奈美姉ちゃん

マンションについた時、奈美姉ちゃんが立っていた。


「おかん、教えたんか?」


「昨日、しつこう連絡きたからついな。」


「アホちゃうか」


奈美姉ちゃんは、俺とおかんを見てる。


おかんは、鍵を開けて家に入ってく。


奈美姉ちゃんが、怒ってる。


「こっちゃんの命日、忘れてたん?今日かて、お父ちゃんの命日やで」


「わかってるよ。今から、するから」


奈美姉ちゃんは、お花とケーキの箱とビニール袋を下げてる。


「座り、お茶いれるから」


そう言われて、荷物をダイニングに置いた。


「こないだの月命日に、お墓に行ったらおばちゃんにおうて、お母ちゃん一度もいってないって聞いたんやけど。みっくんも行ってないんやろ」


「うん。こっち越してきてから、正月しか行かんなった。後は、お墓参り代行に頼んどる。」


奈美姉ちゃんの顔が、怒りの色に染まる。


「あんたら二人は、酷い人間やな。昨日かてこっちゃんの命日忘れてたんやろ」


奈美姉ちゃんが、泣いてる。


おかんは、黙ってお茶いれてる。


「奈美姉ちゃん、俺。こっちゃんとおとんのお墓にいかれへんねん。」


「みっくん、言わんでええの」


おかんは、俺を止めた。


「おかんは、悪ないねん。悪いのは俺やねん。俺が、10年前におかんにお墓に行きたくないって言うてん」


「なんで、そんなん言うんよ。」


「俺が、こっちゃんもおとんも死なせてしもたからや。」


奈美姉ちゃんは、言ってる意味がわからないって顔をしていた。


おかんは、奈美姉ちゃんにお茶を出した。


「みっくんやなくて、お母ちゃんが死なせてしもたんや」


お母ちゃんは、そう言ってダイニングに座る。


「お母ちゃん、あの日な、こっちゃんがトイレ言うて起きてきた時に話したんや。」


俺と奈美姉ちゃんは、驚いた顔をしておかんを見てる。


「5時頃やったわ。こっちゃん眠たいってフリして目擦っとったけど。目が真っ赤やった。お母ちゃん、こっちゃんに寝れてないんやないのって聞いたんや。でも、こっちゃんは眠ってた言うてきた。こっちゃんが、お母ちゃんあのな言うてそれ以上話さへんかった。」


そう言って、おかんはお茶を飲んでる。


「お母ちゃん、頭痛いから、もう一回寝るで言うたら、こっちゃんが、抱きついてきて、私、幸せやで、この家族が大好き。だから、これからも笑ってなって、いつも言わん事言うなって思っててん。」


そう言ってお母ちゃんの目から涙が流れてくる。


「こっちゃん、起きたら映画でも行こか?言うたら、こっちゃんがわかった。て言うた後でな。みっくんと奈美姉ちゃんに、ごめんねってお母ちゃんからっててくれへんってうから、喧嘩したんか?って聞いたら首を横にふってな。ほんなら、こっちゃん自分で話たらってったら、自分は喋られへんからって笑ってうんよ。」


おかんは、お茶を注いでまた飲む。


「何、うてんの?って聞いたら、もう寝るわ、おやすみって行ってしもた。変な事、うなって思ったんやけどな。お母ちゃん、頭痛薬飲んでたから寝てしもてん。」


おかんは、そう言って泣いた。


「こっちゃん、自殺やってってたんはそれのせいなん?」


奈美姉ちゃんが、泣いてる。


「ちゃう。もうええな、こっちゃん、お父ちゃん。もう、ええやろ?話して」


おかんは、仏壇に行っておとんとこっちゃんに言ってる。


「何か、こっちゃん残してたん?」


奈美姉ちゃんが、泣きながらおかんを見てる。


「残された私等は、ようさん苦しんだもんな。もう、22年も経つから本間の事話さなアカンな」


そう言って、おかんは自分の部屋に行った。


「みっくんは、知ってたん?」


「知らんよ。何も知らん」


「こっちゃんは、自殺やったん?」


「おかんは、時々話してたけどな。」


そう言ったら、おかんが箱を持って現れた。

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