第13話 スキルと技と可能性
「それじゃあ、始めるわね。まずは基本的なことからだけど、ちゃんと話を聞いてね」
「わかった」
「宜しい。最初は、日にちについてよ。これを間違えると依頼の失敗にも繋がるから、しっかり覚えてね」
(日にちか。やっぱりこれも違うんだろうな。だが、こんなことは、この世界の人間なら常識のように思えるが…)
「まずは、1年って言うのは12か月に分かれてて、1か月は30日あるの。だから、1年間の日にちは360日になるの。それでね、1週間って言う分け方もあって、それは7日間でできてるんだけど、こっちには1日ごとに曜日っていうのが付いてるの。曜日は週の初めが日曜日で、そこから、月、火、水、木、金、土曜日になって、また日曜日に戻るの。それと1年の中には四季って言うのもあって、春、夏、秋、冬に分かれてて、だいたい3か月ぐらいで変わっていくの。ここまで一度に話したけど、内容は大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ」
「あら、そう。結構知らない子が多いんだけど、ルーティはしっかりしてるのね」
(結構知らないとは、やはり文化の違いか? まあ、それは今はいいか。だが、地球と似てるんだな。おかげで、一発で覚えられた)
講習を開始したマリーに返事を戻した俺は、次の再び子供を見るかのような微笑みを浮かべての話に疑問を持ったが、続けてのややこしい話に即答した。すると、マリーが目を丸くして背筋を伸ばしながら呟き話をしたが、俺はまだまだ余裕のよっちゃんだった。
「それなら次の、年齢と大人についての話をするわね。これは知ってると思うけど、冒険者登録ができる15歳からは大人として扱われるようになるの。だから、ルーティはもうお酒も飲めるし、自由に行動できるわ。だけど、周りからそういうふうに見られるようになるから、さっきの日にちの事は必ず覚えておかないといけないの。そうしないと待ち合わせができないし、そのせいでクエストが失敗とかになるからよ。失敗すれば勿論その人とか周りの人から信用を失うし、そうなると、酷い時は次のクエストを受けさせてもらえなくなったりするから、信用を失うような行動には十分に気を付けてね」
(なるほど。女神からも聞いてたが、この世界では本当に15歳から大人になるんだな。それに、大人としての立場や待ち合わせの考え方は日本と変わらないみたいだし、これならすぐに馴染めそうだな)
「わかった」
マリーがこちらの様子を窺いながら先程とは違い念を押すように話したが、俺は視線を外して思考を纏めたあと、マリーを真っ直ぐに見つめ直して返事を戻した。
「うん。大丈夫みたいね。それなら、冒険者のランクについて説明するわね」
(おっ! いよいよ、冒険者らしい話を聞けるのか!?)
頷いたマリーの話に、俺は漸く本題に入るのかと若干心を躍らせる。
「ランクはね、下から言うと、G、F,E,D,C,B,A,S,SS,SSSってなってるの。ちなみに、今のルーティはFランクね」
「ん? Fの下にGがあるのか? それなら、なんで俺はGじゃないんだ?」
「Gランクはね、15歳未満の子供で、どうしても身分証明が必要な時にだけ使ってるの。このランクだとクエストが受けられないんだけど…、普通の冒険者には関係ないから、あまり気にしなくてもいいわよ」
(ふむ。どうしても必要な時にか…。まあ、一応覚えとくか)
早速、話し始めたマリーに俺が尋ねると応えようとしたが、一旦俯いてそう話を纏めた。俺は大したことではないと判断したが、一応これはギルドのルールなために頭の片隅に残しておくことにした。
「あと、Fランクからはクエストを受けられるんだけど、そのままだと薬草採集とかウルフの討伐ぐらいしかできないの。ランクが上がればもっと凄いものもできるようになるから、これは少しずつでもいいから上げるようにしてね」
(ランクで、受けられるクエストが変わるのか。少し面倒臭そうだが…、これも仕方ないか)
「わかった」
続けたマリーの話もよくある内容なため、俺はそのままこれを受け入れて返事を戻した。
「それじゃあ、お待ちかねの、スキルの話に移るわね」
(遂に来たか!)
「ウフッ」
(あっ。しまった…)
一呼吸入れてからのマリーの話に俺は内心で大いににやけていたが、マリーが声を漏らして笑ったためそれが表情にまで出ていることに気付いた。しかし、そのまま顔を背けたあと素知らぬ振りをする。
「スキルは、初級、下級、中級、上級、特級、超級、神級、神話級って分かれてるわ。そうね~。例えば、剣術スキルの初級とか、火魔法の初級とかね。それと、これにもレベルがあって、0から9で覚えられるものを初級スキルって呼んで、10から19のものを下級スキルって呼ぶの。普段は分かり易いように、レベルで話をしてるけどね」
(んんん? スキルには2種類の分け方、と言うか、呼び方があるのか…。少し分かり難いが、これも覚えるしかないか)
マリーの話で俺は眉間に皺を寄せたが、これを頭の中に叩きこんだ。
「あと、覚え方は、そのスキルの系統の技を使えばいいの。技は、剣術スキルならダブルスラッシュ、火魔法ならファイアボール、てことね。話がややこしいかもしれないけど、これは失敗しても覚えられるから色々試してみてね」
「わかった。だが、そのスキルの系統とか技っていうのは、何があるんだ?」
「沢山あるんだけど、全部を説明してたら時間がいくらあっても足りないから、今は一般的なことだけを話すわね。系統は、物理的なものだと、剣術、槍術、槌術、杖術、弓術、体術、二刀流と盾術があって、魔法だと、火、水、風、土、光、闇、空間があるわ。このそれぞれに技があるんだけど、それは向こうに図書室があるから、あとで調べてみて」
マリーは最初はさらりと説明したが、俺が尋ねるとそれを付け加えて終わりにタウンターの奥にある棚の並ぶスペースに顔を向けて腕で示した。
(あそこで調べられるのか。それに、ここまでは大体ゲームと同じだな)
「それと、これはルーティにはまだ少し早い話になるんだけど、スキルとかはここの図書室で調べられるものだけじゃないの。ここに無いものが他の街にあったりするから、興味があればその辺りも調べてみて。他にもね、自分で技を見つけたりとか、ドロップ品のスクロールから覚えれたりもするの。皆で使う技なんかもあって、属性の関係とかもあるから、スキルはとても奥が深いって覚えておいて」
(これは…。内容が、濃すぎるな…)
図書室を確認しながら余裕を感じていた俺だが、続けたマリーの話にこの世界のマゾさを垣間見た。しかし、
(だが、これはやり出すと、燃えそうだな!)
俺はこの手のものは結構好きなため、闘志を燃やした。
「残りは技の使い方なんだけど、基本的にはその技名を口にすれば発動するわ。無詠唱にしないのは周りの人を巻き込まないことと、発動の失敗を防ぐためよ。だから、使う時には色々と注意してね」
『ガタンッ!』
「はあっ!? 初めから無詠唱ができるのか!?」
「えっ。ええ、できるわよ。ほら。こんな風にね」
続けたマリーの話に、俺は思わず立ち上がり声を張り上げていた。戸惑った様子を見せたマリーは言葉を詰まらせながらも話を続け、そのあと人差し指を立てて無詠唱で指先に小さな火を灯した。
(素晴らしい! いや、いかん。落ち着け俺。失敗するかもしれないんだ…)
「ルーティは面白いわね。それなら、これも驚くかしら? 最後の話になるんだけど、スキルはどんなものでも覚えることができるって言われてるの。だから、誰でも全てのスキルを使える可能性があるのよ」
(………。誰でも、全てのスキルを使える!? んんんんん!? これは…、いい事なのか、悪い事なのか? どうなんだろう…?)
それを見た俺は感動したが、すぐさま感情を落ち着かせた。そして、無詠唱を使用した妄想を膨らませようとしたその時、マリーが楽しそうに話をした。俺の時間は一時停止したが、そのあと視線を外してあらゆるケースを想定する。しかし、この無限の可能性の回答を得ることはできなかった。
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