天羽秋帆
小学校の区域から、中学は別になっていた。
俺は、ずっと煩わしさから友達もいない生活をしていた。
5歳離れた兄貴が居るだけで、充分だった。
「秋帆、また告白されとんか?」
「
「また、男子に嫌われるな」
「うん」
小学一年生から、女の子にモテてた俺は、男子からずっと嫌われていた。
別に誰にも好かれたいなんて思ってなかった。
家に帰れば、千帆兄とおかんとおとんがいるそれだけで幸せだったし、何もいらなかった。
中学生に上がっても、何も期待してなかった。
入学式の日、二組に入っていく男の子を見た。
女みたいだけど、どこか芯があるやつに見えた。
俺は、一組だったけど…。
そいつが、どうしても気になった。
初めて、話しかけたいって思った。
帰り道、誰かを玄関でずっと待ってるそいつを見つけた。
話しかけた。
一緒に帰ってくれるかと聞いたら、帰ってくれた。
やっぱり、めんどくさくなさそうなやつだ。
その理由がわかったのは、俺に男が好きだと話した時だった。
俺は、何が好きで嫌いかなんてちゃんとわかっていないのに美澄はちゃんとわかっていた。
美澄の芯を作っているのは、それなんだとハッキリわかった。
自転車がきて、引き寄せた。
ひかれてもいいなんて、言うなよ。
俺は、美澄と一生友達でおりたい。
公園で、美澄と話したら親が最低なやつだとわかった。
美澄がどこか、寂しそうな雰囲気を出してるのはそのせいなのがわかった。
そんなやつ、こっちから捨てたらいいねん。
心春って呼んでくれと言われたから、心春になった。
それから、俺は心春といるようになった。
「やっと
「千帆兄、なんでや?」
「最近、帰ってきてからも俺の所にけーへんから」
「できた。かわってるけど、ええやつ」
「秋帆、大事にするんやで!初めて仲良くなりたいやつやったんやろ」
そう言って、千帆兄は笑ってくれた。
俺は、やっぱり心春を大事にしようって決めた。
心春から、助けて欲しいやつがいると聞いた。
その表情を見て、そいつが好きなのがわかった。
何をされているか、わからんけど…。
助けてやろうと、決めた。
相談された次の日、心春に言われた通りの時間にトイレにやってきた。
個室トイレの一つの扉がしまってる。
数人が、小さな声で話しているけど…。
何を話しているか、よくわからなかった。
コンコン
「なんや、隣いけや」
ここでやめたら助けられへん。
ゴンゴン
足も手も使って、扉を叩いた。
「うっさいな」
ガチャって、扉が開いた。
異様な光景。
6人もはいってるのか?
「なんやねん」
一人が、でてきた。
「うんこしたいから、でろや」
「隣あいてるやろが」
もう一人が、でてきた。
「紙ないから、邪魔やどけ」
俺の言葉に、残り三人もでてきた。
「邪魔すんなや」
「は?こっちは、何十分うんこ我慢してると思っとんじゃ」
俺の言葉に、「こいつ、頭いかれとるわ」って全員いなくなった。
「お前も、でろ」
便器の角でしゃがんで座ってる。
これが、心春の好きなやつや。
「あのさ、でてくれんかったら漏らすんやけど」
「でも…」って泣いてる。
あっ、わかった。
されてた事が、何かわからないけど…。
そこがそうなったんやなってのは、わかった。
「動かれへんのか、動きたくないんか、どっちか言うてみ」
「動きたくない。見られたくないから」
頬に涙が、流れてくる。
「そうか、じゃあ臭くても我慢やな」
ガチャ…
俺は、個室トイレの扉を閉めた。
別に、うんこがしたかったわけじゃないから、こいつが落ち着いたら出たらいいか。
俺は、便器の上に座って目を閉じていた。
授業の始まる合図が、聞こえてきた。
いつまで、いんのかな?
ずっと、泣いてるで
何されてるんかな?
聞いたら、悪いよな。
俺は、また目を閉じた。
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