第3話

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一悶着終えてビルを出る。少し歩いてから、先に口を開いたのは彼女だった。

「そういえば名前、聞いてない」

言われてみればそうだ、確かにお互いにまだ名乗っていないことに気づく。

「テレパスなんだろ、それくらい分からないのかよ」

さっきの問答の腹いせに皮肉で返してやると彼女はじっ…と黙ってこちらを睨んでいる。また少し歩いてから空気に耐えきれず先に口を開く。

「…空だよ、宇内 空」

「空…いい名前だね」

素直に褒められると変な意地を張ったせいでちょっと恥ずかしくなる。

「私は音無 雨、よろしくね」

「あぁ、よろしく…」

差し出された手を握り返すと、雨はニコッと笑う。照れくさくなり直ぐに手を離した。

「それで、これからどうするんだ、僕としてはさっさと満足させて解放してもらいたいんだけど」

「うーん…じゃあまずは、あれかな」

雨の指さした方向は、ゲームセンターだった。小さい頃から勉強詰めの僕には縁遠いもので、一、二回程しか入ったことが無い。しかし早く解放される為にはそんな事も言っていられない。

「わかった、じゃあ行こうか」

自動ドアが開いた瞬間の喧騒に少し体が跳ねた。そのまま店内に2人で入っていく。

久しぶりに来たゲームセンターには知らないものが多かった。まるで別世界に入り込んだ様な感覚は、少しだけ鼓動を速くさせた。

「ねえ、あれやろうよ」

雨の声で意識が現実に戻される。目線の先にあったのはエアホッケーだった。

「あ、あぁいいよ」

いきなり声を出したから少し震えていた。それを悟られないようにエアホッケーの台に百円玉を入れた。雨も対面に立つと、台は動き出してパックが出てくる。

「負けた方がジュース奢りね!」

「えっ!」

スパァン、と気持ちのいい音がした。雨の方の得点板には一ポイントの字が浮かんでいた。

「卑怯者!」

「集中してない方が悪いんだよ!」

少しムッとするが、この程度で腹を立てていたらおそらくこの先もたないだろう。パックを置き直しゲームを続ける。まあいい、たかが一点、まだゲームは始まったばかり、ここからが勝負だ。

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