大丈夫や、気にすんな

秋帆君は、俺の顔を自分の方に向けた。


「恥ずかしいんか?」


俺は、頷いた。


「大丈夫や、気にすんな」


そう言って笑ってくれた。


「こんなん、でたことなくて」


俺は、ずっとドキドキしてた。


「今まで、付き合ってきてもなかったんか?」


「うん。」


「へー。なんか、嬉しいな」


照れ臭そうに頭を掻いてる。


「ずるいよ。次は、僕」


「はい」


そう言って、俺を心春君の方に向けた。


秋帆君は、俺に背中をくっつけて座った。


「いくよ、緊張しないでね」


そう言われて、頷く。


心春君が、優しく唇を重ねた。


「ふぅんー」


また、鼻息がもれてしまった。


唇を離されて、俺は下を向いた。


「恥ずかしいの?」


うんって頷く。


「顔、あげてごらん」


そう言って、顔をあげさせられた。


「もうちょっとしてみる?」


俺は、ゆっくり頷いた。


頷くと、心春君がまた唇を重ねてくれてさっきより深くキスをされる。


「ハァ…」


次は、息がもれた。


「可愛いね」


そう言って、笑ってくれた。


心春君の優しいキスに頭の中は、とろけていた。


背中をくっつけていた秋帆君が、俺をくるりと自分の方に向けた。


「ごめん、俺ももう少しさせてくれんか?」


俺は、頷いた。


心春君は、さっきと違って背中にくっついていた。


秋帆君が、ゆっくり唇を重ねてきてさっきよりキスを深くする。


「ハァ…」また、息がもれてしまった。


心春君とは違う、強いキスに頭の中がジーンとする。


俺は、恥ずかしくてうつむく。


「にんにくが、勝ってるね。アハハハ」


そう言って心春君が、笑った。


「初めてのキスは、にんにく味やね。」


そう言って秋帆君が、笑ってる。


「嫌やったのに、ごめんな。」


「ううん、こんな気持ち初めてやから何かようわからへん」


「ゆっくり、気づいていけばいいよ」


そう言って、頭を撫でてくれる。


「ありがとう」


そう言って、笑った俺を二人は抱き締めてくれた。


トクン、トクンと自分の胸の音が聞こえていた。


この気持ちが、なんなのかわからなかった。


「俺、もっと美月君の事知りたなったわ。」


「僕もだよ」


そう言って二人が、笑ってくれた。


「あんな、俺も二人の事知りたいわ。後な、君読みはもうやめへん?なんか、そのな。」


言いづらく話す俺に心春君は、ジッーと顔を覗き込んでから


「付き合ってみたいの?」って聞いてきた。


「うん、やってみたいねん。男、女関係なしに、二人と生きてみたいねん」


「ハハハ、俺は、ええよ。美月が嫌やないなら」


「僕もいいよ。でも、付き合うならあの頃みたいに傍に居たい。もう、離れるのはいやだから」


そう言って、心春君が泣いてくれる。


「俺も、もう二人と離れるんはいやや。俺は、今、姉ちゃんが姫路におって、おかんとお隣さんに住んでる」


「お隣さんってなんや?」


「隣の市にいるって事じゃないの?」


「そや、お隣さんや!何でそう呼んでるかって言うと、おかんが姉ちゃんに住んでる場所言うてへんねん」


「何で、言わんのや?」


「近くに来んな言われてんのに、俺の為に引っ越してきたはずやから…。」


「そうなんだね。じゃあ、僕達もそのお隣さんに住めばいいんだね。」


「田舎やで、ここに比べたら…。ええの?」


「別にええで、ここより空気うまそうやし」


「僕もいいよ。ネオンのキラキラには飽きたから」


そう言って、二人は笑ってくれる。


あの、占い師のおばさんは当たっていた。


俺の人生は、これから幸せになる予感しかなかった。


「もし、このままおるならおかんも一緒に住もか?」


「それ、いいね」


「ホンマに、ええの?」


「このまま、ずっとおるならな」


そう言って、頭を撫でてくれる。


「僕と秋帆は、二人で歌うたってるの知ってる?」


「しらんかった。」


「22歳から、32歳までの10年間は、結構活躍してたんだよ。TVや映画やモデルとしても出てたんだけどね。」


「残念やったな。」


「なんで?」


「だって、心春は美月に見つけてもらうために俺と歌うたってたんやから」


「心春の話、聞かせてくれん?俺との出会いから」


そう言った俺に、心春が話し出した。


懐かしそうに思い出しながら…。



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