第20話 2010年11月6日
今日は土曜日。
細川、森カップルと岩井さんのところへ行く日だ。
今日も仕事だと言って親に子供は預けてきた。
こうやって、私はどんどん嘘を重ねていくんだな・・・
罪悪感がないと言えば嘘になる。
でも、それ以上に私は周りが見えなくなっていた。
市内のショッピングモールに来た。
二人との待ち合わせ場所だ。
間もなく、二人は姿を現した。
「おはよう!」
『おはようございます。
今日はすいません。』
と、一応細川さんに謝った。
「いいんだよ~全然!」
と、一人楽しそうな森さん。
完全に旅行気分だな。
車は私の車だ。
岩井さん家は高速で1時間ほどの結構名の知れた観光地だ。
運転は細川さんがしてくれると言ってくれた。
交通費は全て私持ちなのは当たり前。
こんなに交通費を叩いてまでやることなのか?
本当に馬鹿だな。
でも、やるだけやりたかった。
「じゃー行くか!」
と、細川さんの合図で私たちは岩井さん家を目指して走り出した。
高速に乗ると、森さんからの質問攻めにあった。
「彼とはどうやって知り合ったの?」
『あー、入社したときに本社で研修があって、そのときに知り合ったんです。』
「あ~、なるほどね!」
「彼の年齢は?」
『一回りぐらい上だったかなぁ・・』
「なんだよ、じーさんじゃねぇか!」
と、いきなり話に割り込む細川さん。
いや、あなたより若く見えますよ・・と心の中で思った。
「ねぇ、そんなにその人がいいの?バツイチなんでしょ?」
『まぁ、そうみたいですよね。
いいのかって言われると分からないですけど・・・』
私もどうしてこんなに執着してるのか分からなかった。
ただ、もう一度あのドキドキ感を味わいたかった。
「会社にはいい人いないもんねぇ」
と、いう森さん。
いや、そんなこと言ってもあなたは会社の人と、しかも既婚者と付き合ってるじゃないですか・・・
「柏木さんは!?」
と、いきなり言い出す森さん。
『え??柏木さんとあまり話したことないし・・
あの人、あまり会社でも喋ってるところ見たことないんですけど
”もしもし柏木です”っていう声しか聞いたことないですよw』
「あはは!確かに柏木さんはあまり喋らないからな!
でも、俺の先輩だからな!」
と、細川さんに念を押された。
先輩には敬う人なんだなと思った。
しばらくして、目的のインターまできた。
そこに住んでるのはわかっているけど、住所とかはわからない。。。
「で、どこら辺なの?」
『いや、それはわからないんですよね・・・』
「まぢで!?」
『とりあえず、電話してみます。』
私は岩井さんに電話してみた。
ツーツー。。。
着信拒否されてしまっていた。
LINEもブロックされている。
『着拒されてるみたいなんです』
「じゃー、私がかけてみる!」
『すみません、お願いします。』
私は森さんに岩井さんの番号を教えた。
森さんがかけると、呼び出し音がなっているようだ。
すると・・・
「もしもし?」
岩井さんが電話に出たようだ。
「あ、私○○会社のパートをやってる者なんですけど、西田さんのことでお電話しました。」
「彼女のために一度、会ってもらえませんか?」
「いや、そんなこと言わずに・・」
「あ、ちょっと、待ってください!」
「もしもし??」
ツーツー・・・
切れてしまったようだ。
「ごめん、トモちゃん、会わないって言って切られちゃった。」
『いえ、そうなりますよね・・・
電話してくれてありがとうございます。』
「じゃー、家探すか?」
『え?でも、どうやって??』
「大丈夫、うちの会社に顧客リストがあるから」
そう、私の委託先は生活には欠かせないあのエネルギーを提供している会社なのだ。
「名前が分かればたぶん出てくるから。
後輩が土曜出勤でいるはずだから電話して住所聞いてやるよ。」
『は、はぁ』
私は個人情報をこんな形で知っていいものなのか?と思ったけどお願いしてしまった。
こんなことバレたら大変なことだ。
「うまく利用するもんだな!あははw」
と、細川さん・・・社員さんですよね?と少し不安に思った。
細川さんは後輩に電話して岩井さんの名前とだいたいの住所を伝えた。
すると、わかったようだ。
「よし、わかったから行ってみるか!」
『すいません。こんなことまでさせてしまって』
「大丈夫だって!」
そう言って、細川さんは車を走り出した。
しばらく走ると、それらしき一軒家が見えてきた。
門を見ると「岩井」という文字が書いてあった。
あ、ここだ・・・
でも、岩井さんの車はなかった。
私たちは家が見えるところに車を停めて帰ってくるのを待ってみることにした。
まさに張り込みだw
「いや~、ついにきたなぁ」
『本当にすいません!』
「いや、いいけどさ~
で、会ってどうする気?」
『うーん、とりあえず連絡が取れないから話をしたいと思って・・・』
そう、私もノープランだ。
ただ、会いたかっただけだった。
それからどのくらい経っただろうか・・
辺りが暗くなってきた。
そろそろ帰らないとマズい時間になってきた。
「どうする?トモちゃん?」
『もう、いいですよ、お二人にも悪いですし
これで諦めがつきました!』
「おまえがそれでいいっていうならいいけどさ・・」
『いいんです!今日はありがとうございました。遅くなっちゃうし、帰りましょう!』
二人はなんだか複雑そうな顔をした。
「わかった、じゃー帰るからな?」
『はい!今日はありがとうございました。』
そして、私たちは帰路についた。
これでよかったんだ。
そう、自分に言い聞かせた。
ただ私は助手席から高速を走る流れる景色をボーッと眺めていた。
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