第2話 ディーク・ハイマン



 あの後、ひと悶着があった。

 互いに一ミリも引きもしないものだから、状況は膠着状態。

 二人は一時間ほどもめて、疲れ果てることになった。




 ディーク・ハイマンという男は、一言で説明するとお人よし。

 二言で説明すると、重大な決断ができないヘタレを追加するような人間だった。


 今も私の隣で哀れな小動物を抱えながら、「雨に濡れてたんだ」とか「あのままにしておくのは可哀想だったんだよ」とか言っている。


 規則でだめだと言われているにもかかわらず、だ。


 カぺルは苛立ちながら、彼をにらみ付ける。


カぺル「ディーク」

ディーク「はいっ!」


 体を強張らせる彼に伝わるように、カぺルは厳しい口調で告げた。


 ディークの優しさは普通の人間なら美徳だが、兵士ではそうではない。


カぺル「捨・て・て、きなさい。いいですね」

ディーク「はい」


 しょげかえった男性兵士がとぼとぼ歩いて行く。

 これ以上ないくらい、哀愁が漂っていた。

 その後姿を眺めながら、少し言い過ぎてしまったかなとカぺルは思った。


 ディーク相手だとつい口調が厳しくなってしまうためだ。


 だが、規則は規則だ。

 カペルが曲げるわけにはいかない。


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