おかんと帰宅

おかんが、「ありがとう、ありがとう、また来るわな」言うて泣いてる。


店員さんは、おかんの事覚えてるから、「また、絶対来てくださいよ」って言っていた。


おかんとタクシーに乗った。


駅に戻ってきた、俺は、ロッカーからおかんの荷物を持った。


「さっきのみっくん、お父ちゃんみたいやったわ」


おかんは、嬉しそうに笑てる。


「はずいから言わんとってくれ」


「何でよ、お母ちゃんめちゃくちゃ嬉しかったんよ。久々にお父ちゃんといるみたいやったわ」


「腕組むなや」


「組むわ」


おかんが喜んでるなら、ええわ。


昔みた本の1ページに、人は突然愛する人を失うと自責の念にとらわれてしまう。と書いていたのを思い出した。


だったら、おかんは、おとんやこっちゃんの死を自分の責任やと思っているのではないだろうか…


「あんな、おかん。姉ちゃんが死んだんな」


「みっくんのせいやないよ。こっちゃんは、事故なんや」


おかんは、そう言って俺の腕を引っ張る。


「おかん、姉ちゃんが会わしてくれたんかな?」


「ヒーローか?」


「うん。昨日、命日やったやろ」


「そやな、どんな35歳の女の人やったかな。こっちゃん、結婚してたかな?名前も変えれるようなって幸せに笑てたかな」


おかんをまた泣かせてしまった。


「結婚して、子供もおって、俺やおかんの事より大好きな人が出来て、毎日幸せに笑てるわ。」


「せやな。あの世でお父ちゃんほったらかしにされてるな」


「そうや。」


おかんは、笑いながら泣いてる。


「みっくんをヒーローに会わせたんは、こっちゃんや!こっちゃんは、誰よりもみっくんの幸せを願っとったから」


おかんは、俺の顔をジッーと見て笑ってる。


「おかん、俺が女の人やないひとを好きになったら気持ち悪いと思うか?」


「それは、男の人が好きって事か?」


「そうやな。例えばやけどな。」


おかんは、少し考えてから俺に笑いかける。


「みっくんが、人を好きになる、一緒に生きて行きたい人を見つける、お母ちゃんそれだけでええわ。だから、男でも女でもお化けでもなんでもええわ。誰かを愛してくれるだけで、何もいらん。だって、お母ちゃんいつまで生きてるかわからんのやで。一生一緒になんて、おられへんのやから」


そう言っておかんは、手首につけてる紐触ってる。


「そやな、俺が先かもやで」


「みっくん、それ言わんといて。お母ちゃんより、先になったらお墓にいれへんからな」


「なんやそれ!酷いな」


「当たり前や!みっくんは、お母ちゃんより一日でもなごう生きるんや!」


そう言ってまた、手首に巻いた紐を触ってる。


「おかん、それ切れたら願い叶うやつやろ?」


「こっちゃんが、卒業式の日にくれてん」


「知っとるよ。みんな持っとるから」


「みっくんは、財布にいれてたな!お母ちゃんは、ずっとつけてんねん」


「それ、何回も切れてるやん」


「そやで、その度針と糸でつなげてんねん」


「願い一生叶わんな」


そう言ったら、おかんが泣いてしまった。


「ごめん。」


「一生叶わんのよ。お母ちゃんが、こっちゃんにつけてもらった願いわ」


俺は、おかんが何を願ったのか知らなかった。


「ごめん、何願ったか知らんかったから」


「気にせんでええよ。ただ、家族みんなで元気にずっと笑っていれますようにって願っただけや」


そう言っておかんは、立ち上がった。


俺も、立ち上がった。


最寄りの駅で、降りた。


おかんと並んで歩く。


あのよう当たる占い師は、おらんかった。


「おかん、姉ちゃんがくれたミサンガ一生つけとけよ」


「わかってる。」


「ちぎれても繋げてもっとけよ。」


「わかってる」


そう言って、おかんは俺の腕をギュって強くもってる。


俺は、こっちゃんのかわりにはなれない


でも俺、おかんの為にちゃんと生きるから


だから、俺と奈美姉ちゃんとおかんの三人は、頑張って生きような




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