第2話 ディーク・ハイマン
あの後、ひと悶着があった。
互いに一ミリも引きもしないものだから、状況は膠着状態。
二人は一時間ほどもめて、疲れ果てることになった。
ディーク・ハイマンという男は、一言で説明するとお人よし。
二言で説明すると、重大な決断ができないヘタレを追加するような人間だった。
今も私の隣で哀れな小動物を抱えながら、「雨に濡れてたんだ」とか「あのままにしておくのは可哀想だったんだよ」とか言っている。
規則でだめだと言われているにもかかわらず、だ。
カぺルは苛立ちながら、彼をにらみ付ける。
カぺル「ディーク」
ディーク「はいっ!」
体を強張らせる彼に伝わるように、カぺルは厳しい口調で告げた。
ディークの優しさは普通の人間なら美徳だが、兵士ではそうではない。
カぺル「捨・て・て、きなさい。いいですね」
ディーク「はい」
しょげかえった男性兵士がとぼとぼ歩いて行く。
これ以上ないくらい、哀愁が漂っていた。
その後姿を眺めながら、少し言い過ぎてしまったかなとカぺルは思った。
ディーク相手だとつい口調が厳しくなってしまうためだ。
だが、規則は規則だ。
カペルが曲げるわけにはいかない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます