第3話 内容


「うーーーん、んっ、んっ!」


 俺が女神に女子高生の制服を着せた姿を重ねて見ながら良からぬ企みを巡らせる中、女神は清々しい表情を見せつつ背伸びしてテンポ良く声を漏らした。


(なんだ。いい顔できるじゃないか…)


 少しだけ目を丸くした俺は、絶世ではなくて女子高生でもない無垢な素直さを垣間見て思考した。


(初対面が最悪だと、次からはいいとこしか見えなくなるって言うしな…)


「「はあ~」」


 戸惑いながらも心が浄化された俺は、過去に耳にした言葉を思い出して前向きに思考した。続けて、もどかしさを覚えて溜息を漏らし、同時に女神はゆっくり腕を下ろしながら気持ち良さげな吐息を漏らした。


「お互い、堅苦しい話し方はやめましょ。私もこっちの方が楽だし、あなたも普段通りでいいわよ」


(今度はそうきたか!)


 左手を腰に添えた女神は、右手でこちらにもリラックスするようにと促しながら話した。間延びした口調からの変化とその提案に意表を突かれて戸惑う俺は、思わず身をたじろがせつつ思考していた。


(あ~…。なんかもう、色々考えてるのがアホらしくなってきたな…)


 虚しさのような感情を覚えた俺は、左側に顔を向けながら右手で頭を掻きつつ思考した。


(まあ、いいか)


「で。俺はいったい、何をすればいいんだ?」


 感情が平静に戻り始めた俺は、割り切るように思考した。続けて、視線を前方に戻しながら尋ねた。視界に女神は映らない。


「あれ?」


 驚きと不安を覚えた俺は、思わず自分の目を疑いながら疑問の声を漏らしていた。そのまま体はよろけるようにして前方に傾く。胸元に何かがぶつかる。


「うおっ!?」


 視線を胸元に向けようとして女神に気付いた俺は、思わず心拍数を跳ね上げながら体をのけぞらせつつ声を上げていた。


(瞬間移動!? 移動しただけ?)


 驚きを隠せない俺は、俯き加減で直立している女神を見つめて困惑しながら思考した。


(いやまあ、それはいいとして…)


 再び感情が平静に戻り始めた俺は、他のことを気にして思考した。女神の髪の分け目から覗く頭皮を見下ろしながら後方に一歩下がる。


「ど、どうかしたのか?」


 戸惑う俺は女神の頭部を見つめて尋ねた。女神は返事を戻さない。そのままの姿勢でそっと俺の両手を片方ずつ握る。


(今度は、何をする気だ?)


 怪しむ俺は、感情の起伏が激しいために表情が安定しない中で女神を疑問に見つめて思考した。女神は、握る両手をゆっくり自分の胸元に引き寄せて優しく握り合わせる。俺が一歩下がった距離を詰めて顔を少し上げる。俺の喉元を見つめ、そのあと更に顔を少し上げる。こちらに体を預けてつま先立ちし、儚くも優しくもあるキラキラと潤む二つの瞳を上目遣いにする。俺の顔に向けて瞳を見せつけるかのように必死に近付ける。そして、


「私の世界に、本当に行ってくれるの?」


 猫撫で声を上げた。


(狙い過ぎだ! それに! 密着し過ぎと顔が近い!)


 瞬間に狂おしく愛おしさを覚える俺は、このような女性に関わるとろくでもない事しか起こらないと過去の経験則から判断し、尚且つこのような女性が嫌いなためにそれらは逆効果だと全てを拒絶するように苦言を呈そうとするが、先程の一連の行為は流石女神と言ったところで非常に魅力的かつ摩訶不思議な力の影響のためかそれを許さず、仕方なく歪ませた顔を更に引きつらせながらのけぞらせつつ思考した。


(こ、これが、女神の力なのか!? だが! 俺は慎ましやかな女性が好きだ!)


「なっ、内容次第だ!」


「わっと」


 色香と死闘を繰り広げる俺は、己の信念を貫いて思考した。続けて、体を左に逸らしながら女神の手を振り解きつつ色香と摩訶不思議な力も振り解いて声を上げた。女神は前のめりによろけながら声を漏らした。そのあとキョトンとした表情でこちらに振り向く。


「なんだ、その顔は?」


「おかしいわね~。普通は、私の言い成りになるはずなのに…」


「はあ~。さっき、俺に何かしたんじゃないのか?」


「ええっ? う~ん…。あっ、そうだったわ。忘れてたわ」


(何をしたかは知らないが、少し頭が抜けてそうか?)


 不満を覚えた俺は、渋い表情で尋ねた。体制を戻して腕組した女神は、俯きながら顎に手を添えて疑問に呟いた。女神が負荷と話したことを覚えている俺は、思わず溜息を漏らして呆れて尋ねた。驚くように顔を上げながら声を漏らした女神は、唸るようにしたあとさらりと返事を戻した。女神の力を疑う俺は、それ以前に性格が重要だと女神を観察しながら分析しつつ疑問に思考した。


「内容…」


(いっ!? 今から考えるのか…)


 俯きながら顎に手を添えた女神は、ぽつりと呟いた。その言葉に意表を突かれた俺は、驚くと同時にある意味分析通りだと判断して残念かつ溜息を漏らすように思考した。首を傾げる女神はぶつぶつと呟き始め、首を左右に振る俺はつくづくと呆れ始める。女神は、たった今閃いたかのように顔を上げる。非常に嬉しそうな表情を浮かべて小走りでこちらに迫り寄る。


「内容は、私の世界を回って冒険するって感じでどうかしら!?」


 女神は、先程と似たようにして俺の両手を握り合わせながらこちらに体を預けてつま先立ちし、今回は俺の顔に向けて得意気な表情を必死に近付けて歓喜に尋ねた。


「そ…、そんなんでいいのか!?」


「ええっ!? だ、だって…。何かがありそうなんだけど、まだ何の手掛かりも掴めてないし…」


「手掛かりがないからって、女神がそれでいいのか!?」


「だ、だって…。仕方ないじゃない…」


 一連の行為よりも話の内容を気にした俺は、思わず女神を体で押し戻しながら声高に尋ねていた。後方に数歩よろけた女神は、叱られたと感じたためか俯き加減で体を左右にねじるように揺らしながら弱々しく返事を戻した。その様子を見て苛立ちを覚えた俺は、再び思わず声高に尋ねていた。女神は、まるで拗ねた子供が小石を蹴るように何も存在しない地面を蹴りながら返事を戻した。


「はあ~…」


 俺は、無意識のうちに肩と視線と溜息を大きく落としていた。そのまま虚無に囚われ始める。


(もしかすると、心のどこかでこの女神に、何かを期待していたのかもしれないな…)


 拒否権が存在しない摩訶不思議な力で無理やり感情を平静に戻された俺は、視線を女神に移しながら認めたくない自分の弱さを突き付けられて思考した。女神は未だ拗ねるようにしている。


(世の中、そんなに甘くないってことだな…。それなら…)


 自分の弱さを受け入れた俺は、歯を食いしばりながらそれを次の糧にと前向きに思考した。ゆっくり姿勢を元に戻し、しっかり二本の足で白い大地に立った。



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