ」

「失礼な事言うな。臭いで味まで分かるかよ」

「分かりますよッ! ああああ、ニガッ!」

 実際は臭いで味が分かる訳ではない。だが、柴田のこれまでの経験と、話のタネにと取得した臭気判定士としての実績が、これはニガイ! ひっじょーにニガイですよッ! と警告しているのだ。

「へぇ。敏感なんだ。嗅覚細胞の数が多いのかな。興味深いねぇ」

 過敏な反応に、月見里は興味津々と言った風に柴田を眺め、その視線に柴田は全身を粟立てて、両腕で自分を抱いた。

「だだだだ……ダメです! 僕まだ生きてますから! 解剖しないで下さいよ?!」

「ケチ臭ぇな。診せてやれよ」

「イヤですよ!」

「ケツの穴の小せぇヤツ」

「締りがいいと言って下さい!」

 柴田は顎を上げながら、尻の穴と一緒に、顔をきゅっと引き締めて言った。

「バッカじゃねぇのか。いいから飲め」

「イヤです」

「……飲め。飲んで遅刻を詫びろ」

「イヤですッ」

 プイッとそっぽを向いた柴田に、とうとう高瀬の堪忍袋の緒が切れた。とは言え、柴田が拒否するのも無理はない代物であり、詫びる方法は他にも幾らでもあるのだから、この場合、単なる高瀬の身勝手である。

 しかし、そんな事は見事に棚上げし、高瀬はこめかみに青筋を立てると、グラスを手に柴田を壁へと追い込み圧し掛かった。

「飲め」

「いやっ! やっ……、いやあああっ」

「何、女みてえな声出してんだ! 飲めコラ!」

「おかーさあぁぁぁぁん!」

「あ。カレイの唐揚げ、僕です。焼き鳥はそっち」

 座敷の隅で爆睡する女、襲われる男と襲う男。涼しい顔でカレイをほぐす美形。

 料理の乗った盆持ったまま、呆然と異様な光景を眺め立ち尽くす青年に、びしりと指を突きつけると言った。

「おい、コロッケと出汁巻きも俺んだぞ! それと兄ちゃん。豚の角煮とイカと大根の煮物と、揚げ出し豆腐追加な」

「よ、喜んで」

「あー、ちょっと待った」

 皿をテーブルに乗せ、イソイソとその場を後にしようとした青年を、高瀬は引き止めた。

 グラスを持った手で柴田の胸を押さえたまま、空いた手ですばやくメニューを捲る。

「んー。枝豆ともずく酢と……あと、フライドポテトと焼きナスも頼む。取り敢えずな。取り敢えず」

「喜んで……」

 その割りに嬉しくなさそうである。

「相変わらず遠慮がないね……」

 早足でカウンターへと戻る青年の背中を見送りながら、月見里は溜息をついた。

 何しろ「取り敢えず」だ。あと何度、追加を繰り返す気だろうか。

 「安い」「早い」を優先して正解だった。

「素直なんだよ。貧乏人は正直だからな。『貧乏ホラなし』って言うだろ」

「『貧乏ヒマなし』ですよ! それに、この場合は『面の皮千枚張り』とか『厚顔無恥』……」

 壁に押し付けられた柴田は、高瀬の渋面に口を噤んだ。

「いや、あのー……」

「面の皮千枚に、睾が……金玉に鞭だと? 流石、プレス機にかけたような顔してるだけあって、お前サディスティックな事知ってんな」

「そんな事言ってません。て言うか、プレス機にかけたような顔ってどういう意味ですか」

 糸目がいけないのか。それとも、のっぺりとした日本人顔がいけないのか。

 柴田はぷうっと頬を膨らませた。が、

「細かい事気にすんな。そら、一気に飲め!」

 再びグラスを突きつけられると、口を引き結び、ぶんぶんと頭を振った。

「口を開けろ!」

「んんん! んんーーー!」

「んのやろ……」

 柴田は、頑として口を開こうとしない。すると、高瀬は「こうしてくれるわ」と言うと同時に、柴田の決して高くない鼻を、ぎゅむっと摘んだ。

「むふっ!」

「どうだ。苦しかろう」

 苦しいに決まっている。

 何しろ、そう来るとは思いもしなかった柴田は、息を溜め込んでいなかったのである。

 その為、暫くは黙って耐えていたものの、程なく「んぐんぐ」ともがきながら、目を白黒させ出した。

「んぐぐぐぐ…………んぱっ!」

 空気を求め、鯉のように口をぱくつかせた瞬間を、高瀬は見逃さなかった。すかさずグラスを押し付け傾ける。

「んぐっ!」

 緑色のどろりとした怪しげな液体は、重力に従い柴田の口の中へと流れ込んでいく。

 それを確認すると、今度は鼻を摘んだまま、もう一方の手の平で口を押さえてしまった。

 最早、公僕の公僕による公開殺人である。

「ふぐー! ふぐー!」

 一層苦しげに抵抗した次の瞬間。


 ごくり。


 柴田の喉が上下し、見る間に顔が飲み込んだ液体と同じ色に変った。糸目のアマガエルの出来上がりだ。

「う……うおえーーーッ!!」

 柴田は高瀬を突き放すと、喉を抑え、盛大にえづいた。呼吸し、鼻に抜ける自らの息に、再び気分が悪くなる。

「な……何これ! 飲んじゃっ……マズッ! マズーッ!」

「大袈裟な野郎だな。ヨモギだヨモギ。お前好きだろ?」

「そ……そりゃ、ヨモギ団子とかは好きですよ! でも、そのものが好きな人なんかいます? いないでしょッ? うわー、もう。ニガッ! マズッ! 青臭ッ! ウエェェッ!」

「ウゲッ! 舌出すんじゃねぇ! 気持ち悪ぃな! 真緑じゃねぇかよ! 妖怪か!」

「誰の所為ですか! 誰の!」

「なんだそりゃ! 俺の所為だとでも言いたいのか!」

「その通りでしょ!」

「ヴェホッ! 近づくな! 青臭ッ!」

「にゃんですとぅ!」

「ぷはっ」

 黙って成り行きを見ていた月見里がとうとう吹き出した。眼鏡の下から手を差し入れると涙を拭い、肩を震わせている。

「ああっ、酷い~。月見里先生までぇ~」

「いや、ごめん」

 顔中のパーツを下げて情けない声を上げる柴田に、くすくす笑いながら謝ると、月見里は軽く咳払いをしてから、「でも」と続けた。

「柴田君は、意外と強いんだね」

「は? 強い? そそそそ、そんな事ありませんよ! 僕なんか、ご覧の通りの『もやしっ子』で、スポーツなんかもからっきしですし! あ。でも、相撲は得意かも……?」

「ハァ? 相撲ぉ? お前が?」

「独り相撲。なんちゃって」

「バカだ……」

「けど、何だかんだと、文孝とちゃんと渡り合ってるじゃない。今まで文孝と組んだ人で、そう言う人いなかったよ? ねぇ?」

 笑顔で振られた所で、肯定する高瀬ではない。下唇を突き出し、黙したまま、焼き鳥に手を伸ばした。

「殿は認めたくないようだけどね」

 月見里は、口元に手を添え「ホントだよ?」と付け足すと、ほんの一瞬、片目を閉じた。

 所謂、ウインクと言うやつである。


──うわっ、カッコイイ!!


 柴田は心の中で賞賛した。

 祖母の「バレバレの合図」意外で見たのは初めてだった。

 しかも、祖母のウインクは非常に気味が悪かったが、月見里のそれは実にスマートでカッコイイ。


──お……覚えとこ。


 いつか使うかもしれないと、結局ゴミとなる包装紙を取っておくように、柴田は使う機会の無い、無駄な技術をコッソリ手に入れた。

 お陰で、HPはがっつり下がったままだが、テンションだけはぐぐっと上がる。

 オマケに褒められちゃったのである。柴田は身を捩り、奇声を上げた。

「イヤッハーッ! んもう! そんなッ! 手放しで褒められると、ヨシヒコ、テレちゃいますぅ~!」

「誇張すんな」

「あいたっ」

 勇者ヨシヒコは高瀬に殴られた。

 テンションが下がった。眉も下がった。タンコブの分だけ、座高は上がった。

「くぅー……っ」

「で。話したいことって何だよ」

 頭を抱える柴田を尻目に、高瀬は月見里を促した。

「……大丈夫かな」

 月見里は箸を置くと、ちらりと、壁際でみっともなく大の字になって寝ている女に視線を移した。

 捜査に関わる話だ。その上、彼女は記者だと言う。安易に話す訳には──。

「ああ? あー、コレか」

 言うと、高瀬は再び足で遠子の身体を揺さぶった。

「ゴゴッ! ……えっぷるるるー。えっぷるるるー」

 大きく鼻を鳴らした瞬間は、その場の全員の肩が上がったが、直ぐにあのふざけた寝息を立て始めると、長い溜息が漏れた。

「驚かしやがって……。この変態クソ女」

「寝てる……んだよね?」

「……爆睡してますよ。白目剥いてます」

「そっか。じゃあ……」

 テーブルの上の皿を寄せ、ブリーフケースから取り出した紙の束を広げる。

 それには細かなバーコードのような写真や、大小のXの写真、アルファベットを線で繋いだ図が、沢山の文字に囲まれ配置されていた。

「出た」

 高瀬は顔を顰めた。

 こういった書類は、捜査資料として何度も目にした事はあるが、いつまで経っても慣れない。

 特に染色体のカリオグラムなど、高瀬には「焙って反り返ったタラコ一腹分の魚卵拓を、サイズ順に並べた、マニアックな釣りバカの自慢アイテム」にしか見えないのだ。

「御岳山で出た三体の遺体から、面白いものが見付かったんだ」

 資料の一枚を抜き出すと、月見里は高瀬に渡した。

 だが、とんとその内容が分らない。豚に真珠、猫に小判、ゴリラに広辞苑、高瀬に鑑定書。どれも役に立たないと言う意味だ。

 高瀬は月見里に資料を突き返すと聞いた。

「何だ。面白いものって」

「わかんない」

「なんだよ、そりゃ」

「遺体から採取した微物を分析して貰ったんだけど。所謂、DNA鑑定だね」

「随分早ぇな」

 鑑定には、早くとも三日を要すると聞いたことがある。それがたったの一日で出たと言うのだから驚きだ。

「ゲームソフトを買わされたよ」

「そりゃ悪かったな」

 それで余計に奢りを渋ったのか。高瀬はそんなことを思いつつ、心にもない詫びを入れた。

「で、そのDNAだけど」

「うん」

「有り得ない塩基配列をしてるんだ」

「有り得ない?」

 高瀬は目をぱちくりさせた。

 DNAとは、デオキシリボ核酸、Deoxyribonucleic acidの略称で、アデニン、グアニン、シトシン、チミンの四つの塩基が様々な順序で約三十億個並んでいる。

 この中で一定の塩基配列が何度も繰り返し出てくるのだが、これが人によって違うのである。

 DNA鑑定はこれを利用して個人の判定を行っている。

 また、これを利用して広く動物種別に保存されている「遺伝子を分析したデータ」を元に、動物種を確定する事も出来るのだ。即ち、人獣鑑別が可能なのである。

 しかし、月見里は件の結果がそのデータに当てはまらないのだと言う。

「新種の生物だったりしてね」

「ウ……」

 ソだろ。そんな高瀬の声に、柴田の声が被さった。

「UMAですか!」

「なんだよ、ユーマって」

「Unidentified Mysterious Animal。謎の未確認生物の事ですよ。ネッシーとかイッシーとか、ビッグフットとか」

「はーん。昔藤岡弘が探してたヤツだな」

「そうそう。大概、見付からなくて、結局なんだったの? って終わり方するやつです。て言うか、あれは明らかにヤラセ満載ですけど」

「んで、遺体から出てきた微物も、そのイッシーとか?」

 まさかとは思ったが聞いてみる。が、案の定、月見里は肩を竦めた。

「イッシーは水生生物らしいからね。でもまあ、現存する生物のDNAには一致しないと言うのはハッキリした」

「ひゃー……」

「それだけじゃない」

 月見里は長い指を組み、難しい顔をしている高瀬を正視した。

「実はね。これと一緒に、非常に危険なものが出てきたんだよ」

「危険?」

「ウィルス」

「…………」

「ウィルスと言っていいと思う」

「思うって言うのはどう言うこった」

「これも現存するものに一致しないんだよ」

「じゃあ、逆にウィルスじゃないかもしれませんよね? 例がないって事でしょ?」

「いや。残念ながら、ウィルスの定義に当てはまるんだ」

「定義……ですか」

「うん。ウィルスは、他の生物とは決定的に違う点があるんだ。B型肝炎ウィルスみたいに、極稀に例外はあるけど、基本的には、他の生物がDNAとRNAの二つの核酸を持つのに対し、ウィルスはどちらか一方しか持たない。そして、なにより、細胞を持たない」

「ええっ?」

 柴田は素っ頓狂な声を上げた。細胞を持たない生物など聞いた事がない。

 とは言え、ウィルスが「生物である」と言う認識もなかったのだが。

「ウィルスは、タンパク質と核酸のみで出来てるんだよ」

「じゃ、ウィルス……って言うか、その、人間を病気にしちゃう毒は何処に?」

「う~ん。言うなれば、核酸……かな。例えば、柴田君がウィルスに感染したとする。インフルエンザとかにかかった事あるでしょう?」

「はい。んもう、凄く辛かったです」

「ウィルスは自分でエネルギー生産が出来ないから、宿主である柴田君の細胞が作るエネルギーを奪うんだよ。そして人体に悪影響を及ぼすタンパク質を生成しながら爆発的に増えて行き、それによって君の細胞がダメージを受けるんだ。結果、様々な症状が出る。だから、毒は何かと言われたら、ウィルスそのものである、その一連の働きがプログラムされた核酸と言う事になるね」

「は~、そうなんだ」

「とにかく、ウィルスだろうって事なんだな」

 飯台に肘をつき、月見里の話を右から左と言った風に聞いていた高瀬が、半ば無理矢理に話を纏めに掛かった。高瀬にとって、細かな薀蓄はどうでもいいのである。

「タイプで言えば、DNAウィルスだね」

「タイプって……他に何かあんのか」

「RNAウィルス」

「RNAウィ……ま、いいわ。聞いてもわかんねぇし」

 言って面倒臭げに手を振ると、冷酒に手を伸ばす。

 昨夜千里の家の飲んだ酒に比べると格段に味は劣るが、それでもまずまずの味だった。

「ハー。美味い。この一杯の為に生きてるって気がするよな」

「チープな人生ですねぇ」

「お前に言われたかねぇな」

 柴田の突っ込みに、高瀬はギロリとひと睨みして下唇を突き出し、今度はちびちびと酒を舐める。

 その様子に目を細め、自身もウーロン茶で喉を潤すと、月見里は言った。

「実験をしたんだ」

「実験? どんな」

「微物から取り出したものを培養して、マウスに入れた」

「……どうなったんだ」

「残念ながら、毒性が強いらしくて、直ぐにショック死したんだ。けど、それをまた直ぐに調べたら、培養したサンプルはマウスの中で異常なほどの勢いで増殖していた上に、マウスのDNAを自身と同じものに書き換えてた」

「書き換える?」

「けど、このDNAそのものには書き換える力は無いよ」

「矛盾してねぇか?」

「いや、してない」

 そこで一旦切ると、月見里は溜息まじりに続けた。

「問題はウィルスの方にあるんだ。だからこそ危険なんだよ」

「あー。ちょっと待ってくれ。全然分らん」

 片手で額を覆うようにしてこめかみを押さえ、もう一方の手で月見里を制した時、「おまたせっしたー」と言う威勢の良い声と共に、追加の料理が運ばれて来た。

「おおっ。旨そうだな」

 言いながら、早速揚げ出し豆腐に箸を伸ばす。が。

「文孝、遺伝子組み換え食品を知ってる?」

 言われて直ぐに箸が止まった。

「ああ……豆腐……ってか大豆か。あとなんだ。とうもろこしとか?」

「うん。あれがどういう風に作られるか知ってた?」

 目の前の、汁に浸かった揚げ出しを眺め、暫し考えるも思いつかない。

 高瀬は箸を置くと胸の前で腕を組み、隣の柴田を見た。

「……お前、知ってっか?」

「いえ。大体僕は、遺伝子組み換え大豆使用と書かれた豆腐は口にしません!」

「んな細かいとこ見てんのかよ」

「見ますよぅ。賞味期限もチェックしますし、買う時は奥から!」

「主婦かよ」

 気味の悪い物でも見るように身体を引く高瀬に、生活の知恵。ライフハックですと口を尖らせた柴田は、月見里に向き直ると、興味津々と言った風に質問をした。

「で、どうやって作るんですか?」

「感染させるんだ」

「か、感染?」

「なんだそりゃ」

 思いもよらぬ月見里の答えに、警視庁の問題児とヘタレの刑事コンビは、揃って目を丸くした。その驚きようは凄まじく、柴田の普段まともに見えない眼球が、瞼の間から覗いたほどである。

「ターゲットとするものの細胞に、導入したいDNAを『感染』させるんだよ。ウィルスを使うんだ」

「ホントですか?!」

「風邪のウィルスを使う事が多いらしいね」

「じゃ、豆腐食べたら風邪引いちゃうじゃないですか……」

 言いながら、柴田はちらりと飯台を見た。

 そこにはまだ湯気を上げている、高瀬の揚げ出し豆腐が手付かずのままある。

「その辺は大丈夫。ウィルスベクターと言って、毒になるタンパク質を生成するDNAを抜いた、運び屋としての能力しか持たない状態なんだ」

「ホッ」

「……お前、遺伝子組み換え豆腐は食わないんじゃなかったのか」

「あ。そうでした。でも、これは……?」

「大丈夫。ほら」

 不安げに揚げ出し豆腐を指差す柴田に、月見里は壁の張り紙を指し示した。


──当店は、遺伝子組み換え豆腐を使用しておりません。


「あ。ホントだぁ」

 本当に見えているのか疑わしい程の糸目で張り紙を眺めている柴田の横で、高瀬は冷酒を口に含み、顔を顰めた。折角の冷酒が温くなっていた所為だ。

「んで? 感染させてどうすんだ?」

 屁生温い酒を流し込み、先を促す。

 目の前では、月見里がカラカラといい音を立てながら冷えたウーロン茶を飲んでいた。

「ん。感染すると、ウィルスは取り込んだDNAを細胞の中に入れて複製を始めるんだ。DNAの転写を開始して、固有のタンパク質を作り始める。これが遺伝子の組み替えなんだよ」

「ちょっと待て。ひょっとして、それと同じ事がネズミ……マウスで起こったって言いたいのか? マウスがその……なんだ、由真とか何とか言う……」

「由真じゃなくて、ユーマですよ、高瀬さん」

「ああ、そのユーマと同じものに……」

 月見里は何も言わなかったが、それが何よりの肯定だった。

「マジかよ……」

 高瀬は飯台に肘をついた手に額を押し当てると、盛大な溜息をついた。俄かには信じがたいが、小説や映画でしか起こり得ないと思っていた事が今、現実となろうとしている。

「確証はないけど……。理論上は、このウィルスを使ってDNAを埋め込む事で、クローンに似たものを作り出せると言う事になる。ただ、先に言ったように――」

「毒性が強いんだな」

 高瀬が言葉を継ぐと、月見里は黙って頷いた。

「他に試したのか」

「豚で」

「で?」

 短く聞き返す高瀬に、月見里は頭を振った。

「五分と、もたなかった」

「人間だとどうなんだ」

「うーん。豚の心臓は人間とほぼ同じだから……多分……」

「なんなら、コイツで試すか?」

「ヒェッ!」

 突然、バシリと背中を叩かれ、柴田は情けない声を上げた。

「あ。いいの?」

「よっ、良くありませんッ! 良くありませんよおっ!」

「ゴメン、ゴメン。冗談だよ。でも、多分豚と変らないと思う。余程トレーニングを積んだ人間なら、死に至らずに……文孝?」


────鬼の精は人には強すぎる。傷を受けて感染すれば、殆どの人間は死んでしまうよ。それに耐えられる者はほんの一握りだ。それがまた鬼となるって訳さ。


──柔道部の部長ですよ。長谷川は、オリンピック出場も期待されている選手ですから。


 高瀬の脳裏に、御山荘の静江。そして、千里の同居人、大沢の声が、エコーでも掛かったように鳴り響いた。

 感染る鬼。

 屈強な青年。

 条件は揃っている。

 長谷川英明もあの場にいたのだとしたら──。

 酷く嫌な予感がした。

 早く見つけなければいけない。

 鬼は必ず彼を狙うだろう。いや、ひょっとしたらもう。

 もう──。


「文孝?」

「へ」

「どうしたの?」

「あ、いや……ちょっと混乱してて。整理が……」

「高瀬さんには、ちょっとムズカシイ話でしたもんね」


 ゴツッ!


「っつ~……」

「月見里」

 頭を抱える柴田を、赤くなった拳に息を吹きかけながら一瞥した後、高瀬は月見里に向き直った。

「御岳山のナントカの滝で上がった一二にのまえわかるの遺体。あの遺体から採取した微物と照合できるか? それと、京浜島で出た仏。あれはどうなってる?」

「京浜島の方は外表検査だけで、ちゃんとした解剖も、採取した微物の分析もまだ……だけど……。関連があると?」

「うーん」

 高瀬は一頻り唸ると口を開いた。

「どれもまだ推測の域を出ちゃいないが……。御岳山の件に関しては、一二にのまえわかると手配犯は繋がりがあるようだからな。それに、京浜島も状況が酷似してる訳だろ? なんか……、繋がるような気がしてならない。とにかく何でもいい、物証が欲しい」

 正直な気持ちだった。

 然程離れていない場所で起こった、二つの不可解な事件。そして、それに余りに酷似した凄惨な殺人事件。

 漠然とではあったが、繋がりがあると思えてならないそれらの事件を結ぶ、確固たる証拠が欲しかった。

「そうだね。京浜島の方も僕が診たけど、実際、手口は御岳山と同じだったよ」

「無かったのか」

 この事件を特異な物としている一つが、あるべき肝臓が乱暴に奪われている点だ。

 月見里は嘆息しつつ頷いた。

「うん。メスは入れてないけど、手は……」

「テッ……手手手手手手」

「っせぇな。黙ってろ!」

「……はい」

 柴田は高瀬に一喝され、しゅんと項垂れた。

 しかし、なんとなしに、向かいの月見里の手に目が行ってしまう。

 あの綺麗な手が、血みどろの死体の中を掻き回したのかと思うとゾッとした。

「無かったんだな?」

 柴田に話の腰を折られた高瀬は、何とは言わないままに、月見里に念を押した。

「うん。まだ報道もされていない上に、あれは特殊だ。模倣犯と言う事は考えにくい。文孝の言う通り、恐らく、同一犯だろうね」

 月見里の言うように、現在、京浜島の事件は報道規制が為されていた。「異常者」である犯人を刺激しないようにと、マスコミには伝えてある。報道を見ての模倣は有り得ない。

「とにかく──、京浜島の件も急がせるよ。あと、にのまえ氏の子息の方だけど。御岳山で上がったなら、J大かな?」

「ご名答。確か一週間程かかるって言ってたけど」

「それも何とかするよ。J大の教授なら懇意だ」

「すまん……。頼む」


 ぐーー。


「あ。すみません……」

「お前なあ……」

 重苦しい雰囲気の中、響き渡ったのは柴田の腹の虫だった。

 お陰で、幸か不幸か、高瀬の中でぐるぐると渦巻いていたものが断ち切られ、体中の力と緊張感が一気に抜けた。

「信じらんねぇ」

「しょっ、しょうがないじゃないですかぁ。出モノ腫れモノ、所嫌わずって言うでしょ! ねっ、月見里先生!」

「あ、うん。そうだね。食べようか」

「でも、あの……」

 言いかけた柴田の声は、高瀬の「あーっ!」と伸びをする声に掻き消された。

「腹減った! おい、月見里。醤油取ってくれ」

「あ、あのう……」

「醤油……?」

「焼きナスにかける」

「ああ。あれ? でもどっちだろ。これかな……?」

 調味料は、ご丁寧に揃いの入れ物に詰め替えられていた。

 液体の入った瓶は三つ。その内一つは、薄金色から食酢と思われるが、残りの二つのどちらが醤油か分らない。

「匂ってみ」

 高瀬に言われて、月見里は素直に注ぎ口を鼻先に持って行った。

 その向かいで、柴田は未だ高瀬の肩越しに「あのー」を、ボソボソと繰り返している。しかし、高瀬はそれを無視すると、揚げ出し豆腐を頬張りながら聞いた。

「どうだ? 醤油?」

「ああ、うん。これだこれだ。はい」

「おう、サンキュ」

「あのっ!」

 柴田自身、驚くほどに大きな声が出た。その所為で、店中の客の目が座敷席へと向けられ、視線に耐えられなくなった柴田は亀のように首を竦めた。

「あ……あの……」

「なんだよ、お前はさっきからゴチャゴチャと」

「あの、僕……。まだ、注文してないんですけど……」


 腹の虫が、きゅうっと切ない声を上げた。










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