第10話 道
俺は心地良さを覚えている。何故なら、優しい風達が背中を歓迎するように後押ししているためだ。風達と戯れながら前方に歩みを進めて数分経過する。
「あれか!?」
『ヒューン』
草原の中に違和感を覚える俺は、風達に同意を求めるように声を上げた。回り込む風達は、俺の胸元を横切りながら心地良い音を立てた。心を躍らせる俺はこの場から駆け出し、舞い戻る風達は加速しながら行動を共にする。土の地面だが街道らしき場所を発見する。
「おお! これが、この世界の道か!」
『ヒュン!』
場所の手前で立ち止まりながら歓喜する俺は、進むべき新たな道を発見したと高らかに声を上げた。俺を追い越す風達は、周囲の草花達をそよがせつつ相槌を打つように短く音を立てた。道は、右斜め前方と左斜め後方に続く。
「これが、俺の新しい道だな! だが、どっちに行けばいいんだ?」
『ヒュルーン』
眼下の道を見つめて少しの不安を覚える俺は、それを振り払うように声を上げたあと左右の道の先を目視しながら疑問に呟いた。そよぐ風達は、疑問を連れ去るように一斉に上空に舞い上がりつつ長く音を鳴らした。
「真っ直ぐって言ってたし、こっちだな!」
『ヒュン ヒュン ヒュルルーーン!』
爽快になる俺は、女神の話を思い出して視線を右斜め前方に定めながら力強く声を上げた。上空から舞い戻る風達は、視線の先に纏まりを見せつつ駆け出して正解と言わんばかりに賑やかなメロディーを奏でた。
俺は、新たな道を歩き始める。折り返す風達は、まるで楽しいお家に帰ろうと草原の中をでんぐり返しでバイバイするかのように舞い躍りながら掛けて行く。
「いい風達だったな」
過去を懐かしみ物思う俺は、歩き続けながら右側の草原の中を過ぎ行く風達を見送りつつ感謝の気持ちを込めて呟いた。視線を前方に戻して胸を張る。
「今日って言うとおかしいかもしれないが、春みたいに暖かいな」
ぽかぽか陽気に気付いて心が緩む俺は、思わず不自然に呟いていた。
「太陽が真上ぐらいだな。今は昼頃か?」
優しい暖かさを覚えて更に心が緩む俺は、日差しをかざす左手で遮りながら空を見上げつつ太陽を視界の片隅に収めて呟いた。
「そう言えば、今更気にしても仕方ないが、ここはこの星のどの辺りなんだろう? 女神はその辺の話は特にしてなかったと思うし。なんとなく普段の感覚でいるが…」
不意に浮かび上がる太陽の方角の疑問に戸惑う俺は、姿勢を戻して様々な事柄が抜けていると呟いた。
「まあ、過ぎたことだ。考えるのも面倒臭いし、今はこのままでいこう。この経験は、次の糧に活かせばいいだけだし、シャーもそう言ってたしな!」
開き直る俺は、シャー・アズナブルと感情を共有していると得意気に声を上げた。
「それにしても、人が居ないな…。昼頃だからか?」
非日常な感覚を覚える俺は、思わず周囲を見渡しながら疑問に呟いていた。風達が去り、周囲に静寂が訪れている。孤独を覚え、視線を徐々に下に落としつつ立ち止まる。
「焦る必要はないんだ。この道を、じっくり楽しもう!」
不安が過る俺は、道をしっかり踏みしていめる両足から勇気を受け取りながら決意の言葉を力強く呟いた。視線を上げ、気持ちを切り替えようと遠方の峰を眺める。
「俺は、なぜ山に登るのか? フッ、そこに山があるからさ!」
気取る俺は、ピストル型の右手を顎に当てながら喉を開いて響く低音の声で疑問に呟き、不敵に鼻を鳴らしたあと右腕を峰に格好良く伸ばしつつ名言に哲学的な意味を付け加えて声を上げた。ポーズを決めて悦に浸り、再び歩き始める。
「あの山は、どこから登るんだろうな~。おおっ!?」
ご機嫌な俺は、視線を麓まで下ろしながら呟き、視界の中に人工物が存在することに気付いて唸るように疑問の声を上げた。
「景色ばかり見てたから、気付かなかったな!」
新たな発見と心を時めかす俺は、楽しみなテーマパークに向かうかのように声を上げた。正体を見極めようと歩幅を少し広げる。
「あれは、城門か!?」
好奇心をそそられる俺は、全貌を凝視しながら開園を待ち侘びているかのように声を上げた。歩幅を更に広げる。
「やっぱりそうだ!」
正体は城門や城壁で正解だと歓喜する俺は、歩幅を狭めながら強く声を上げた。凝視をベージュ色の街道に移す。
「ここからは、石畳になるのか」
浮かれる俺は、足下の段差に注意を払いながら立ち止まりつつ呟いた。石畳は、レンガ調でこの場から城門へと続く。そのまま凝視を城門前に移す。
「あっ…、あの姿は…、冒険者か!?」
軽装備の鎧姿のような人物を発見して少しの不安と好奇心を抱く俺は、思わず職業を推理して声を上げていた。
「そうじゃなさそうな人達も居るな!」
好奇心が勝る俺は、思わず人々も推理して声を上げていた。推理は、城門の右側に立つ冒険者と、その冒険者と会話する重装備の鎧姿で右手に槍を所持する門番と、左側で同様な装備の門番と、その門番と会話する住民達だ。
「鎧って、あんな風に見えるのか~」
好奇心が益す俺は、表情をぐへへと崩しながら夢にまで見た自分の鎧姿を妄想しつつ愉快に呟いた。思わず涎が垂れ落ちる。
「おっと。いかんいかん。ここは初めての街なんだから、落ち着いていかないと」
涎に気付いて我に返る俺は、口元を拭いながら呟いた。改めて城門付近を観察する。
「う~ん。混み合ってるみたいだな~…」
葛藤する俺は、思わず腕組しながら手を顎に添えつつ呟いた。続けて全貌を観察する。
「よし! まずは、あっちから見るか!」
状況を察する俺は、視線を右側の城壁に定めてジェットコースターは後回しで観覧車を先に楽しむかのように声を上げた。石畳を歩き始め、途中から草原の中に足を踏み出す。
「迫力が凄いな!」
草原の中を歩きながら徐々に城門の偉大さに気付き始めて感動する俺は、思わず頬を緩ませつつ声を上げていた。そのまま城壁間近まで歩み寄りる。
「こんなの、簡単には壊せないだろうな~」
興奮する俺は、左右の城壁を見渡しながら感嘆の声を漏らした。城壁は、大きな石を積み上げた構造で曲線を描きながら遠方に続く。上部は、所々に監視塔と思われる個所が設けてあり、その場所に弓兵と思われる人物達が立つ。視線を正面に戻して城壁を平手で二度叩く。日差しを受ける城壁は仄かに暖かい。
「壁っていいよな~。ぶち破りたくなるよな!」
興奮が冷めない俺は、称賛しながら右拳を城壁に突き当てて強く言葉を吐いた。静かに佇む城壁は堅固に硬い。頬が緩む俺は、そのまま視線を城壁の上部に向かわせる。
「高さは、結構あるな。6メートル…、ぐらいか」
モンスターに強襲された場合の城壁が活躍するシーンをイメージして益々興奮する俺は、視線を左側に移して門番の背丈から高さを推測して呟いた。城壁を確認しながら後方に下がり、全貌を見渡せる位置で仁王立ちする。
「うんうん。立派なもんだ!」
偉大さに惚れ惚れする俺は、腕組して二度頷きながら自分の所有物を自慢するように声を上げた。
「次は、城門だな!」
満足する俺は、工事の完成を祝福するに声を上げた。腕組したまま意気揚々と街道に戻る。再びの仁王立ちで城門を全貌する。
「上は繋がってるのか!」
興奮する俺は、上部で城門から城壁へ移動する弓兵を確認しながら構造を推測して歓喜に声を上げた。 城門は、城壁と同様なレンガ調の石造り。高さも同様に6メートルほどある。出入り口は、上部がアーチ状で横幅が5メートルほど。城壁と城門は一体型のように見える。
「うんうん。アーチは、やっぱり最高だな!」
再び惚れ惚れする俺は、先程と同様な様子で声を上げた。城門と城壁の完成度に満足する。
「そろそろ行くか! 一応、声を掛けた方がいいよな?」
冒険者が立ち去る姿を確認して意気込む俺は、入場手順を推測しながら疑問に呟いた。心構えをし、右側の門番の下に向かう。
城門と城壁の完成度に満足する俺は、冒険者が立ち去る姿を確認して呟いた。俺は心構えしながら右側の門番の下に向かう。
(けっこう若いな)
「すまない。初めてここに来たんだが」
「ん? ああ、旅人か」
思考しながら立ち止まった俺は、左側を見つめている門番に声を掛けた。疑問に声を漏らした門番は、こちらに振り向きながら気付いたように話した。
「んん? 1人で来たのか?」
「ああ、そうだ」
再び疑問に声を漏らした門番は俺の周囲を目視しながら尋ね、俺はさらりと返事を戻した。
「そんな恰好で…、ってまさか! 犯罪者ではないだろうな!?」
「違うさ。この近くの山の中に住んでいて金がなくなったからギルドで稼ぎたいと思って出て来ただけさ」
「や、山の中!? そんな話、聞いたことがないぞ!?」
「ポツンと一軒家ってやつで自給自足で暮らしてたから殆どの人は気付いてないよ」
呟いた門番は、突然形相を変化させて強く尋ねた。俺は、怪しまれないために門番の思考を混乱させようと情報量を多く含めた内容を早口で話した。驚いた門番は声を上げて尋ね、平静な俺は間髪容れずに説明した。
「んんんんん~…。怪しいか~………?」
(このテクニックとネタは通用しないか? 冒険者の詮索はしないことが異世界の大抵の決まり事だから、これからそれになろうとするやつも詮索されないと思ったが…)
「「う~~~ん………」」
前屈みでこちらを見つめている門番は、新人のように疑問に声を漏らした。少し身を引いた俺は、新人のように視線を逸らして思考した。このあと、俺と門番は互いに一歩後方に下がり、体を横に向けながら腕組しつつ新人のように唸り声を漏らした。
(これじゃあ、団栗の背比べだな。次の一手は…)
「ふう~。まあ、ギルドに登録するならいいよ。それで、問題はなくなるからな」
(おっ? やった! 成功したぞ!)
高みを目指す俺は、程度が低いと自分を恥じながら新たな作戦を思考していた。息を漏らした門番は、こちらに向き直りながら和らいだ表情で話した。見開いた目を門番に向けた俺は、思わず思考しながらこの戦いを制したと言わんばかりに両拳を強く握り締めつつ心の中で勝ちどきを上げていた。
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