沸き上がる憎しみ

次の日、目が覚めた俺は、洗面所で顔を洗った。


仏壇の前に行った。


「ごめんやけど、許してくれ」


二人にお願いした。


ピンポーン


インターホンが鳴って、家をでた。


「snsで、一個下の七海ちゃんに聞いたら、佐々木の住所わかったよ。」


心春が、玄関開けたらってきた。


「これいるんやろ?護身用にもっとるやつ貸したるわ」


そう言ってナイフを渡してきた。


「電車めんどいからタクシーな」


「高いやん」


「俺が出すし、行くで」


そう言われて家の鍵を閉めてでた。


ナイフをポケットにしまう。


タクシーに乗って、秋帆があの街の佐々木の住所を言った。


「七海ちゃんって誰?」


「芸能活動してる時に繋がった子で、僕達の歳の子と結婚してる。佐々木は、一組やったから七海ちゃん、一組の人と結婚してるから知ってたよ」


「へー。中学入ってから佐々木の事なんか忘れとったわ。」


「佐々木は、三年間ずっと一組だったみたいだよ。七海ちゃんの旦那さんも、三年間ずっと一組で佐々木とは友達だって」


「へー。そうなんやな」


「俺は、1組から、2年で2組やったわ。」


「俺は、ずっと3組やった。」


「僕は、2組から3年で1組になった。懐かしいね」


そう言いながら心春が笑ってる。


いい思い出なんかないと思ってたのに、二人と一緒に居た日々ばかりが浮かんでくる。


「中学は、嫌な思い出しかなかったか?」


「そう思ってたのに、なんで二人とおった日しかでてこんのやろ?」


「それが、おもろかったからやろ?」


「そうそう。それが、楽しかったんだよ。」


あっという間に、佐々木の家の前で下ろされた。


「二万六千なんぼって言われてる。」


秋帆は、現金で普通に払ってた。


佐々木って書かれた一戸建て


インターホン押そうとした俺達にお腹の大きい女の人と5歳くらいの女の子が声をかけてきた。


「うちに、何かようですか?」


俺は、何も言えんくて


「佐々木君の同級生なんやけど、久々に会いたなって」


「主人は、仕事で、今日は夜しか帰ってきませんよ?」


「そうやんね。当たり前ですね。」


「七時にはいますから、また来てもらっていいですか?」


「はい、そうします。」


秋帆は、そう言って俺を引っ張って歩く。


涙が、流れて止まらなかった。


二人は、近くの公園のベンチに俺を座らせた。


「カラオケでも行く?時間、まだまだやで、10時やで」


「本当やね」


どうしたんとか聞いてこないのがこんなにも楽なの忘れてた。


「クズ、死ね、殺したる」


俺は、そんな言葉を繰り返しリピートしてた。


自分でもとめられなかった。


「ほんまやな、あんな事しとる人間やつがハッピーエンドって神様はおもろい事しよるな」


秋帆が、大笑いしだした。


「クズは、幸せになれて何にもしてないはずの僕達はなれないんだね。」


心春も笑い出した。


俺は、そんな二人を見つめてた。



「アーハハハ。ごめん、ごめん。腹痛なってきたわ。アホらしい。あんなん殺ってもなんもならんわ。地獄に落としても落としても、どんだけ殺ってもたりんわ」


ダンッて、ベンチをどついた。


笑い声から怒りにかわってく秋帆を見てるしか出来んかった。


「僕が、殺るわ。確実に殺ってやるから、なぁ、美月」


心春の顔が笑顔から、一瞬で冷酷な顔にかわった。


「なんで、そんな優しいねん」


俺は、ベンチから立ち上がって地面をダンダン蹴りつけた。


立ち上がって秋帆と心春が、俺を抱き締めた。


「当たり前やろ?好きな奴が大切にしてるもんは俺も大切に決まってるやんけ」


「奪われて苦しくて辛いなら、奪ったらいい。それで、心が救われるなら手伝うから」


「なんぼでも殺ったる。いっそのこと全員殺ったろか?もう、今日で終わらせようや。この街にきたんやから、俺が終わらしたんで」


「美月の手は汚したら駄目。お母さんもお姉さんもお父さんもこっちゃんも悲しむよ。秋帆も同じ。だから、僕が殺るから。どうしたいか言ってくれたら確実に殺るから…」


俺は、二人の言葉に泣いた。


中学の時に囚われてる俺を見てるのが、二人はもう嫌なんや。


重い鎖に繋がれて動かれへんから、切ったるつもりなんや


心の中の石が、固まって岩になったのを必死でどかしてくれようとしてる。


俺は、二人に全身で甘えてしまおうとしてる。



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