第21話 2010年11月15日
三人の小旅行が終わり、しばらく心の中が空っぽになった感じだった。
こんなときに限って仕事は暇な日々が続いた。
仕事が忙しければ仕事に打ち込めるのに・・・
昼休みになった。
社員食堂に行くと、森さんが食事をしていた。
森さんは私に気づくと手を振ってこっちこっちと目の前の席を指さしている。
私は軽く会釈して今日の定食を持って森さんの前の席へ座った。
「お疲れ様!」
『お疲れ様です』
「最近、どう?」
『え?べつに何ともないですよ~」
森さんみたいに・・と言いかけたけど言葉を飲み込んだ。
でも、森さんは誰にもバレないのだろうか?
もう3年付き合ってると言っていたけど、外では普通に会うみたいだし自宅にも連れて行っている。
『あの~森さん・・』
「なに?」
『森さんは誰かにバレたことないんですか?』
と小声で聞いてみた。
「あ~、一度エレベーターでねw」
『エレベーターで?』
「エレベーターであれと二人きりになったことがあって、それでキス(小声)してたらエレベーターの扉がちょうど開いてね・・・」
『見られちゃったんですか?』
「すぐ、離れたけど見られちゃってたかもなぁ・・・確認できないじゃない?」
『そうですけど、やばくないんですか?』
「うーん、やばいよねw」
いや、笑い事じゃないでしょ・・と内心思っていたけど黙って聞いていた。
ここの会社は不倫が横行していると聞いたことがあるが、やっぱりみんな感覚が麻痺しているのかもしれない。
定時になり、私はまっすぐ家へ帰った。
「おかえり!」
今日は旦那が休みだから子供と一緒に出迎えてくれた。
『ただいま』
子供は可愛い盛りだ。
旦那も何も文句を言わず育児もできる限りの家事も手伝ってくれる。
そう、私は幸せ者だ。
なんとなく今日はその普通の風景が胸に突き刺さった。
子供を寝かしつけして、リビングに戻ると旦那が一人ビールを飲みながらテレビを見ていた。
「寺田さん、異動するんだって」
寺田さんとは旦那と同じ職場の人だ。
『あ、そうなんだ、急だね』
旦那が仕事の話をするなんて珍しいなと思いながら聞いていた。
「うん、なんか同棲してた彼女に浮気されちゃって・・・その相手が同じ職場仲間なんだよ」
『えっ!?』
「そう、だから自分で希望出したみたい」
『あ、そうなんだ』
「なんか、浮気とか気持ち悪いよな。俺、絶対無理!」
『そ、そうだよね。。』
私は複雑な気持ちで旦那の話を聞いていた。
そう、私も気持ち悪いことをしてしまったのだ。
ごめんなさい・・・
と、言えなくてごめんなさい。
それなのに、私はまた何かしでかそうとしていた。
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