第17話 2010年10月30日

時計は24時を回った。


最初は毛塚さんを自宅まで送った。

閑静な住宅街に毛塚さん家はあった。

「ありがとう!また来週ね!おやすみ!」

と、毛塚さんを見送った。


次は私の家に送ってくれるそう。

私の家はみんなと違って隣の市のため少し距離がある。

車の中で他愛の無い話が続けられている。

「ところで、トモちゃんが言い寄られてる人って誰なの?」

と大沼さんが振ってきた。

私はえーっといいながらも、二人になら話したい衝動に駆られていた。

『驚かないでくださいね?』

と、言ってスマホの細川さんとのLINEのやり取りを見せた。

『じつは、この人なんです!』

と、私は森さんは運転中なのでドキドキしながら大沼さんに見せた。


ん??

反応が何も無い。


しばらく沈黙が続いた。

『え?やっぱりマズいですよね?』

沈黙に耐えられなくなって私は口を開いた。

「森・・・これ・・・」

と、森さんを見る大沼さん。

その光景が私にはわからなくて、ただ二人を見ていた。

そんなことをしている間に私のアパートの駐車場に着いた。

『あ、ありがとうございました。』

すると、森さんは・・・

「あのさ、細川さんとはそういう関係なの?」

と聞いてきたので

『いや、最近やり取りをしているだけで、つきあってるとかそういうんじゃないんですけど・・・』

「そう・・・」

『やっぱり、よくないですよね?』

「いや、この際はっきり言っとくけど・・・実は、私細川さんと付き合ってるの」


え?????


私には森さんのその言葉の意味が最初わからなかった。

『どういうことですか?』

「もう、3年ぐらいになるかな?最近、おかしいと思ってたんだ」

と少し複雑そうな表情の森さん。

全然気づかなかった。

『あ、そうだったんですか・・・』

としか、言えなかった。



しばらくの沈黙のあと、

『あの、ほんとに私は何もないんで・・ごめんなさい、何も知らなくて』

と謝った。

一度デートしたことがあったけど、黙っていた。

『でも、森さんは独身じゃないですか?いいんですか?』

「うん、わかってるけどさ・・・」

歯切れの悪い森さん。

それを黙って聞いている大沼さん。

きっと、大沼さんはこの二人の関係は知っていた。

私のことも気づいてたのかな・・


なんだろう・・・

この気持ち。

どこにも当たれない。

ショック・・というか、なんというか。

森さんは見た目凄く真面目そうでそんな風には見えない。

全くのノーマークだった。

今聞いても信じられない。


「あいつ!!ほんとに懲りないんだから!!」

と、怒る森さん。

なんだか何も言えない。

裏切られたというか、なんというか・・・

騙された?

いや、違う、一人で盛り上がってただけだ。

馬鹿みたいだ。

こんなことなら、岩井さんに何も言わなければよかったな

と、後悔している自分がいた。



”二兎追う者は一兎をも得ず”


まさにその言葉がピッタリだ。

自分の愚かさに笑えてきた。


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