第6話

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ただ歩いているだけなのに凄く時間が長く感じる。雨は何も言わずに、ただずっと僕の袖を引いて進んでいる。明らかに様子がおかしい、そう思いながらもそれを口に出すことは出来なかった。

「キミは…さ」

不意に立ち止まると雨が口を開いた。

「キミはさ、今日、楽しかった?」

言葉の意味は理解出来た。しかし何故そんなことを聞くのか、わからなかった。

「私は凄く楽しかった、こんな風に誰かと遊ぶなんて初めてだったから」

意外だった、きっと普段からそう言う事に通じた、僕と真逆の人間だと思っていた雨からそんな言葉が出てくるとは思ってもいなかった。

「私がこんな事言うと思ってなかった、って思ってるでしょ」

「また、テレパスか?」

「どうかな、きっと、テレパスじゃ無くてもわかったかもね」

そう言う少女の姿は、名前の通り雨のように、まるで全て隠してしまう様な冷たさすら感じさせた。

「……………」

僕は何も言えなかった、目の前にいる雨がまるで、あの時柵を乗り越えた自分と重なって見えてしまった。

「あぁ、ごめんね、困らせるつもりは無かったの、今日は本当に楽しかったから」

目を合わせられない。自分の想像が現実になってしまうような気がしてしまう。

「…じゃあ、さよなら」

そう言うと雨は、俯いている僕の横を通り過ぎた。振り向くと彼女は既に、暗い夜に飲まれて消えてしまっていた。

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