柏木陽菜の独白

決意と叛逆

 長い眠りから目覚めた私の兄――柏木新也は、相変わらず寝坊助なお兄ちゃんだった。


 『妹が10人に増えている』なんて状況に、当たり前だけど酷く混乱していた。

 でもすぐに落ち着きを取り戻して、表面上は普段通りに振舞おうとしているみたい。

 本当に、と変わらない見栄っ張りなお兄ちゃん。


 でも……変わりすぎてしまった私には、きっと気付いてくれないと思う。


 見た目も態度も口調も、何もかもが変わっちゃったもんね。

 これで「お前が陽菜だろ」って見抜いたら、凄いどころの騒ぎじゃないよ。


 ……けど、気付いてくれなくたって、私は別に構わない。


 お兄ちゃんの傍で、お兄ちゃんを見守ることができるのなら、それで満足なんだから。毎日「おはよう」って挨拶できれば、それだけで私は救われる。


 不満なんてありはしない。これは私が自分で選んだ道。

 『この世界』では、あんな悲劇は二度と繰り返させない。

 どんな犠牲を払ってでも。全ての真実を隠しても。


 たとえ、神様に逆らうような行為だとしても――。




「今度こそ……お兄ちゃんだけは、幸せにしてみせるからね」




 を見上げながら、私は何千回目かの誓いを立てた。

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