第7話
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昔から雨が好きだった。雨の音は嫌なものを全部隠してくれるから。嵐のような雷雨は全てかき消してくれた。優しい小雨は癒しをくれた。気まぐれな天気雨は色んな顔を見せてくれた。人と関わることが苦手な僕に、雨は色んなことを教えてくれた。だから僕は雨が好きだった。
「…………」
一人になった公園で、そんなことを思い出した。
「…………」
雨はどうしてあの時、ビルの屋上にいた。
「…………」
なんで僕に、あんなゲームを持ち掛けたんだ。
「…………」
どうしてあんなに楽しそうだったのにいきなりこんな話をしたんだ。
「彼女は…」
そうだ、そういうことだったんだ。
「僕は…」
考えがまとまった瞬間、僕はもう走り出していた。目的地はもうはっきりしていた。深夜の街、暗い闇を切り裂く勢いでただ走っていた。肺が痛い、全力疾走なんて子供の時以来だ。身体が熱い、酸欠で頭も少しぼーっとしてきた。足がもつれて、地面に叩きつけられる。痛みで起き上がれない。つらい、耐えられない。なんで僕がこんなに苦しまなきゃいけない。痛みが怒りを連れてくる。挫けそうだ、そう思った瞬間、首に冷たいものが落ちる。
「雨…?」
夜雨が、降っていた。君を飲み込んだ黒い夜空から冷たい雨が降っていた。
「っ……」
痛みに耐えながら立ち上がる、この冷たさが火照った体を冷ましてくれる。大きく息を吸ってまた僕は走り出した。
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