第2話

 それは朝の出来事。

 そして、仕事しながらお部屋探し。なので、まぁ…同期に見つかる。

「あれ…?」

「はい…?」

 とぼけながら、仕事に専念するフリをした。けど、バレバレである。

「俺の家、来ない?」

「行きません」

 同期の樋野ひのは、事あるごとに俺を口説く。

 気があるのかないのか。いや、あるんだろうな。でも、俺…同性に興味ないんだよな。

「家、探してるんでしょ?」

「そうですよ」

「じゃあ、俺のところに来ればいいんじゃない?」

「遠慮します」

 彼女にフラれて傷心で、何かしらのマチガイがあってしまうような気がしてならない。

「いつでもおいで」

「………?!」

 か、鍵?!正気か!!樋野!!

「要りません」

「今日あたり、男連れ込むんじゃない?」

 その予感はしてるけど、言わないで…。落ち込んじゃう…。

「課長~、築島つきしまが体調悪いので自宅まで送ります~」

「そ、そういうんじゃ…」

 樋野が一番考えたくないこと言うから…。溢れ出るものが出るだけで!!

「いいよ。有給休暇で処理しとくね」

「あ、ありがとう…ございます…」

 課長の懐の深さに、惚れてしまう…。

「課長には感謝するんだな…」

「樋野もありがとう…」

「『も』じゃないでしょ…」

 樋野、ありがとう…。

 言葉にならない声は、樋野の手を握ってお伝えした。

「行こうか…」

 樋野は柔らかい表情で優しく言うから、思わず頷いてしまった…。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る