Premonition

第1話

「あ…」

「ん…?」

 何か言いたげな彼女に、首を傾げる。

「何でもない…」

「そう…」

 冷めた二人の間には、距離がある。

 見た目以上に、心の距離はもっとずっと遠い。

「今日は遅くなるからご飯いらないよ」

「それは助かります。ありがとうございます」

 もう会話も他人以上に他人行儀な会話で、別れの言葉はすぐそこまで来ている二人である。

「……ごめん」

「ん…?」

 謝られても…。

 謝られるようなことを仕事の帰りにするってことですね。この前見た可愛いヒトとデートなんだろうなってことくらいしか思い浮かばない。

「あの…」

「はい」

 婚約指輪をおもむろに外し、彼女の前に突き付けた。

「え…?」

「レスなヒトと結婚する気ないから」

 決定的な言葉と行動で、別れを告げた。

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