第9話 2010年10月1日

 入社して一ヶ月が過ぎた。仕事には随分なれた。他のグループの女性陣とも仲良くしてもらっている。

 

 でもこの委託先に来て思ったのが、凄く緩い会社だな・・・と。ここは日本では知らない人がいないほどの大企業だ。ちゃんと働いてる人はちゃんとしてるけど、この会社の上司は

「どこの店がうまい~」

「ここの店がうまい~」

など、ほぼ食べ物の話ばかりしている。そんな話が聞こえてくると、ちゃんと仕事をしている私たちは少しイライラする。私たち委託は、それでもペコペコするだけだ。他の下請け業者も来るとその上司に向かって同じくヨイショするだけだ。これで高給取りなんだから正直頭にくる。大企業なだけでこんなにも生き方が変わるのか・・・


 

 家に帰り、いつものように夕ご飯の準備をしているとスマホが鳴った。私は岩井さんだ!と思いながらスマホのいつもの画面を開いた。すると、そこにはいつもの違う名前が・・・!?

ほ、細川さん!?

急に何??

あ、でも飲み会の時に連絡先を交換したんだった。本当に連絡が来ると思ってなかった私は戸惑いつつメッセージの部分を開いた。

「お疲れ~!また、飲みに行こうぜ!」

と、飲みのお誘い。

『お疲れ様です。そうですね、またみんなで行きましょう^^』

と返事をした。

すると、すぐスマホが鳴った。

「今度の金曜大丈夫?」

とりあえず予定は無かった私は

『大丈夫です。メンバーは誰ですか?』

「この前の女性陣には声かけたから、あとは柏木さんでも誘ってみるよ^^」

そんな返事がきた。

『了解です!』

今度の金曜か・・・私はカレンダーに”飲み会”と記入した。

カレンダーを眺めているとまたスマホが鳴った。

「ほんとは二人で行きたいけどな!」と、細川さん。

はい!?

この人は何を言ってるんだ??

頭が疑問符だらけになった。

でもただの社交辞令かもしれないし。

『あははー、奥さんに怒られますよ^^」

と、返事をしておいた。

そんな返事をしておいて、私はハッとした。

私も旦那に怒られるような事をしていることに。

他人ひとにとやかく言える立場では無い。

そんなことを考えていると

「冗談、冗談w」

と細川さんから返ってきたので私は少しホッとした。


ぼーっとスマホを眺めているとまたLINEが届いた。

「お疲れ様!仕事は順調か?」

岩井さんだ。

『順調ですよー』

「そろそろ会いたいな・・」

と、岩井さんのメッセージを見てどきっとした。

『私も会いたいです』

岩井さんの家と私の家は70キロぐらい離れている。

同じ県内だが、端と端なのだ。

遠距離恋愛なのかな・・・・

っていうか、私たちはつきあってるのか?

どういう関係なのだろう?

怖くて聞けない。

ふと、大沼さんの言葉が頭によぎった。


   遊び


そんなはずはないよな・・

私はその言葉を頭から消そうとした。

でも、なかなか消えてくれない。

恋愛経験が少ない私にはわからない。

わかるのは私は岩井さんに夢中になっているということだけだ。

信じてる。

私にはそれしか出来なかった。

でも、私はいったい何を求めているのだろう・・・


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