第3話

「俺の荷物は、こんなものですね…」

「彼女にどんだけ優しいんだよ」

「いや、彼女が買ったものだから、俺のじゃない」

「なるほど」

「使いこなせるか知らんけど」

「な、なるほどぉ…」

 彼女は料理が出来ない。いや、作ろうと思えば作れるけれども、破滅的な腕前の持ち主。

「まぁ、次の彼氏さんが使いこなせるようになるでしょ…」

築島つきしま、お前って…」

「冷たいって言いたいんでしょ?」

「いや、その…意外としっかりしてて、隙がない…」

 言葉と行動が伴ってないんですけど?!

樋野ひの、近い…」

「あぁ、ごめん…。これ、築島のでしょ?」

 それはいつぞやかに樋野から貰ったデジタル置き時計。日付と気温が表示されるのでテレビのないこの家では結構重宝していた。それは俺の、か…。

「うん…」

「忘れないでよ。酷いな…」

「忘れてたわ。俺、酷いな…」

 ははは、とお互い笑って、荷物の中に放り込んだ。

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