柏木陽菜の独白
決意と叛逆
長い眠りから目覚めた私の兄――柏木新也は、相変わらず寝坊助なお兄ちゃんだった。
『妹が10人に増えている』なんて状況に、当たり前だけど酷く混乱していた。
でもすぐに落ち着きを取り戻して、表面上は普段通りに振舞おうとしているみたい。
本当に、以前と変わらない見栄っ張りなお兄ちゃん。
でも……変わりすぎてしまった私には、きっと気付いてくれないと思う。
見た目も態度も口調も、何もかもが変わっちゃったもんね。
これで「お前が陽菜だろ」って見抜いたら、凄いどころの騒ぎじゃないよ。
……けど、気付いてくれなくたって、私は別に構わない。
お兄ちゃんの傍で、お兄ちゃんを見守ることができるのなら、それで満足なんだから。毎日「おはよう」って挨拶できれば、それだけで私は救われる。
不満なんてありはしない。これは私が自分で選んだ道。
『この世界』では、あんな悲劇は二度と繰り返させない。
どんな犠牲を払ってでも。全ての真実を隠しても。
たとえ、神様に逆らうような行為だとしても――。
「今度こそ……お兄ちゃんだけは、幸せにしてみせるからね」
月を失った星空を見上げながら、私は何千回目かの誓いを立てた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます