ネコ探偵
ひぐらし ちまよったか
ネコ探偵・マタナイ
――ご主人が
頭の上にカリカリが
名前は『マタナイ』……『ネコ
ネコ探偵の吾輩の元へ、ひとつの
依頼者は五丁目のたまご屋の『たま子』さん。
ちなみに
「――うちの『
どうやら旦那さんの『かきえもん』さんの、
――旦那さんに対して『宿六』とは……そうとう『おかんむり』のご
もうだいぶ大きくなった三匹の娘ネコを、おなかに並べてプリプリ怒っている。
(そんなに
「かきえもんさんに限って、浮気は無いんじゃぁ……?
「分かったもんじゃないわヨ!? あのネコ『
「……そうかなぁ……? やさしい、
――このままでいても、たま子さんの
五丁目のくだもの屋『ロッキー』の、
(……ニオイから
そう思っていたところへ、店先にうずたかく
おもての通りを
その
(……出て来たか? この先は……七丁目かな?)
吾輩は、ヤレヤレ気が重い……と、かきえもんさんの
かきえもんさんが入っていったのは、七丁目の
(はて? ここには確か……)
『せきね』には『おんな
肉屋で
その
――浮気の相手としては……かきえもんさんには『
(こりゃぁ……何かワケありだな?)
店の
店の
――
その
(ふむ……浮気……ってカンジじゃ無いよなぁ?)
まるで『
「……ああ、もういいよ、かきえもん、ありがとう……そろそろ店の方へ行っとくれ?」
みんちが体を起こし、『ハコ
「あ、はい。わかりました」
かきえもんさんはペコリと、みんちに頭を下げて縁側をとびおり、こちらへとやってきた。
(――ヤバ!)
吾輩は、あわてて
――肉屋の店先まで来たかきえもんさんは、みんちがいつも陣取っている、カウンターの
「お!? 今日も『
肉屋のご
「にゃ~!」
かきえもんさんは
(……ははぁ~ん……だいたい分かったゾ……)
まじめにジッと店番を続けるかきえもんさんを、ほほ
(お? あいつら……?)
通りの向こう
――カウンターに出ているご亭主が、奥へ引っ込むのを待っているのだろう。
吾輩のいる場所からは丸見えなのだが、かきえもんさんは気が付いていない……なにもない通りをにらみ続けたままだ。
(まったく……くだもの屋の『お
吾輩はコッソリまだ庭で
(みんち……
「――みんち
「? マタナイじゃないか……? 探偵ってのはそんなことまで分かっちゃうのかい? やらしいヤツだねぇ」
「いや……さっき、かきえもんさんが姐さんの腰を、もんでやってるのを見かけてね?」
「ああ……アイツ『もう良くなったよ』って言っても聞かなくってね? まいにち腰をもみに来ちゃあ、そのあと店番まで代わってくれてサ……」
「へえ? なんでまた店番まで?」
「あたしがたま子ちゃんに
「へぇ~っ……いいネコだねぇ?」
「おかげでスッカリもとどおりサ……もうそろそろ店に戻ろうか? って思ってたところだよ」
「ああ! そりゃぁ、
「? なんだい?」
「店の前に『ごろつき』が二匹、来てるみたいだよ? かきえもんさんじゃあ……
「! うふふ、そうか? そうだねぇ……チョット
「――な!? なんだお前らっ!!」
「そこどきな? 坊っちゃん! やっとオッサンが引っ込んだんだ!」
「へっへっ……お前みたいな『やさおとこ』、
「ふ、ふざけるなっ! ぼ、ボクは、この店の……よ、用心棒だ!!」
「なら! ためすかい!? 用心棒さん!?」
「いくぜ!? 坊っちゃん!!」
「く、くそぉ……!!」
「――フシャァォオオオッッツ!!」
みんちの怒りの
「う! うわあ!?」
「ひゃ!? べ、弁慶ッ!?」
店の脇から通りに
「ひ、ひ……ひ!」
「うっ……! うは……」
「……いいだろう……ためすか!? おいっ!!」
「うわ~!!」
「に、にげろっ!!」
ごろつきどもは
(さすが『おんな弁慶』だ……迫力が違うぜ……)
「――だいじょぶか? かきえもんさん」
吾輩は今だ
「は、は、はい……え? マタナイさん……?」
「ああ……たまたま通りかかってね? とんだ
「すまなかったね? かきえもん……こわい思いさせちまった」
みんちが寄ってきて、かきえもんさんに頭を下げる。
「あ、いや、ボクの方こそすみませんでした! ぜんぜん
「……なに言ってる? あんたが毎日うちへ来て、腰をもんでくれたり、店番を代わってくれたから、あたしはスッカリ
「そ……そんな……」
「――おお!? みんち? 子分がもう一匹、増えたのか!? すごいな、おまえ!」
店の奥からカウンターに戻ってきたご亭主が、吾輩の
――吾輩、子分では、ないのだが?
ご亭主の
「ニャ~ン」
その巨体にまったく似合わない、かわいらしい声であまえる。
「おう? そうか! 子分が
ご亭主はカウンターの中から大きなソーセージを一本とりだし、みんちに
カウンターから
「ほら、かきえもん……出産祝いだ……これが欲しかったんだろう? 今日までありがとうよ」
「え? で、でも……」
かきえもんさんが吾輩をチラリと見た。
「わ、吾輩いらないよ? 何もしてないし、通りがかっただけだし……子分でもないし……」
「あ、ありがとう……うち、『くだもの屋』だから……こういうのたま子に食べさせてあげられなくって……」
「ほら! もってってやりな!?」
「はい! ありがとう! みんちさん!!」
そういってかきえもんさんはソーセージを咥え、たま子さんのもとへ
「たま子ちゃんにヨロシクな!」
送るみんちの声はかきえもんさんに
そう思いながら吾輩とみんちは、ほそい路地へ消えていく、かきえもんさんの後ろ姿をみつめていた。
――吾輩は猫である。名前は『マタナイ』。
――ご主人がおさらの前にすわった。待たずに皿へと首を入れ……。
にゅるにゅるにゅる……。
「あ! こら! マタナイっ!!」
「にゃ!!」
し……しまった……好物の『カリカリ』ではなく、ネコ大好き『ちゅるちゅる』であったか……。
「ああん! もう!! ベトベトじゃない!!」
「にゃ」
「おふろよ! いますぐに!!」
「にゃ!? にゃぁっ!!」
――名前は『マタナイ』……せまい
―――― 了。
ネコ探偵 ひぐらし ちまよったか @ZOOJON
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