第7話 仕事だし



 けれど、ディークは依頼主の近くを動かなかった。


カぺル「ディーク!」

ディーク「ごめん」


 謝った後で「でも」とディークは続けた。


ディーク「好き嫌いで仕事を選ぶなんてできないよ。それに、助けを求めてる人を見捨てていくなんて、僕にはできそうにない」


 嫌いな人間でも、好きになれない人間でも、ディークは最後まで守るらしい。


 カペルは嘆息した。

 先ほどまであった怒りが、驚くほど消えていった。


 この同僚は、筋金入の阿呆だった。


 けど、それに救われていた。


 カペルは、気合を入れ直した。


 そうだ。

 ディークと言う男は。


 情けなくても、優柔不断でも、ヘタレで腰が低くても。


 そこが強い所。良い所だった。


 だから、懲りずにカペルも付き合ってしまう。


カペル「死んだら恨みますからね」

ディーク「うっ、ごめん。でもありがとう」


 どこまで、生き延びられるかどうか分からないけれど、ディークの背中に立つ気分はそんなに悪くなかった。


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白の城の兵士の日常 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

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